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be alive  作者: ROM99
4/16

04

「はあッ、はあッ、はあッ、……!」

息の続く限り少女は走っていた。しくじった。

一対一なら負けないと踏んだ。ところが、ふたをあけてみれば、相手は四人。"執事"は半径100m以内には一人しかLIVINGはいない。確かにそうだった。が、応援を呼ばれるなんて。

クランに所属していない少女にとって、悪意のあるLIVINGがクランを組み、応援を呼ぶという概念がそもそもなかった。迂闊だった。

「どこいきやがった、あの女!?」「ぜってえ、殺すぞ!!」「オオッ!!」

遠くで野獣の唸り声のような怒声が聞こえる。

ハンターである自分がまさか狩りの対象になるなんて。皮肉にも程がある。

夜のとばりは完全に下り、月も隠れた今夜は彼女にとって絶好の狩りの場だった。

それが全く立場が逆転してしまった。


「おい、足跡だ、林の中に続いてるぞ!こっちだ!」

声が近い、相手にもハンターがいるのか。多分、ストークトラッキングを使われてる。これじゃ、逃げても無駄だ。LIVINGの検知能力をあげるスキル。足跡どころかにおいだけでも敵の位置を把握できるようになる。

「応戦するしか…!」

"執事"が逃げる事を勧めているが、もうこうなっては、一か八か戦うしかない。

茂みの向こう距離10m、数は3、一人はデバフ、シェイドソウを当てたから

機動力が下がってる。遅れてくるだろう。囲まれればすぐにやられる。

それなら今のうちに、数を減らす。茂みから出てくるまで3、2、1…。


弦がビュンと鳴り、赤い光が線となって、茂みから出てきた男の眉間を射った。

「ゴアッ!やりやがったな、女ぁ!クソッ、ただじゃ済まさねえ!」

アブソリュートショットダウンはハンターLv20のハンターの中でも一番、攻撃力の高いスキル。リキャストタイムは35秒。

それを額にくらっても一撃で倒せなかった。防御力が高すぎる。

「自分がディフェンダーで良かったぜ。じゃなかったら今頃、光になってたところだ。」

「運が悪かったな。これで追いかけっこもお終いだ。」

「へっへっへ、スピリットもらうだけじゃあ、割に合わねえなあ、こりゃ。」

悪辣な笑い声をあげてじりじりと三人が間合いを詰めてくる。

左から、ハンター、ディフェンダー、ウォリアー。運悪く一番防御力の高い、ディフェンダーにアブソリュートショットダウンを当ててしまったのだ。


もう数を減らす手立ては彼女にはなかった。

がっくりと膝をついてしまいたかった。しかし、LIVINGとしての矜持が彼女のひざを折る事を許さず、キッと3人の敵を睨ませていた。

いつもなら"執事"もピンチを打開する策を提示してくれるのだが、押し黙ったままだ。策がない、ということだろう。

以前"執事"から『運も実力のうちであること』を聴かされていた。

運は神が運んでくる物。

それに選ばれないのであれば、それが定めと受け入れろと。

「おいおい、一人の女に三人がかりっつうのはスマートじゃないねぇ。」

どこからか、野太い声が辺りに響いた。

「誰だ!?」


「俺かい、ま、人呼んで"人食いゲンジ""東京一のウォリアー"烏丸源治、そんなとこだな。」

いつのまにか少女の背後の巨木の上に、大柄の体に龍を模したような甲冑をまとい、その大柄な体を越える巨剣を肩に担ぐ、無精髭を生やした男が立っていた。

「へっ、東京一だと?聴いたことねえな、そんな名前。てめえもまとめて袋にしてやる!」

「いいだろう。オレに喧嘩を売ると高くつくぜぇ?」

男のLIVING三人は大男に向かって突っ込んでいった。



