1 気が付いたら
目が覚めたら…というか、気が付いたら…というか、とにかく知らないうちに知らない場所に私は立っていた。
さっきまで家の近くの森林公園にいたはずだ。
今目の前に広がるのは、同じ森ではあるものの…
明らかに私の居た所とは違う。
森林公園はきちんと整備されていて、歩道があったり植え込みがあったり、人の手が加わっている。
だけどここは…
「これは見事に森だわ………」
森に入ったこともない都会育ち(?)ではあるけれど、苔むしていて人の歩く道も無く、鳥たちの囀りだけが聞こえる森は、公園とは全く違うと思えた。
とりあえず移動した方がいいだろう。誰か居るかもしれないし、情報を得た方がいい。
意外とパニックにならないもんだな、と思いながら鞄に入っていた飴を1つ口に入れた。
一周回って落ち着いてるのかも?たぶんソレです。うん。
あれから30分程歩いてるけど、景色はイマイチ変わらない。この森はとても深いんだろうか。
苔がいい感じのクッションになって、足は痛くないけど…ずっとだと、さすがに辛いだろう。
スニーカーでも履いていればよかった。今私が履いているのは、5センチくらいヒールがあるブーティだ。ちょっと気分転換に出掛けただけだったからね。こんなに歩く予定なんて無かったもん。
「それにしても…なんか空気が澄んでて、息がしやすい感じ」
今までずっと息苦しいと思いながら生活していた。ストレスからきてるんだろうと、医者からは言われていた。
私には両親が居ない。いわゆる孤児だった。
小さい頃に公園で保護されたらしいのだ。私自身はよく覚えていない。誰も私を探していないのだから、捨てられたという事なのだろう。
家族との思い出も無い私は、一人ぼっちという寂しさはあっても、悲しくは無かった。でもストレスを感じる要因としては立派な理由だなと自分でも思う。
施設の人は良くしてくれたし、友達もいる。それにもう私も25歳だ。自立して生活している。休日には趣味のハンドメイドをしたり、映画を見たり、お菓子作りをしたりと…特に不満は感じていない。だからストレスねぇ…と他人事のように思っていた。
1つだけ悩みがあるとすれば…自分が何者なのか、という事だけ。
こんにちは、珂月といいます。
マイペースに更新していきたいと思います。
廃墟、遺跡、雑貨屋、服、カフェ、ハンドメイドなどなど…
私の好きなものを全部詰め込んだ作品にしていきたいと思います。
読んでいただき、ありがとうございました!