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be alive  作者: ROM99
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「紘一兄ちゃんは攻防一体のファイターだし、華南は元ヒーラーで現ハンターだからバフも回復も出来る!俺たち二人の時よりずっと、戦いが楽になるじゃん!」

華南が両手を合わせて喜びを表現する。

「そうだね、紘一さん、良ければ、今後一緒に行動しませんか?きっといいパーティーになれますよ、私達!」

「勿論、初めからそのつもりだったんだから。改めてこれからよろしくね、流南、華南。」


「それでは、紘一様を代表として、流南様華南様でパーティーを組みます。お二人はご存知かと思いますが、戦闘をパーティーで行った場合経験値は戦闘での貢献度によって"Be Alive"が自動で判定して振り分けます。それは単に与えたダメージ量だけではなく、回復、バフ、デバフ、戦闘行動、ありとあらゆる面から総合的に判断されるものです。それに対し異議申し立ては出来ません。宜しいでしょうか。」

"執事"のリヴがパーティーを組む三人にパーティーを組んだ際の注意点などを述べていた。それに対して、異論ある者はいなかった。

「パーティーのリーダーはどなたが務められますか?」

「そりゃ勿論、紘一兄ちゃんでしょ!」

「私もそれが良いと思います!」

「まあ、年長者だしね…。引き受けさせてもらうよ。」

「畏まりました。マイマスター。それがよろしいかと。では、華南様流南様の"執事"アランとミニーとも連携が密に取れるようにしておきます。」

そういうとリヴは今日の解散を提案した。

「今日はいったん、帰って休むのがよろしいかと、特に流南様のプロテクターの損傷が非常に激しく、体力も消耗されているご様子。」

一同それに賛同し、その日を終えた。駅で別れ際、流南は手を大きく振り、華南は会釈で紘一を見送った。


そのころ、瞬は幹川を襲った強襲者と戦いを繰り広げていた。街中の夜、人気のない公園の中である。しかし、それを戦いというのであれば、であるが。

「どうした、その程度か…。もっと、もっと、僕を満足させろ!」

瞬の振るう槍先が、虫のような外観を持った赤黒い強襲者のクリーチャーの腕の一本をちぎり飛ばした。

「お前が与えた苦しみをお前にも味合わせてやる…何倍にも増やしてな!ブレッシングオブライト!!」

ちぎられた腕が光とともに再生する。そして今度は別の一方の腕を槍で薙いで弾き飛ばした。強襲者と瞬の強さの差は歴然としていた。倒そうと思えば一瞬で倒す事も出来る、が、あえて瞬はそれをしない。強襲者に出来得る限りの苦しみを味合わせるためだ。

「僕がお前を絶望させてやる!苦しみぬいて、消えてなくなれ!」

槍が一閃、二閃、三閃と振るわれる。その度に強襲者の六本の腕が一本ずつもがれていく。そして、おそらく腹部であろう所に向けて、槍を突き立てる。ギィィ、と気味の悪い声で強襲者がうめく。死なない程度を加減して切り刻んでいく。

「お前のやった行動が許されると思うか!?怒り、悲しみ、孤独、それを抱えたまま死んだからと言って、それを他人に振りまいていい訳がない。お前に罰を与えてやる。」

切り刻まれた表皮に向けて思い切り、蹴り飛ばし、ジャングルジムに叩きつけられ、強襲者はうめき声をさらに上げる。ドスンという音とともに、強襲者の胸に槍が刺さる。が、急所をわずかに外している。それを二度、三度。強襲者のうめき声が小さくなる。と、瞬は攻撃をやめしばらく、のたうち回る強襲者を眺めながらベンチに腰かけた。

「お前はなぜ、強襲者になった?なぜ虐げられたものが虐げる側に回る?虐げられたものは虐げられたものの、苦しみを理解できる存在だ。なぜ、それをしない。お前にしかできない事があったはずだ。それを…貴様は!ブレッシングオブライト!」

