表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

いまさら告白してももう遅いのよ。だって、世界はあと10分で終わるのだから

作者: 青水

「あのさ……」

「何よ?」


 俺は学校の屋上に彼女を呼び出した。

 学校には俺と彼女のほかには誰もいない。みんな今頃どこで何をやっているのだろう? 自ら命を絶った人もいるのかもしれない。


「来てくれてありがとう」


 俺は言った。


「別に……」

「最後は、家族と一緒にいたいとかそういうのは――」

「父も母も愛人のところへ出かけたわ。最後は愛する人と一緒にいたいんでしょうね」


 どうやら、彼女の家庭は複雑なようだった。まあ、俺の家庭も似たようなものだが。


「……すまん」

「父も母も私のことを愛してはくれなかったわ」


 彼女はどうでもよさそうに言った。


「それで? 何の用かしら?」

「好きだ。俺と付き合ってくれ」

「……」


 俺が率直に言うと、彼女は沈黙ののちにため息をついた。


「ごめん。俺に告白されても嬉しくなんてない、か……」

「違うの。違うのよ……」


 彼女は首を振った。目から涙が流れている。


「告白してくれたこと自体は嬉しいの。私もあなたのことが好きだったから……。でもね、どうして今なの? どうして今、告白するの?」

「死ぬ前に、俺のこの気持ちをお前に伝えておきたかったから」

「私があなたの告白を受け入れたとしても、後10分で世界は終わるのよ?」

「たとえ、10分という短い時間だとしても、俺はお前と付き合いたいんだ」

「……わかった」


 彼女は涙を拭うと頷いた。


「10分間、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしく」


 俺が言った瞬間、彼女は抱きついてきた。


「10分で、できるだけのことをして、ともに死にましょう」


 そう言うと、彼女はキスをしてきた。

 ハグもキスもしたことがなかったので、かなりどきどきした。彼女を抱きしめるのもおずおずと、キスもどうすればいいのかわからなかった。


「ごめん。ハグとかキスとか初めてなんだ」

「私もよ。気にしないで」


 抱き合ってキスをした後、彼女は服を脱ぎだした。季節的に風邪をひくことはないし、周囲に人は誰もいないので、脱ぐこと自体は問題ないのだが……。


「セックスしましょう」


 彼女は言った。


「いや、そういうことはもっと関係を深めてからだな――」

「そんな時間はないのよ。あなた、童貞のままで死にたいの?」


 尋ねられ、俺は首を振った。

 俺と彼女は服を脱ぐと、生まれたままの姿で抱き合った。学校の屋上でセックスをするなんて、どう考えてもおかしい。しかし、その行為を咎める者はいないし、それにもうすぐ世界は終わるのだ。


「愛してる」

「私もよ」


 俺たちは空を見た。

 空から巨大な隕石が降ってきた。あれらが地球という星を粉々に破壊し、人間を含めたあらゆる生命体を滅ぼすのだ。地球滅亡の危機に、さすがにいがみ合っていた人類も一致団結せざるを得なかった。なんとかして、隕石の軌道を変えられないものか、隕石が地球に降ってくる前に破壊できないものか、様々な案が練られたが、結局、運命を変えることはできなかった。

 隕石が降り注ぐ中、俺と彼女は最後のキスをする。破壊神の姿は、絶望的に美しかった。人生の終わりにうってつけの、素晴らしい光景。


「来世ではあなたと一緒になれたらいいな」

「ああ。そのときはよろしく」


 そして、俺と彼女は死んだ。

 地球は滅亡し、世界は終わりを迎えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