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死神の話  作者: カラク
6/8

 その質問に、振り向いたそいつは、怪訝そうな顔をして答えた。

「なに、いきなり、そんな事わかるわけねーだろ。」

それに、そうだよな。と思いつつ、今まで押さえつけてた恐怖を吐き出した。堪えられなくなったのだろう、もしくは、こいつなら、話しても大丈夫と思うくらい信用していたのかもしれない.

黒づくめの奴を見てから、自分が死ぬこと知ることまで、起きたことを話した。死ぬ気なんてないけど、それでも、そんなことを考えてしまうことを。

「なんだよそれ、わかんねーよ。」

そう言われ、信じられる訳ないよな。と、冗談だと、そう言おうとしたら、

「でも、お前が本気なのはわかったから…そんな状況、わかんねーけど、でも…お前が死ぬのは嫌だよ。絶対嫌だ、もっとお前とバカやってたい…から」

     そんなことを、途切れ途切れに、たどたどしく、真剣に言ってくれた。


 もっと励ますとか、そんなことある訳ないと否定するとか、色々あるだろうに、死んでほしくないって、ただ、それだけを伝てきた。その顔を見て、言葉を聞いて、涙があふれた。強がりとか、取り繕ってたもの全部はがされた。

「死にたくない…死にたくない、なんで俺なんだよ!ほかにいっぱいいるじゃねーか!なんで俺なんだよ‼そんなに悪いことしたか?勝手に死ぬとか言ってきて、生きろって何なんだよ、お前が殺しに来たんだろうが、だったら…来てんじゃねぇ、嘘だって、そういってくれ…」

泣き崩れ、ただ吐き出した、言うつもりなんてなく、こんな姿、誰にも見せる気なんてなかったのに、あっけなく剥がされた。そんな俺に、何かを言うでもなくただ、背中に手を添えて、ずっとこんな弱音を、聞いてくれていた。

 しばらくたって、やっと落ち着いた。眠れなくて、物音一つに怯えていたのが馬鹿らしくなるくらい、すっとしていた。改めて、死んでやるかと、思えた。

「ありがとな、おちついた。」

「ああ。」

死神見つけないと、運命だとかそんなもんだっていうなら、そんなもん無視してやる。絶対死なないって、目の前で言ってやろう。

「んじゃ、行くわ。死神見つけないとだからな。」

「ああ。」

 立ち上がり歩き出した、そうやって公園を出る直前に、

「俺は信じねーから、お前が死ぬの、絶対笑ってやる。昨日みたいに、そんなの要る訳ないって、ンでその後、お前も彼女とか作って、ダブルデートとか、そんなもんやってやる。ジュース奢ったんだから、貸しだから、デート代お前持ちだからな。」

ああ、

「随分高いな、デートはともかく彼女は紹介しろよ、お前の悪行全部教えてやる。そんで振られろ。」

そう笑ってやった。

「あぁ、そーだな、そんなんじゃふられねーけどな。」

               「じゃあ、あしたな。」

 それに、[明日]と答えることができた。死亡フラグみたいだと思って、また笑えた。







 死神を探して歩いた。そして、見つけた。初めて見た場所にそいつは、しゃがんで、こちらに背を向けていた。

「おい。」

そう呼びかけても反応しなくて、なにしてるのかと回り込むと、あの時の黒猫が寝てるのを見ていた。猫好きなのかと見ていたら、猫が息をしていないのに気付いた。

「あの時は、この子を見に来ていました。ここに何かあるのか、この子はここから動かないから、ここで静かに逝くのだと思って。最後に、あんな人が来るとは思わなかったけど、それも、あなたの友達が助けてくれました。おかげで、穏やかに逝くことができました、この子は。」