紘一とリヴの話は夜にまで及んだ。"Be Alive"で存命するためには"Be Alive"を知る事から始めなければならない。そう紘一は考えたからだ。

"Be Alive"は現代社会では滅びつつあるシャーマンにより生み出され、企業、国、人種、宗教の枠を超えて運営されている。

そして"Be Alive"というアプリ保持者、つまりLIVINGは変身する事で、浄化されず邪悪な存在となり人間の精神を食らう強襲者を打倒する事を目的とする。

LIVINGは能力の成長のために、別のLIVINGや強襲者を倒すことでスピリットを得る。

倒されたLIVINGはLIVINGとしての権利を剥奪される。

手にしたスピリットはLIVINGに新たなスキルや、武器、防具へと変更することが出来る。

LIVINGには七つのジョブがありそれぞれに特性がある。その特性を理解する事で戦闘を優位に進めることが出来る。

"Be Alive"のアプリにはButlerOSが組み込まれており、自身のスマートフォンの性能強化とスマートフォンからの情報でLIVINGをサポートする"執事"が導入される。

"執事"はLIVING間のある程度の情報共有が可能であり、敵対関係なのか、友好関係なのかなどの情報をLIVINGに提供する。

LIVING間はクランを組むことが出来、お互いの弱点補強や、長所進展をする事も可能である。

そして、東京近郊にLIVINGは約1万人いるということ。

最後に自身の育成計画に最も時間を割いた。LIVINGは存命しなければならない。そして、得たスピリットは再振り替えができない。

ならば、自身の育成に失敗すれば、いずれ越えられない壁に出会うことになる。そうならないよう、慎重に事を運ばなければならない。紘一はそう結論付けていた。


「ふーん、なるほど。大体わかった。細かい所はまたおいおいかな。」

「長い時間お付き合いいただきありがとうございました。お疲れでしょう、今日はもうお休みになられては。」

「そうするよ、ありがとう、リヴ。」

紘一は大きく伸びをしたあと、椅子から立ち上がる。しかし、そのタイミングでリヴのはっきりとした声が聞こえた。

「申し訳ございません、紘一様。敵対意思のあるLIVINGが半径100m以内にいます。警戒を!」

「なっ!?ど、どうすればいい!?」

「変身して戦う準備をするか、住所が完全に見破られる前に、ここから逃げる事です。」

住所が割れてしまえば、悪意あるLIVINGにいつでも攻撃されてしまう。それは絶対に避けねばならないからだ。

「とにかく、外に出よう。くそ、ふざけんなよ!」

「いえ、お待ちください。紘一様、相手に近づいてくる様子がありません。…離れていきます。検索圏外に出ました。」

「な、なんだよもう、おちおち休んでもいられないのかよ。」


はあっと、紘一は脱力しながらベッドに寝転がった。その瞬間、朝の記憶がよみがえった。

「そういえば、朝の駅でも100m以内に敵がいるって言ってたよな!?」

「ハイ、あの時はホームの対角におりましたし、追ってくる様子はありませんでした。」

ベッドからむくりと上半身だけを起こすと紘一はさすがにぼやいた。

「じゃあ、登校中に襲われる事は無い、か。」

「恐らくは。今回の小林のように、場所も選ばず襲ってくることは、ほぼ無いので安心していただいて結構かと。」

紘一は頭を抱えた。

「てか、明日学校、えらい騒ぎになってるだろうなあ。あれだけ、物を破壊したからな。」

「そうですね。しかし、戦闘をしたことを知る者はおりませんし、LIVING同士の戦闘の跡は国連が裏から手をまわして、修復の手伝いをしています。また情報統制もしているので、すぐに騒ぎは収まるでしょう。」

