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星霜のイヴ ~希望の詩と絶望の永遠~  作者: 二神 秀
CHAPTER.2 イヴ・ヨッドギメル A計画途中報告
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§ 2―3 新たな季節



 2030年4月。



 新年度が始まって2週間が過ぎた。大学生活も6年目になる。卒業単位はほぼほぼ取り終えてはいたが、薬学部で1番人気の真山教授のゼミに毎日のように行っているので、去年よりも忙しく感じる。それでも、今日は午前中で終わったので薫先輩に声をかけ、学食で一緒にご飯を食べることになっていた。残念ながら涼も一緒なのだが。


 先輩と話すようになって分かったことは、まず、父・母・妹の4人家族で、ニャルという黒猫を飼っていること。大学の感染症研究所に勤める準教授であること。この感染症研究所は、大学と国が共同して研究している研究機関で、1類~5類すべての感染症を研究できる。1類が、エボラ出血熱などの感染したら致死率が高い感染症で、5類はインフルエンザなどが分類されている。また、お酒を飲むのが好きらしく、今度飲みにいくことも約束している。読書が趣味で、サスペンスものが好きとのことだ。そして、何より大事な情報として、今、彼氏は募集中とのことである。



 おれと涼が学食についたとき、新入生が大学生活をエンジョイしていることを自覚したいのか、やたらと混みあっていた。先輩より先に学食に着くのはわかっていたので、空いている席を探す。


「おい、アキト。あそこ、空きそうだぞ」


 と涼に促され見てみると、まさに席を立とうとしている4人席のテーブルがあった。こういう洞察力は関心させられる。


 無事に席を確保し、先輩が来るまで涼と研究室の話をしながら待っていると、入り口のあたりに白衣を着た先輩を見つけた。大きく手を振ると、こちらに気づいたみたいで、すたすた歩いてくる。


「今日は混んでるのね。学食ってこんなに混んでたかしら」


 と周りを見渡している。


「こんにちは、先輩。お疲れ様です」


「こんちはっす、飯村先輩」


「はい、こんにちは、2人とも。よく席取れたわね」


「涼の唯一の能力なんですよ、学食の空席を探す能力は」


「唯一とはひどいな。他にもいっぱいあるだろ」


「ほー。たとえば?」


「女性を笑顔にする能力かな」


「笑顔じゃなくて、泣き顔の間違えだろ?」


「おまえ。それ、シャレになってないからな」


「ふふふ」


 薫先輩が楽しそうに笑っている。


「それで、先輩は何食べます? 久しぶりに学食食べてみたいって言ってましたけど」


「まだ、変わってなければいいんだけど、ランチのBコースが食べたいんだ」


「Bコースってアジフライの定食ですよね」


「そうそう。おいしいのよね、ここのアジフライ」


「じゃぁ、おれも一緒の食べますよ。おれと涼で買ってくるので、先輩はここで席を確保しておいてください」


「了解」


 と、手を顔の前に持っていき、啓礼をする。かわいいな、畜生。



 5分ほどかけて、Bコース2つを手に持って席に戻ってきたとき、座っている先輩に話かけてる外国人がいた。


「わかったわ、ティム。午後からは、その数値を試してみましょう」


「ハイ、オネガイシマス」


 と話が終わったみたいで、学食の奥のほうに歩いていった。


「おまたせしました、先輩」


 右手に持ったBコースを先輩の前に置き、自分の分も置く。


「ありがとう、アキトくん」


 こちらを見て微笑む。涼の前には、すでにカツカレーが置かれている。


「じゃぁ、早速いただきますか」


 涼はスプーンを親指で挟み、いただきます、のポーズをしている。


「うん、食べましょ。お腹ペコペコだよ」


「はい、いただきます」


 先輩が言ったとおり、思った以上にアジフライはサクサクしており美味しかった。



 おれが食べ終わるのと同じタイミングで、先輩も食べ終わった。


「食べるの速いんですね」


「あ、しまった! ついつい、いつものペースで食べちゃった。食べるの速い女の子って、かわいくないから気をつけてるんだけどね」


 と照れながら話す。


「そんなの気にしないですよー。ゆっくり食べられると、こっちが気を使いますからね」


「なんか、チマチマしてるのがかわいいんじゃないの?」


「少なくても、俺と涼は違うと思いますよ」


「そうっすね。まぁ、おれは気にせず自分のペースで食べますけどね」


「戸塚くんっぽいね、そういうところ」


「好きに食べればいいんですよ。それがおいしく食べるコツですよ」


「あはは、そうよね」


 やばい。涼のペースになっていく。食べるペースは自分勝手でいいけど、先輩と一緒のときは、おれに気を使えよ。


「そういえば、さっきしゃべってた人は誰なんですか?」


「あー、ティムのことね。四月に海外から来た研究スタッフなのよ」


「へぇー。さすが国が関わってる研究室なだけありますね」


「教授曰く、そうとう優秀みたい。さっきも午前中の実験で思うところがあったみたいで、指導役としてしばらく面倒みることになった私にずばずば意見してくるからね」


 お茶を飲みながら、そう語る先輩は、少し困り顔に見えた。


「大変ですね」


「はぁー。お酒の量が増えちゃいそう」


「お薬、処方しますよー」


「おねが~い」


 遠目でさっき先輩と話していたティムという研究員を見つけると、他に3人の外国人と一緒に食事をしていた。少し褐色が濃い肌。同じ国の人たちなのかな? とこの時は大して気にも留めなかった。



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