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2話「邂逅と衝突Ⅱ」

─あらすじ─

カルマは登校中に暴漢に襲われている少女、セレナと邂逅する。

圧倒的な力の差を見せつけて勝利するも、登校の方向は全く違っていた。

僕とセレナは学校に向かって全力で走っていた。先程の"騒動"の解決の為に10分近く費し、入学式まで20分程しかない。学校生活初日から大失態など許されないのだ。


「ねぇ......ッ! 私、もう疲れたんだけどぉ!」


「そんなのは......僕も一緒だよ......ッ!」


「足を速くする魔法とか、疲れを無くす魔法とか使えないの?」


「それは白魔法の領分だから、僕には使えない、いや使えるかも知れないけど、使った事が無い......ッ!」


黒魔法が使えているのは、ナタリアの協力のお陰であって、黒魔法が使えるからといって、白魔法が使える訳では無い。


つまりは、単純明快! 走るしかない! ......という訳ではなく、たった今思いついた事なのだが、策がある。


「セレナさん、赤魔法で"フロート"使える?」


「えぇ、使えるけどどーしたの?」


「人が2人乗れる物体があれば、"フロート"で浮かせて、僕が"ヒートドライブ"を使えば簡易的な乗り物に出来るでしょ? それに乗れば、疲れずに早く学校につけるんじゃない?」


"ヒートドライブ"は使用者の身体から炎を噴出して、攻撃として使ったり、ブースターに出来る汎用性の高い赤魔法だ。


この2つの魔法を組み合わせて、高速移動機械を作れば、魔力は使う事になるが、体力の浪費は抑えられる。あとは、2人が乗れる大きさの物体を探すだけだが......


「この無駄に綺麗なこの街に、そんな物体ないわ!」


「だよね......だったら、僕が乗り物になろう。僕に"フロート"をかけて、背中に乗るんだ、いいね?」


「えぇ......そんな、いいの? 」


「少々君が重かったとしても平気さ......ってフグぅっ!」


背中に大きな衝撃が迸り、危うく気絶する程の痛みが走った。

......あぁ、そうか、女性に対してデリカシーの欠ける発言だったな......

まぁ......今日という日まで家の外に出る事はあまり無かったし、仕方が無いとは言え、非礼は謝罪せねばなるまい。


「ごめんッ......! でも、今の一撃は凄く重くて、感服したよ!」


セレナは「それ謝ってるつもり?」と言って笑って許してくれたのだが、他の人で同じような事が起こった場合、学校生活では致命傷になる可能性が高い。


あまりにも僕は井の中の蛙すぎた。人との関わり方についても見直さなければいけないな。


☆ ☆ ☆



彼女と世間話をしながら学校へ飛んで行ったら5分程で到着し、入学式の10分前には学校に到着する事が出来た。......まぁ、教室に入る時に同級生から白い目で見られる事にはなったのだが。


何しろクラスメイトは僕達以外は全員、入学式が行われる講堂に行く準備が出来ている。

時間に間に合わなかった訳ではないのだが、もうすぐ成人という年頃で10分いや、20分前行動というのが定着している彼らにとっては些か僕達の今の姿は奇妙に写ったようだ。


