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4話「勝者、革命、そして仲間」

─あらすじ─

セレナはバース先生がカルマに倒されている所を目撃。その理想の為に戦いを始めた。

「お前は何故、理想の為に自分を犠牲に出来る!? 俺を野放しにしておいた所で、このゴミが1匹死ぬだけだろう!」


「理想の為に犠牲に出来るのが、他人か自分か、ってだけの話よ。」


──そう、他人を犠牲にする勇気がないだけの臆病者。それが私の本質。


「てめぇは甘ぇ!......もう時間が無ぇんだ!これで決める!」


乾坤一擲の振り下ろしで生み出された剣圧が迫って来る。「鉄壁の硬さ」を誇りとしていた廊下の壁も当たり前のように両断され、轟音と共に崩れ落ちた。


「この時を待っていたわ! 禁呪...... 最後ノ審判っ! 死なないでね、カルマ!」


──私を中心に広がっていく禁呪の効果半径内では、あらゆる物質の崩壊が始まっていく。極めて単純で、凶悪。


目前まで迫ってきていた剣圧も消し飛び、私を含めた全てが光の粒子となっていく。有機物は消滅が遅いらしいが、それもまた凶悪さの一端だろう。


「グ......ォォォォッ! 限......界か。」


カルマは意識を失って倒れ、私の目的は達成された。


「......でも、私が消滅するまで、止めようが無いのよね。まぁ、もう時間はあまり無いから、他の人に被害は出ないだろうけど。」


──諦めて、目を閉じる。もっとカルマと楽しく喋っていたかった......


「イケナイっすねぇ、禁呪なんて。ワタシで無ければ止められていませんでしたよ。」


──身体中を襲っていた痛みが嘘のように消えていく。まさか、禁呪を打ち消せる人間なんて......


「......そして、その業で失ったモノを修復出来るのもワタシしかいません。」


私の意識はそこで消えた。


☆ ☆ ☆


「......そんな、事が。」


言葉も見つからない。意識を失っていたとはいえ、友であるセレナを傷つけてしまった事。

何をもってすれば贖罪できるだろうか?


「カルマさん、気に負う事はありません。すでに彼女から言伝は頂いてます。"絶対、次は私が勝つ!"と。」


「......ははっ、セレナらしいや。」


「そして、貴方には伝えておいてもいいでしょう。今回の事件で、バースさんは教育の場から退かれました。......漸く、この学校にも変革がもたらされるでしょう。」


「変......革?」


「えぇ、生徒が伸び伸びと学校生活を送れるようになります。......当然、弊害も出るでしょうが、メリットの方が大きいと思うんです。実は、今までの校風は、バースさんの圧倒的な権力をもって、維持されてきました。......コレはチャンスです。ワタシ達はこの時を待っていましたよ......」


──そう言われて思い浮かんだのは、心を持たぬ生徒達の姿。僕が忌み嫌った機械的な在り方。


「......そういえば、他の皆はどうしてるんですか?」


「あっ! 言い忘れてました! あと10分で改めて始業式が始まります! セレナさんもそこにいるので、話しかけてあげてください。」


「......わかりました。先生、貴重なお時間ありがとうございました。」


「......よし、じゃあ講堂までワープしますよぉ、しっかり掴まっててくださいっ。」


──ワープ? 聞いたことも無いけど、まぁ、言われた通り、先生の肩にしっかり掴まった。


「......神話は時を渡り、その在り処を超克する──空間転移!」


──直後、視界は明滅し、酷い目眩がしたかと思えば、身体がありえない方向にねじ曲がっていた。


「一体、何が起こってっ......」


☆ ☆ ☆

「...ルマ、カルマ! もう始業式始まるわよ!」


聞き覚えのある声がしたが、頭が痛すぎて気に留めてられない。


温かみのある、木製の椅子。そして前を見れば、荘厳さ溢れる演説台が用意され、そこに立っているのは、先程まで話していた人物──マーレ先生だ。


「......さて、皆さん揃いましたでしょうか。ワタシは今日から新しく校長となりましたマーレと言います。」


──広い講堂に充分に響き渡る程の生徒達の動揺の音色。......更に驚いたのは、先生達まで「初耳だ」とでも言わんばかりの表情だった事だ。


「まぁ、驚くのも分かります。......この決定は、つい先程、ワタシと前校長、そしてバース先生の間で取り決められた事です。」


──どよめきが更に大きくなる。


後で聞いた話によると、次の校長はバースという事でほぼ決まっていたらしい。


そんな中で突然の禅譲。驚くのも無理は無いって事か。


「......さて、朝も宣言した通り、この学校の校風を自由的なモノにしようと思います。勿論、自由というのは、他人に迷惑をかけない範囲で、という意味です。......貴方達はもう少し、子供らしく生きてください。」


──講堂には、生徒達の歓声が響き渡る。やはり、誰もが自由を求めていたのだ。


僕はその光景を見て、少し安心した。


☆ ☆ ☆

始業式が終わって、教室に戻ってからというものの、生徒達の雰囲気は、世界が180度変わったかの様に、楽しげなモノとなっていた。


「なぁ! 君が、あのヴェルデ家のカルマ君かい? 俺は君と親友になる男、ルーサーだ!」


妙に馴れ馴れしいな、と思いつつも、やはり友達は多い方が良いから、彼と親しくしていく事にした。


──まぁ、他の級友とのパイプ役になってくれるだろう。


「......貴族のご子息様は、随分と打算的なのですね。」


「えっ?」


──声がした方向に立っていたのは、艶のある黒色の長髪を携えた、身長が少し控えめな女の子。

金色の丸メガネも、彼女の理性的な印象を際立たせている。


「私、リン=エミヤの固有スキルは真心看破。私の近くにいる人の思考は手に取る様に分かりますのよ? 第一印象が理性的とは嬉しいですけど、背が控えめというのは余計ではなくて?」


「ごめん、ごめん。......ところで、固有スキルって何?」


──初めて聞く単語。家にあった本は大抵読んだ筈だが、一体何なのだろう?


「──あぁ、それは......」


「......それは僕が説明致しましょう! 恐らく帝国一、本を読み漁っている、このマルクが一番知っていますとも!」


──なんか、僕の所に色々な人が集まってきてるな。


「んじゃ、マルク君、固有スキルって言うのは全員が持ってるの?」


すると、彼は「待ってました」と言わんばかりに、少し長めの前髪を掻き上げた。


「いえいえ、持っているのは、相当なレアケースですよ? 現に僕も持っていませんし。固有スキルというのは生まれながらに持つ才能の1つです。まぁ、その才能に気付かずに死ぬケースも少なくないんですけどね。 」


「......しかし、安くは無いお金を払えば、帝国の技師にスキル鑑定をしてもらう事も可能ですわ。」


──ふむ、僕も固有スキルとやらを持ってるかもしれないな。なんか、ワクワクしてきたぞ。


そんな事を考えていた時、不意に教室の扉が開かれた。


「ハイハイ、どうもで〜す! チャン僕はこのクラスの担任のハラルドって言いま〜す! シクヨロ......」


──とんでもない人が、担任になったみたいだな......


皆の引き気味の目線は彼に対する不安を物語っている。


──この学校、俺が思ってた以上にやばくないか......?




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