失ってから初めて気づく大切なもの、なーんだ?
君がいなくなった。
何がいけなかったのか。考えれば考えるほど、後悔がふつふつと湧き上がる。あの時、ああしていれば、君は此処にいたのだろうか。アイツと会ってなければ、君を傷つけることは無かったのだろうか。
ベッドの上で悶々と考えていると、ただでさえ、君がいなくて体調が悪いのに、気分まで滅入ってくる。
僕は何か悪いことをしたのだろうか。知らないうちに、罪もない人を虐げたりしたのだろうか。これは天罰ではないのか。君がいない日々は、地獄としか言いようがない。
失って初めてその大切さに気づくというのは、手垢がついた言葉だ。最早、人の心を動かすものではない陳腐な言葉。
何て僕は馬鹿だったんだろう。何度も聞いているその言葉を、何故、心に刻まなかったんだ。本当に愚かだ。失うまで君の大切さに気づかないなんて。
タイムマシンがあるならば、今すぐ過去に戻って自分に対して何時間も説教がしたい。
ゴホッゴホッ。
忌々しい咳が出た。水分を摂って無理やり抑えこむ。君の代わりに得たものがこんなものだなんて、悪夢でしかない。
君を取り戻す術はないだろうか。謝れば許してくれるだろうか。でも、僕は謝り方も分からない残念な奴だ。
思い返せば、君と僕は、くっついたり離れたりだったね。離れるのは、いつも僕の無茶のせい。その度に、馬鹿みたいに後悔して、なんとか、君と仲直りするのに、僕はまた同じことを繰り返す。ほんと学ばないよね。流石に今回は君も僕を見放したかな。
そう思うとなんだか笑えてきた。人って、どうしようもなく絶望すると笑ってしまうんだ、これは発見だな。ノーベル賞でも取ろうかな。現実逃避してそんなくだらないことを考えてしまう。
それもこれも、君がいないからだ。君と一緒なら、できることが山ほどある。したいことが星の数ほどある。今の苦しみを知っている僕は、きっと無限大に楽しめる。
今度は忘れない。君の大切さ。君が一緒にいることが当たり前になろうとも、日々感謝することを約束するよ。もう無茶もしない。君が安心して一緒にいられる僕になってみせるよ。
だから、戻ってきてほしい。
君、「健康」に!
「風邪引くたびに、その譫言聞かせてくるの、やめてくれるかな?」
「あれ、僕、口に出してた?」
「白々しい。私が看病する度に聞かせるくせに。」
「やきもち焼かないで!君のことも、健康と同じくらい大切だよ。」
「同じじゃ駄目でしょ。いいから寝てなさい。」
勿論、キミの方が大切だけど、恥ずかしいから黙っとこう。