とりわけこの世間は規範に厳しい。何故なら貴族社会において規範を破る事は社会的死を意味するからだ。

"法の範囲内においての自由"のみが許される社会。高い人間性を追求するがあまりに機械的になった生活。......皮肉な事だ。


荷物を置き、急いで列に並ぶ。そこで喋る人間などいる訳が無い。何しろ、この学校はヴェルデ家の領地のモノ。

規律と正義の徹底こそが重要視されている。個人の自由の抑圧による平和。それこそが父の見出した唯一の、輝ける未来への筋道だったのだ。

......とは言え、当の息子が規律を破りかけてはいるのだが。


慌てて列に入る。クラスの仲間からは冷ややかな目線。恐らく、僕がヴェルデ家の子息という情報が出回っているのだろう。


考えてみれば当たり前の事で、4大貴族の姓を名乗る事は許されていない。

偽名として使った場合には不敬罪として、最高刑である死刑が科せられるのだ。


何故か? 当然、貴族の名を語った者による治安の乱れを防ぐ為でもあるのだが、もう1つには領主たる4大貴族の罪からの逃げ道を防ぐという目的もある。

他人が4大貴族の姓を名乗れないというのは、咎に対する身代わりすら使えないという事。

それは貴族への更なる気の引き締めがとなる。


話は少し逸れたが、つまる所、クラスの名簿に"ヴェルデ"という苗字があれば、間違いなく"ヴェルデ家"である。

自由時間においての発言、行動は完全に自由なので、瞬く間に情報は広がっていった事だろう。


基本的には平民(貴族もだが)は領主たる4大貴族にあまり良い感情を抱いていない。

それは仕方の無い事で、搾取する側とされる側の関係が成り立っている以上、避けようの無い事態なのだ。


よって、僕の入学も単なる"冷やかし"として受け取られ、貴族制を良く思わない一部の人間に僕の黒い噂を造られた可能性はある。


入学式の行われる講堂へ歩幅を揃え、列を乱す事無く歩いていく様は正に軍隊と言って差し支えの無いものだ。


実の所、僕はこのような貴族制を良く思っていない。見ていて吐き気がするのだ。人間らしさの欠けた人間というのは気持ち悪さしか想起させない。


考え事をしながら歩いていたら、廊下の柱に身体を思い切りぶつけて転んでしまった。

......止まる足並み。異変に気付いた教師が駆け寄ってくる。痛みと恥ずかしさに悶えながら、その先生の方を見ると、怒りを露わにした顔がそこにはあった。


「おい、貴様ァ!列を乱すなァッ!」


怒声と共に頬に猛烈な痛みが走る。「殴られた」と気付いた頃には胸ぐらを掴まれていた。

この人間の横暴さ加減に怒りを通り越して呆れを感じつつ、溜息を吐いた。


「......殺すぞ。」


一言。その先生の一言には明らかな憎悪の念が含まれていた。

右膝を先生の鳩尾に振り抜く。

───世界に対する宣戦布告。

父親たち4大貴族が創り上げた世界への。

先生は呻いて手を離した。そしてその隙に魔法の無言詠唱を組み上げていく。


「......ッ。貴様、自分が何をしているのか分かっているのか!?」


「えぇ、分かっていますよ。僕はこの世界の在り方を変えます。そして、人間性を抑圧する圧政者をこの世界から消し去ります。」


───詠唱完了。


幾重にも組み合わせられた魔法は、既に先生の周りを取り囲むように造られている。

生徒は他の先生から講堂に行くよう指示され、それに従って続々とこの場から消えていく。


......これで人を巻き込む心配も無い。

あとは魔法を起動するだけだ。


「無言詠唱に気付かない、とでも思ったか! マジックキャンセラァー!」


目の前の先生が言い放った一言で、緻密に練り上げた魔力も、万全の包囲網も、一瞬で瓦解した。


「な......に?」


身体から力がごっそり消えた感覚。魔力の喪失。何が起こったかを理解するより先に、眼前の先生の勝ち誇ったような笑いが響き渡る。


「残念だったなァ! カルマ・ヴェルデぇ? このマジックキャンセラーはこの私、バース様が開発した魔力無効化システムだ。これを発動すれば校内において一切の魔力は使用できん! ......本当の所は、これを使用する予定など無かったのだがな! あの忌まわしきヴェルデの息子が来ると聞いて実用化してやった訳よ! これで思う存分、お前を痛ぶれるなァッ!」


今度は、僕の鳩尾に強い衝撃が走った。奴の強烈な正拳突きは、危うく意識を飛ばされそうになる程の破壊力だった。

......そう、相手が僕で無ければ。

そして僕は正義の履行を開始した。




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