強襲者の傷口はふさがり、斬り落とされた脚は再び元に戻る。しかし強襲者は震えるばかりで瞬に襲い掛かろうとしない。

「まだだ、まだ僕が絶望を与えてやる。消えてなくなった方がましだと感じるほどにな!!」

強襲者の叫び声が辺りにこだました。しかし、その声はLIVING以外には届く事は無い。


「ええ、このころフロイトを取り巻く環境は決して、順風満帆というわけではなく…。」

『Lvだけなら十分に倒せるはず、しかしあくまでそれは数字での足し算の上でだ。』

紘一は一夜明け、行動心理学のノートをとるふりをしながら、タカとユイの意識を奪った強襲者打倒の作戦を立てていた。相手はLvの足し算ではもう格下、ということになる。しかし、連携で足を引っ張りあえばかえって勝機を逃すこととなる。やはり、華南にバフを掛けさせ、流南に盾役をさせて、足止めをとり、そこを自分が攻撃する。しかし、自分が攻撃対象、もしくは、華南が攻撃対象となったら?

『かえって危険か…。さて、どうする。割り込んでもらってでも、防御に流南に徹してもらい続ける事は、今度は流南に危険が偏り過ぎる。考えろ。どうするべきか。いや、まてまて、そもそも流南がどれだけできて、華南がどこまでできるのかも分かってないじゃないか。まずはそこからだ。』

紘一は机上のスマートフォンを教授に悟られないよう操作した。情報ツールとしての役割が非常に高まったスマートフォンは、今現在でさえ、授業中の操作を嫌う教授が多い。

『リヴ、流南が出来る事、出来ないこと、華南が出来ることできない事を調べてもらう事は可能か?』

『ハイ、勿論でございます。そのためにアラン、ミニーと連携をとっております。しばしお待ちを…』

『そういえば、なぜ、ディフェンダーの流南がサイクロプススラストを使えたり、ハンターの華南が回復スキルを使えたんだ?』

『それについては熟練度の問題です。アクティブスキルは使った回数により熟練度が上がりスキルポイントを同じスキルに振る事で、一定値までそれがあがると他のジョブに変更した後でも使うことが出来るようになるのです。紘一様であればライカウィングならスキルポイントを振る事で他のジョブで使用が可能となります。』

紘一は大げさに首を縦に振る。これは行動心理学の教授にたいして授業を受けているというアピールにもなる。

『それなら色んなジョブを経験して、多くのスキルを使えるようにした方が得なんじゃないか?』

『いいえ、ステータスを持ち込むことが出来ないため、ジョブを軽々に変えるのは存命率を下げる結果を招くことになりかねません。流南様、華南様ご兄弟は恐らくはそれを互いに補い合いながら、ジョブチェンジを行ったのでしょう。…さて、先ほどの頂いた質問に対してですが、おまとめいたしました。ここで論述するのは情報量が多くなりますので、PDF形式にしてGoogleドライブに保存しておきます。PCルームにて印刷していただき読んでいただければと。』

『仕事が早いな、相変わらず…。次の講義は空き時間だからちょうどいい。読んでおく。あと、強襲者の情報も出来るだけ集めておいてくれ。』

『畏まりました。マイマスター。』


構内のPCルームは最新とは言えないまでも、良質なPCが学生に使い放題とあって、情報処理系の授業がない時間でも賑わいを見せる。とはいえ、データなどは毎回使うごとに初期化がかかる為、PCゲームなどを楽しむことは出来ない。あくまで、レポートや、ゼミ、クラブ活動のチラシ作りなどがメインだ。紘一は先ほど、リヴがまとめてくれたレポートを読みふけっていた。

『流南は攻撃スキルはあくまでもサイクロプススラストだけ、防御スキルはキャッスルプロテクションにリフレクトガード。華南はすごいな、多分、スピリットをスキルにありったけ注いでるんだろうな。回復スキル2種、バフスキル3種、デバフスキル2種。これだけあれば、戦力を大きく底上げして、敵戦力を下げることが出来るな。ただ、全部使うには時間もかかるのか、なら…』

紘一はそれに自身のメモを加えるなどしながら、頭の中を整理していく。己を知り、相手を知れば百戦危うからず。まずは己からだ。その時、紘一のスマートフォンが振動し始め、画面には知らない番号からの電話だった。紘一はPCルームから離れ電話に出る。

