青年の話
フードの人物は死神だった。あまりにもまんまの恰好に疑う間もなく納得してしまった。その思いをそのまま声に出してしまったのに気づいたとき、彼女から質問が飛び出した。
「あなたは何?」
その質問を聞いて、それはこちらがするべきじゃと思い、すぐに、あ、死神だったと思いながら、漠然としすぎな質問に、困った。とりあえず、もう少し分かりやすくしてもらおう。
「いきなり何と聞かれても、質問の意味が分からないよ。」
そう返すと、彼女は何かに納得した風な仕草をし、それまでのことを話してくれた。
彼女の話は面白かった。知りたいことや、聞きたいことが、あとからあとから湧いてくる、もっと聞きたいもっと話してほしい、そんな思いを抱きながらも、とりあえずは質問に返そうと思い、考える。だけど考えても答えは出るはずもなく、そのまま、分からないと返すことしかできなかった。
そう返しても、彼女は別段気にした様子もなく、あるいは、答えが得られるとは思ってなかったのか、特に何か反応するでもなく考え込んでるのを見て、彼女のことを聞かせてくれないか、と投げかけた。不躾だったかなと少し後悔していたら、彼女は別段気にした様子もなく、
「どんなことを聞きたいの?」
と、返してくれた。
嬉しかった。感情のままに、僕は彼女へ言葉を投げかけていた。
「全部、きみのことも、君が見てきたことも、君を見た人のことも、全部聞きたいな。」
そう告げた後、我に返り、少し興奮しすぎたなと思いながら彼女を見てみると、何だかあっけにとられた表情をしていた。そんな顔が、少しかわいく思え、同時にやはり勢いが強すぎたかと思った。直ぐに死ぬとも言われなかったし、絵を描きに行ってもいないことを思い出し、日を改めてもらうべきか考えていたら、彼女は
「わかった、けど何から聞きたい?」
と返してくれた。
意外に思いながらも悩む、絵は描きたい。だけど話はもっと聞きたい。ああ、彼女は何からとも聞いてくれた、絵は一日休もう、心配かけてしまうが、物語に夢中になっていて忘れてしまったと言い訳をしよう、ある意味間違ってはいない。こんな出来事は物語の中の話だけだろう。きっと自分は間違ってない。…やっぱり悪いかな。まあ、そこは素直に謝るとして、えっと、ああ、質問に返さないと、何から、うん何から聞こう、魂?自分以外の彼女を見た人?先程の話で出てきた中での疑問もある、何故、彼女は気配を感じた際に自分以外が感じていたみたいな話方だったのだろう。精一杯生きた魂はきれいだとも、ならそうでない魂は?自分はどう見えているのだろうか。
…ああ、こうしよう。
「それじゃあ、君の見てきた光景を聞かせてほしいな。例えば、君がどんなふうに今まで導いてきたのか、とか、君を見たひとは、どんな反応をしていたのかとかが、聞きたい。」
そう彼女に告げる。それを聞いた彼女は、しばし考えだした。その様子にダメだったかなと不安になった。そうして、しばしの間、無言の時間が続いた。その間彼女は表情も変わらず、微動だにもしないので、どうしたものかと思っていたら、おもむろに顔を上げてこう告げた。
「わかった。それじゃあ、こんな人の話から始めましょう。」
…何を話すかを考えてくれてたらしい。ああ、安心した。