§ 1―1 レムリア大陸
紀元前4万2176年。
南半球。アフリカ大陸とオーストラリア大陸の間、インド洋にレムリア大陸があった。
大陸の陸地の広さはオーストラリア大陸より広く、横長でペンギンが泳いでいるのを横から眺めたような形状をしていた。この大陸の中央には真横に6千m級の山々が連なる山脈があり、南北で気候が異なる。山脈の北側は温暖で、南は雪に覆われていた。またアフリカ大陸寄りの大陸の4分の1が砂漠で、なお広がり続けていた。気候は、雨季と乾季があり、四季はない。
また、この大陸は地殻活動が盛んで地震が多く、記録が残っている最も古い書物には大きな地震の記載があり、はるか昔から頻繁に大地が揺れ続いていることを示していた。
この大陸全土は、レムリア王国と名乗り、大陸中央からやや北東の位置にある主領アラドを中心とし、9つの領土の集まりでできている。
主領アラドの町並みは、都の中央に『中央宮殿』があり、それを中心に同心円状に道が舗装され、そこを中央宮殿から東西南北に大きな主要道が伸びている。電気自動車の交通量は多く、片側4車線ほどある大きな通りだ。
中央宮殿を都の中心に置き、宮殿の近い土地に国家行政機関が立ち並んでいる。国一番の裁判所であったり、国立病院などもある。
大陸全域には、リニアレールの列車も通り、高架の上を必ず通るように設計されている。これは防音対策のためで、高架は地震で倒れないように、考えられる最新の免震構造をしている。
それぞれの施設・住居は地震が多い影響から、3階より高さを持たず、その変わりに、1戸の敷地面積が広くなっている。
インフラは電気、ガス、水道、通信と発達しており、路線バスもあるが、電気自動車かリニアレールで移動するのが一般的である。
現代社会にも勝るとも劣らないこの国は、災害や厳しい気候に耐えながらも、幾度の戦争を繰り返し、ようやく大陸内の国々は統一し、人々は平穏を手に入れた。統一国家が生まれて210年。安定から変移の時世に移り変わっていた。
しかし、この地は今はもう無い……
この大陸の終焉は、そんな改革の時代に奇しくも現れた1人の異才と、イヴの名を冠する黄金色の髪をもつ者との出会いが、はじまりであったのかもしれない……