「"Be Alive"ってすごいんだな。まだ実感がわかないよ。」



「…同じ街に二人もLIVINGがいるなんてね。早く手合わせ願いたいよ。」

ぱたりとスマホを折りたたむと、少年は暗がりの中でにやりと笑った。





都内同時刻


男四人がうずくまって、咳き込んだり、痛みに耐えかね震えている。

「つ、っつよい、ぐ、うぅぅぅ…げぅごほっ。」

「お前らが弱すぎんだよ。小悪党どもが調子乗ってんじゃねえよ。…さてと、お嬢ちゃん、大丈夫かい?」

倒れている男たちに一通り説教をし終わった後、少女の方にくるりと向き直った。

少女はこくりと頷いた。少女も自らが震えている事を自覚していた。それはLIVING四人に囲まれた恐怖からではない。人間離れした目の前の男の強さに恐れをなしたのだ。

背負った巨剣を一切抜かず、拳だけでLIVING四人を打倒したのだ。今は優しい目をしているが戦闘の時の眼はまさに"人食い"だった。

"人食い"は少女の肩をがしりと掴むと、大きく口を開いてこう言った。

「ちょうど、うちのクランで活きの良いハンターを探してたんだ!うちのクランは関東でもでかい勢力なんだ!"冠刀連合騎士団"っていうんだけどよ。嬢ちゃん、こいよ、な?俺がクランの代表、烏丸源治。よろしくな。ハッハッハッ!」



「あれ?風邪、もういいの?」

「あ、ああ、ちょっと疲れがたまってたのかな、寝て元気になったよ。」

折角、お見舞いに行こうかと思ってたのに、とユイはカラカラと笑った。

「どうせ、テン目的だろ。わかってるよ。」

「あ、ばれた?テンちゃんかわいいよねえ。おりこうさんだし。」

テンは紘一が飼っているグレートピレニーズだ。親ばかかもしれないが、利口で愛嬌もあるし、吠えたりかんだりしないので、自慢の家族だ。

母一人子一人の生活では寂しかろうと言って、二人暮らしになった時に祖父祖母から犬を譲り受け、それより、代々、犬を飼い続けていてテンで3代目になる。

駅前でユイとテンの話で盛り上がっていると、スマートフォンが大きく二回振動した。敵対意思のあるLIVINGが100m以内に入ったことを知らせる合図だ。

それとなく紘一はスマートフォンを取り出すとリヴとも会話する。

『昨日の相手と同じか』

『ハイ、紘一様。その様です。やはりホームの反対側でしょう。近づいてくる様子はありませんが、あちらもこちらに気付いているはずです。』

「テンちゃんのハイタッチ、マジかわいいよねえ、あれ反則!」

『夜の相手とは違う?』

「教えるのは苦労したよ。ジャーキー何本使ったか。」

『申し訳ありません。そこまでは解りかねます。』

『分かった。ただ戦わないならこちらも生還しよう』

『静観の打ち間違えですね。畏まりました。マイマスター。』


学校につくとやはり会議室と旧研究棟の話題で持ちきりだった。ウワサではガス管の劣化によるガス爆発だったことになっていた。

「人がいなくてよかったよねえ。」

「あ、ああ、そうだな。」

『当事者本人とは言えないよ。』

「よう!ご両人!」

「いって、タカ、こら!」

思い切り背中に紅葉を作られた紘一は自転車のタカの後を追いまわした。

「ガス管事故もすげえ事件だけど、昨日の意識不明の話、医学部のやつに聴いたんだけどよ。」

タカは医学部の人間から、世界で同時多発的に起こって、WHOでも議題に上がっているなどといった、リヴの話していたカバーストーリーを話してくれた。

「そうだ、今日バイト代入ったから飲みいかね?」

「おお、行こう行こう!」

「さすがユイさん、わかってるねえ、コウもいくだろ?」

ああ、と軽い返事をして、どこで飲むかを議論する二人と違い、紘一の顔は沈んだ。この事件の渦中に自分がいる。そしてそれを話す事も出来ない。いや、話してどうする。面倒ごとに二人を巻き込むわけにはいかない。

