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オレオレ詐欺

作者: 武正幸

夕飯の準備をしていると、電話が鳴った。


「息子の弘和さんが、会社のお金を横領しましてね。発覚を防ぐために、今すぐ振り込みが必要なんです。今から近くの銀行かコンビニに向かってもらって、こちらの指示に従って欲しいのですが…」


「息子は?息子の声を聞かせてください。」


「・・・ごめんよ。こんな事になって。」


電話の向こうの息子は、泣きじゃくりながら、謝っている。


「横領ってお前、そんな大金を何に使ったの?」


「スマホゲームの課金に・・・。気が付いたら到底払えない金額になっていたんだ。会社にはバレないうちに返そうと思っていたんだ。今回だけだから助けてよ。母さん・・・」


そこまで聞いて、私は電話を切った。弘和は、私を母さんと呼ばない。スマホゲームなどしない。これは断言できる。和弘は3年前に亡くなったのだ。


オレオレ詐欺が横行し、被害が後を絶たない。被害額は、年間100億円を超えるそうだ。私から言わせれば、電話1本で、大金を横取りしようなんて、都合が良過ぎる。大金を手に入れるには、それなりの犠牲という対価が必要だと私は考える。それは自らの労働力だったり、自分の大切なものだったり、時間だったり・・・。


10年前、私は好きでもない相手と結婚した。でも、それは私の望んだことだった。その男の莫大な財産が目当てだったから。


男は再婚で、連れ子がいた。一人息子の和弘だ。こいつが一番の邪魔者だったが、3年前に交通事故を装って殺害した。当時、アクセルとブレーキを踏み間違える自動車事故が多発し、社会問題となった。私はそのドサクサに乗じて、ブレーキとアクセルを踏み間違えたフリをして、息子を轢き殺した。私は疑われるどころか、「我が子を轢き殺してしまった母親」という悲劇の加害者として報道され、同情された。


「ただいま。」


男が帰ってきた。


「おかえりなさい。夕飯もうすぐできますから。先にお風呂入ってください。」


「じゃあ、そうするとしようか。」


この男が死ねば、私の計画は完結する。どうやって殺そうか、今日もニュースをチェックしながら、何か良い案がないか試行錯誤している。そんな時間が、この糞みたいに退屈な生活に潤いを与えてくれる。


「何だか嬉しそうだな。何か良い事があったのかい。」


「ううん。こ・れ・か・ら。」












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