妹に幼馴染みの王太子の婚約者をとられ婚約破棄され、妹いじめの罪とやらで国外追放になりはや2年、よりを戻そうとか、男というものはどうして女の愛がいつまでも自分にあると思うのでしょうねぇ。
「メリー、会いたかった!」
私は魔法図書館で調べものをしているときに生涯会いたくないと思っていた男に声をかけられ、ため息をつくしかありませんでした。
「クリス様ですか」
なにかみすぼらしくなったなあと思います。髭もぼうぼうですわ。
私はこの人に生涯お前に会いたくないと言われていたのに、どうしてわざわざここにと聞いてみました。
「君に会いたかった」
「はあ」
私は読みかけのネクロノミコンを閉じ、わざわざ隣国まで来るとはお暇ですかと返します。
だって彼は王太子、おいそれと国を出ていいはずもないのに。
「あれとは別れた」
「ミーシュとですか」
「そうだあのアバズレだ!」
私はあれだけ真実の恋の相手と言っていたのに、2年しか持たなかったとはすごいなとは思いました。いやもった方ですか。
私は妹を愛してしまったから、お前と婚約破棄する。腹違いの使用人の娘と妹いじめをするお前に愛想がつきた。とこの人に言われたのですけど。
「私は妹いじめの罪で国外追放の身ですわ」
「それはあいつが嘘をついていたせいで!」
私はこの人とはそういえば10才の時から、一緒に遊んだ幼馴染みだったけど、今は隣の家で飼っている猫よりも親しみを感じないなぁと感慨深く思います。
「お話はそれだけです?」
私はそろそろ約束の時間なんだけどもなあとチラチラ時計を見ると、君も僕をまだ愛しているから独身なんだろう? と聞いてくるクリス様。
「独身ですが、あなたをまだ愛しているからではありませんわ」
私が立ち上がると、するとクリス様が君も僕を愛しているからと思っていた! と壊れたオルゴールのように繰り返します。
「舞踏会なんて場所で皆の前で、あんな言い方で婚約破棄された女にいまだに愛されていると思ってるなんて図々しいですわね。愛しているから? はあ? あなたのこと思い出すたびに死にたくなるほど絶望したことすらありましたわよ」
私は妹とよく2年もちましたわよね、すごいですわあと笑います。使用人の娘と馬鹿になどはしたことはありませんが、男遊びを咎めて逆に切れられたことはありましたわ。
「君は誰かほかの男と!」
「婚約破棄された女は恋愛をしてはだめだと?」
私は入り口から入ってきた人に向かってここと手を振ります。
「メリア何してるんだい?」
「例の名前を呼んではいけない人に、からまれて困ってますよ」
「あの、君の男100人切りとかいう妹に色仕掛けで騙された間抜けな幼馴染みか」
私は彼に走りより、よりを戻そうとかしつこくて困ってますのと言うと、今さら? と彼が笑います。私はクリス様の名前を出すのも辛いときがあり、名前を出せない人と彼は呼んでましたわ。
クリス様が彼をみてあんぐり口を開けて驚いています。周りもそうです、本を落とした人もいましたわ。
「メリアは僕と婚約しているから、しつこくするのはやめてくれないかな」
「魔法学園のセキュリティあげたほうがいいのではなくて? 部外者が入れないようにエル」
「そうだね」
私はエルと腕を組み、あれともう二度と会いたくないですわとため息をつきます。
「要注意リストにいれておくよ」
「お願いしますわ」
ずっと周りの動きが止まったままですが、しかし彼を見慣れた私が言うのもなんですが綺麗な顔してますわよねぇ。
「魔法学園の学長として、王太子としてもう少しセキュリティ面も考えないと」
「頼りにしてますわエル」
国外追放されて、路頭に迷った私を拾ったのが隣国の王太子のエルで、彼の顔に見慣れるまで半年かかりましたわ。
私に魔法の才能があったことから魔法教師になりましたが、しかしあの馬鹿が隣国までくるなんてねぇ。
そういえば噂で妹に逃げられ、浪費癖のせいで王家が借金で困りとか聞きましたが、最近発見した新魔法のせいで私が大金を手にいれたという噂を聞いてここまできたのですかねぇ。
まさかそこまで厚顔無恥とは。
「君の元婚約者、廃嫡されたそうだ、君の妹の浪費の責任をとるという形で」
「へえ」
私はエルに元婚約者の噂話を聞きながら、図書館からつまみ出されたクリス様がしつこく侵入を試み、衛兵に捕まったと聞きました。
知り合いに金を借りようと思ったと弁解しているとかなんとか、はあ、私は数年牢にいれておくよ、隣国王家に聞いたら好きにしろと言われたからとにっこりと笑うエルに、妹の行方も探してなんとかしてくださいとお願いしました。
同じようにたかりにくる可能性を危惧したのです。
そうだね、君がそういうのなら処分を考えないとねと綺麗な顔にエルは満面の笑みを浮かべたのでありました。
読了ありがとうございました!
下記の☆☆☆☆☆を押して、応援してもらえるとうれしいです。執筆の励みになります!
よろしくお願いいたします