「じゃあ、いつものトリキで!じゃあな!あ、六時半ね!」

手をあげてタカとユイを見送る。


「…というわけで脳科学的に見ても、二週間の間に三回の行動は長期記憶に刻まれやすく…」

騒動の渦中にあるとはいえ、自分は一介の学生である、紘一はそのスタンスを崩すことはしないと決めていた。

母の稼ぎも安定しているし、父の残した遺産で十分四年制大学に通えるだけの資産があるとはいえ、ここで遊んで暮らすわけにはいかない。

「じゃあ、今日の授業はここまで。来週はレポートの宿題を出すから準備しておくように、いいね。」

ガヤガヤと学生たちが教室から出ていく。6時限目を終えるとこの季節は夕暮れだ。

手元のスマートウォッチで現在の時刻が6時であることを確認する。約束の6時半までまだ時間があるな、と思った瞬間。

右のポケットに入れたスマートフォンが三回振動した。これは敵対していないLIVINGが100m以内に入った時の合図だ。

慌ててスマートフォンをポケットから出す。

『三回ってことは敵じゃないのか』

『あくまで敵対信号を出していないだけです。遭遇した瞬間に敵対に信号を切り替える事も不可能ではありません。』

『どっちだ』

『正面です、近づいてきます。距離30』

正面から真っすぐこちらに向かってくる女性がいる。ここの学生だろうか。パンキッシュな服装に身を包み、赤髪のショートカット。まっすぐ、紘一を見据えている。

「あんただろ、会議室と実験棟でやりあったの。」

「リブ、二人に遅れるとLINEしてくれ。」

『畏まりました』というメッセージがディスプレイに表示されていたが、それを紘一は見ずに、目の前の女性を注視した。


「ついてきな。」そう一言いうと赤髪の女は踵を返した。紘一はつかず離れずを意識して歩くと女は一目のつかない河川敷の高架橋の下へと紘一を導いた。

「何の用だよ。」

ようやく、紘一は一言発することが出来た。

「小林琢磨…知ってるね。あれ、うちの連れなのよ。」

連れ、つまり彼氏だったってことか。世間は狭いね、と紘一は心の中で呟いた。赤髪の女は続けた。

「LIVINGで敗けるとLIVINGだった時、それにまつわる記憶は消去される。それは"執事"から聞いてるだろう。ついでに意識もしばらく戻らない。そうするとねえ、私と琢磨の関係も消えちまうのさ。うちらはLIVINGをきっかけに知り合ったからね。」

赤髪の女の目に怒りの感情が燃えているのを紘一は感じた。

「私は世界がどうのこうのにも興味はなかったし、強くなるつもりもなかったよ。だけど、琢磨は力をつけたがってた。だから、協力して、LIVING狩りをしたり強襲者の弱いやつを倒してたってわけ。それも昨日で終わりよ。今は病院のベッドで寝てるよ、原因不明の病気ってことでね。」

「…かたき討ちがしたいってことか。」

紘一のスマートフォンを握る手に力が入る。


「わかってるじゃない。あんたが意識を失う、ぎりぎりまで痛めつけてあげるよ…変身。」

赤髪の女の体が光に包まれると赤いローブのようなスキンに四枚の羽のような、金属板が彼女の周りを浮遊していた。ソーサリーだ。

「く、戦うしかないのかよ…。変身!」

しかし、紘一の意志とは裏腹に、紘一の姿が変わらない。

「おい、リヴどうなってる!?」

「紘一様、ここはお逃げ下さい…彼女は強すぎます。ソーサリーLv24です。勝ち目がありません。」

リヴは淡々と続ける。

「ウォリアーのLv10の差なら策で乗り越えられますが、ソーサリーのLv18の差はどんな駆け引きも無駄に終わります。逃げてください。」

赤髪の女のバイザーの奥の瞳がギラリと光ったように紘一には感じた。

「そちらの"執事"はわかったようだね、実力の差が。しかし、琢磨もまさか低Lvの相手に負けるとは思ってなかったんだろうな、可哀そうに。変身しなくても、恨みは果たさせてもらうよ。行けッ!」