何かを言う前にそんなことを言われ、何も言えなくなった。邪魔されたくないと、そう言っているように思えたから。

「なにかよう?」

 気が済んだのか、立ち上がりこちらを見た。

「もういいのか、そいつ。」

「はい、ちゃんと送れたから。」

それを聞いて、眠ってるように見えた猫を見、覚悟を決めた。

「俺はいつ死ぬ?」

そう、切り出した。するとそいつは、一瞬驚いていたが、すぐにそれを消して答えた。

「わからない。ただもうあまりないとしか…」

その言葉に呆れ、文句を言おうとしてやめた。フード越しでもわかるぐらい済まなそうにしてるから、本当のことなんだろう。

「あまりってことは、一週間はないぐらいか?」

「そんなには、多分二日もないくらい」

あっさりといいやがる、まぁいい、もう覚悟はきまってる。

「なら、それ以上生きてやるよ。お前に嘘つき野郎と、ああ、コスプレ野郎って罵ってやる。さんざん脅かしてくれたしな。」

そう告げてやった。すると、死神は固まり動かなくなった。そのまま、不安になるくらい時間が経って、ようやく言葉を発した。

「はい、楽しみに待ってます、そうなるのを。」

本当に楽しみな、凄くうれしいと、そう感じさせる声で、それに拍子抜けさせられた。もっと文句なんかも言ってやろうと思ってたのに。

 もういいかと、猫の死体を抱き上げ、歩き出す。すろと、

「その子、どうするのですか?」

と聞かれた。

「埋めてやるんだよ、公園在っただろ。最後に遊んでもらったし、このままは可哀想だ。」

「ありがとう…ございます。」

「なんでお前が礼言うんだよ。」

公園に着くと人目につかないとこを探した。そうやって目を付けた場所に穴を掘っていると、気になったのか子供が来た。

「お兄ちゃんなにやってるの?」

「猫埋めてやってんの、このまんまは可哀想だろ。」

「フーン、僕も手伝う。」

そう言って穴を掘り始めたのを見てまぁいいか、と手伝わせた。埋め終わり、木の枝を指して墓を作り、手を合わせた。なんとなく、こいつの分も生きよう、そう思ったから。子供は、俺を見て真似してたかと思うと、こちらを見て、笑い出した。

「お兄ちゃんやさしい!!」

それに、鼻で笑い、そうかよと答え、

「んじゃ、気をつけて帰れよ。」

そう告げて、帰ることにした。後ろからバイバーイと声が聞こえたが、振り返るのは面倒だったので、手を振ることで答えた。

 翌日になり、あいつに会い、次になれば俺の勝ちと教えた。それに嬉しそうに笑いながら、楽しみだ返してきた。ほかの奴が何の話?と集まってきたが、適当にごまかした。

 そうやって、あっけなく今日が終わった。やっぱり出鱈目だったんだなと、奢りどうしようと、帰っていると、昨日の公園にさしかかった。そこから、お兄ちゃんと声が聞こえ、振り向くと昨日の子供が、手を振りながら、こちらに走ってきていた。妙になつかれたなと思いながら、あぶねーぞと声をかけようとしたら、 

            死神がいた。


 慌てて辺りを見回した、案の定クルマが見えた、趣味が悪い、死にたくないふざけるな、どうする?怖かった、子供は笑ってる、母親か?気づいたのか叫んでる。死ぬのは嫌だ、あぁ、でも…手伝ってもらった借りがあった。

 飛び出していた、子供が車に気づいて止まってしまった、突き飛ばした、間に合ったぁ、後悔した、でも、あ、びっくりしてる、大丈夫そうだ。うん、まぁ、これなら、死神が来た驚いてるな、あぁでも、最低にはならなかった。なら、いいや。





 



 目の前で轢かれた、生きると、死なないと言ってくれたのに……あなたは、まだあるのに。でも、死が晴れていく、泣いている…泣けている、生きてる。運命は変わった。

 彼に近づく、こちらを見ている、命が終わる。 …何も出来ない、せめて何か聞かないと、わらった?

「    」

何もいえない、この人は命を全うできなかった、救えたのに、運命を変えられた人なのに、何もしてあげられない。逝ってしまう、せめてその先が、光溢れるばしょであるように。

「あなたは、命を救いました。運命を変えられました。 …貴方を尊敬します。」


          なら、いいかな、勝ったんだ俺は。

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