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死神の話  作者: カラク
2/8

少女の話

 いつもと変わらない街を歩く。見える光景は何も変わらずただ死にゆく者を探して、只々歩いていく。ふと、何かを感じたらしい方に目を向けた。人が行きかう喧噪の中から外れ、ビルの谷間の影の中そこから死の気配を、ああ、見つけた。

 ボロボロになりながらも、一生懸命に生きてきた眩しい光。この子は生を謳歌したのだろう、必死に生きて今日という日を迎えたのだろう。なら、送ってあげないと、最後に迷わないように、いく道を間違わないように。使い慣れた鎌を振り上げ振り下ろそうとしたとき、その子はこちらを見て一声鳴いた。もう絶えるといううのにそんなことは関係ないというような、誇らしげな声で、精一杯生きたと。…振り下ろした。肉体から魂が放れていく、光となって、…光を手繰り寄せる。この子の次が満ち足りたものでありますように。

「お疲れ様。」

 光を手放す。ふよふよと漂い空へと昇ってそして消えていく、それを見送り、また歩き出す。…何度も同じようなことをしてきたが、あんなにきれいな光を送れたのは久しぶりな気がする。そう思い気分が向上するのを感じながら歩いていると、ふと、何かを感じた。死の気配のようなでもまだ時間のありそうなものを、自分自身が感じた。こんなことは初めてであり、不思議に思いながら、そちらのほうに引き寄せられるように歩いて行った。しばらくその不思議な感覚に引きずられように歩いていくと、大きな施設に行き当たった。

 その施設は病院だった。死の気配に満ちながらも、あたたかな、もしくは穏やかな雰囲気を漂わせるこの場所はいいところなのだろうと思いながら、さらに不思議に思う。病院から死の気配を感じるのは、よくあることだ。なのに自分が感じたことも、この不思議な感覚も初めてで、ここには何かあるのだろうかと思いながら、感覚を頼りにその施設の中に入っていった。

 院内は明るかった。患者には笑顔があり、行きかう看護師の顔にはやる気が満ちて、死に抗おうと必死に戦っている。そんな気配に満ちている、そんな病院だ。ああ、こんな所ならきっと良い死を迎えられるだろう。そんな風に周りを見回しながら、感覚にひかれて歩いていくと一つの部屋に行き着いた。その中から死の気配はあれども、今までと変わらない、しいて言えば死ぬにはまだ時間がある、そんな感覚。とりあえずこの中に行けば疑問は解消されるだろうと、扉を抜ければそこには男性が居た。ベットに腰掛け窓の外を眺めボーとしていて、こんな人に不思議な感覚を感じていたらしい自分に、新たに疑問を感じた。そうして少し考えていると、何かの声がしてそちらに目を向けた。彼がこちらのほうを見ていた。

「何か反応してほしいんだけど。」

 苦笑交じりにそう言っていて、何に対していっているのかと思いあたりを見回したが、なにも見当たらず、不思議に思っていると、呆れの混じったような声で、こちらを見つめながら、

「君に言ってるんだけど?」

と告げてきた。自分は驚いて思わず、

「私が見えるの?」

と、声を出すと彼は首肯で返してきた。

 ああ、この人は見えてしまう人なのだと少し可哀想に思いながら、見えてしまったのなら仕方がないと思い。彼に自分のことを話すことにした。かぶっていたフードを下ろし、ふと、こんなものを持っているのに怖がらなかったなと思いながら、

「私は、あなたの死を見届けに来ました。」

そう告げると、彼は驚いたような、納得したようなそんな風に何度もうなずきながら、事もなげに返してきた。

「ああ、つまり君は死神なんだね。うん、納得した。」

 そう言ってこちらに柔らかく微笑んできた。今までと違う反応と、死の気配を感じるのにそれをかき消すような爽やかな雰囲気に、変な人だと思いながら興味を抱いた。

 こんな風に会話をすることはそうないことだと思い、彼に抱いた興味を解消すべく、話しかけた。

「あなたは何?」

そんな風に問いかけると彼は困ったふうに、

「いきなり何と聞かれても。、質問の意味が分からないよ。」

と、返され確かに少し性急だったかもしれないと思い、ここに来た経緯や、感じた不思議な感覚を話しなぜ彼からそう感じたのかを解消するため、質問したと答えた。

 彼はその話を聞いて、自分にはわからないと答えた。そう返された自分はまあ、そうだろうと思いながらならこの後はどうしようと思っていると、彼はこんなことを言ってきた。

「僕も君に興味がわいてきたな。もし、時間があるなら君のことを聞かせてくれないかな。僕以外にも君を見たっていう人たちのことも気になるし。」

 そんな風に言われて、怖がりもせず追い払おうともせずに、笑って語り掛けてくる人に何となくいいかなと思いどんなことを聞きたいの?と返した。すると彼は、

「全部、君のことも、君が見てきたことも君を見た人のことも、全部聞きたいな。」

そう無邪気に笑いながら答えた。

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