四枚の赤い羽根が女の周りに展開し、一斉に光線を紘一に放った。紘一にぶつかった瞬間のエネルギーで砂煙があたりを覆う。

「あっさりしたもんだね。復讐も…」

「リヴ、助かった。」

「いえ、お逃げにならなかったのでは戦うまで。致し方ありません、ご助力いたします。」

砂煙がはれるとそこには、赤を基調としたプロテクターに身を包んだLIVINGとなった紘一がいた。盾を構え、光線の直撃を避けたのである。

「チッ、おとなしくやられていればいい物を!」

四枚の羽が位置を微調節して再度光線を放つ。紘一はそれを動きでかわし、前に躍り出る。

「うおお!」

間合いを詰めて斬りかかるがそれを羽の一枚が受け止め、他の三枚が三度光線を発射するために銃口を紘一に向けていた。

しかし、ソーサリーの通常攻撃に当たる光線、ビットレイはリキャストタイムが4秒ある。それまで紘一は三連続で羽を斬りつけ、再び間合いを離した。

ボッ、という音で光線が発射され、四本の光線のうち二本が紘一をとらえた。

「ぐああぁぁ!!」

当たった衝撃で高架橋の壁にぶつかりガラガラと音を立てて高架橋のコンクリートが剥がれる。

「ぐはっ!」

ビットレイの衝撃とコンクリートへの衝突の衝撃でプロテクターにひびが入る。が、紘一はすぐに立ち上がる。


「しぶといね、なら、これでどう?プロミネンスファイアーー!」

4枚の魔道具の先端からそれぞれ炎が噴き出し、渦を巻いて紘一にぶつかる。紘一のプロテクターに魔導の火が燃え盛る。

「わあ、ぐあぁあああ!!」

紘一は体を躍らせながら、川へと飛び込んだ。火は消えたが、既に紘一のプロテクターはボロボロになっていた。もちろん、紘一自身も。

戦いが始まってまだ数分も経っていないが、紘一は既に立っているのがやっとの状態だった。それでも、紘一は膝を折らない。

「イライラさせるね。なら何度でも喰らうがいいよ、行け!」

再びビットレイの光線が四本走る。それを今度は紘一は盾で受け止め、その衝撃で盾は割れ、真後ろに吹き飛ぶ、が。

「ライカウィング!!リヴ飛ぶぞ!!」

その言葉とともに、後ろに跳ね飛ばず、真上へと跳ぶ。そこには線路の真下、高架下の鉄骨部がある。それを壁代わりにして、紘一は、三角跳びの要領で女へと突撃した。

「こざかしいんだよ!」

魔道具を咄嗟に四枚の盾にしたが、紘一の狙いは女ではなく、羽型の魔道具だった。すでに三連斬で切り込みを入れた一枚に、渾身の一撃を見舞う。


ガキイッと鈍い音がして魔道具の一枚が真っ二つに割れた。

「なっ!?」

女の動揺は体を硬直させた。そして紘一はその一瞬の硬直を見逃さず女の喉元に剣を突き立てた。



「おっせえなあ、コウのやつ。あ、生もう一ついる?」

「ああ、あとモモも。」

ユイとタカは約束のトリキで、横並びで飲んでいた。二人は開始三十分で、すでにジョッキを三杯ずつ空けていた。二人とも所謂ざるである。酒の強い方ではない紘一は二人のペースに巻き込まれると、いつも、知らない場所で目を覚ますという憂き目に合う。

「あ、俺、タン、いや、ああどうしよっかなぁ。」

『許さない、生きている人間達が憎い、こんなに私は苦しんでいるのに、お前達は…』

「てか、なんか、冷房効き過ぎじゃね。さむくない、大丈夫?」

「わかるぅ、ちょっと季節外れだよね。まあ、それも営業の作戦なのかも、酒飲んであったまろーみたいな?」

『憎い、憎い、憎い、死ね、死ね、死ね、生きている人間たちは皆…死ねぃ!!』

ガチャン、パリーン、厨房の奥で何かが割れる音がしたのをタカが気付きそちらをのぞき込んだ瞬間にはもう、目の前に炎が迫っていた。

「ユイ危ないッ!!」「キャッ!!」

ドーンという爆発音が街に響いた。

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