「あ、もしもし、田中君?私、神田です。」

「え、か、神田先生!?はい、え、てか、なぜ、僕の番号を?」

「あのねえ、私は学部長よ、そのくらいの権限あるわよ。あなたのゼミの幹川君、気が付いたそうよ。良かったわね!」

「そうですか!よかった…!」

『瞬、本当に一人でやったのか。』

「あとで、お見舞いにでも行ってあげなさい、あなたにはその権利があるはずよ。」

「権利…?」

「それじゃ、じゃね!」

「あ、ちょっと、神田教授!?…切れた。なんだ権利って。まあ、権利はあるか。あとで幹さんのとこ寄ってこよう。」

再びPCルームに戻り、紘一はどんな立ち回りが出来るのか、あれこれと考え、ノートにまとめていった。リヴから提供された、強襲者はやはり、孤独による死亡だった。会社内では浮いた存在として孤立。恋人と親友に裏切られたその女性は、周囲に誰も助けを求められず、会社に向かう列車に飛び込んだのだという。それ以後、多くの境遇の人間に自死をかどわかし、地下鉄のホームで力をつけていったのだという。恐らくはレイスという種の強襲者だという。人型の強襲者で、哀しみの叫びによってLIVINGや生きている者へ危害を加えるという。

「孤独、か…。」



コンコンコン。

「こんにちは。幹さん。」

「おお、こういっちゃん、今日のオレは人気者だなあ、アハハハハ。まあ、座れよ。」

紘一は授業後、幹が入院していた病院に見舞った。こういっちゃんと紘一を呼ぶのは紘一の人生の中で彼だけである。

「具合は、どうですか?」

「いやぁ。これが元気そのもの。朝から色んな医者が来て色々調べたんだけど、今んとこ異常ないみたい。まあ、ただ困ってることはある。」

「というと?」

「可愛い看護婦さんがいない事だ。」

「聞いた俺がバカでしたよ。」

紘一は頭を抱える。幹川はこういう男だ。だが、この底抜けの明るさに誰にも癒され、彼の周りにはいつも人がいた。

「ゆいはん。ゆいはんも意識ないんだって?」

「…誰かから聞きましたか。」

「さっき、教授がきてね。大学だけで俺含めて5人も意識不明らしい。どうなってんだろうな。」

珍しく、暗い口調で幹川はつぶやいた。

「あの日な、バイト帰りに原チャとばしてたらさ、この季節なのに真冬みたいな寒さが来て、耐えられなくて原チャ下りて、ローソンであったかいのでも食おうとしたら、急に目の前がぐらっと来てさ。気付いたら、今日だった。」

紘一は口を真一文字に結んだまま開くことが出来なかった。

「俺、病気なのかな。ていうか、俺以外の皆も。」

紘一は固くしまった口を無理やり開いて、"Be Alive"が用意したカバーストーリーを話した。

「そっか、原因不明の奇病で世界中で起きてる。ますますなんだかな。」

「怖い、ですよね。」

「うーん、怖いもそうなんだけどさ…。」

紘一は次の言葉を待った。

「いや、なんでもない。俺みたいな文系が考えてもWHOの役に立てるわけでもないしな!あ、そうだ、退院したら合コン、連れてってくれ!絶対この話題で、いけるから!」

「ハハハ、分かりましたよ、行きましょう!企画しときますよ!」



「一番線、列車が参ります。黄色い線までお下がりください。」

ホームの片隅に小さな花瓶にしおれた花が幾本か刺さったまま、ぽつんと置かれていた。彼女の為の物だろうか、それとも彼女がかどわかし、亡くなった被害者の物だろうか。紘一は、しおれた花を抜き、新しい花を挿し、買ってきたミネラルウォーターで、花瓶に水を満たし、両手を合わせた。

『あなたは私の声が聞こえるの?私の姿が見えるの?あなたは誰?』

紘一のスマートフォンが振動する。スマートフォンを手に取ると画面に表記がされている。

『どうやら、強襲者がこちらを認識しているようです、警戒を』

「彼女と話せないかな?」

『真意を量りかねます』

「そのままの意味だよ。出来るならしたい。」

『以前もお話しした通り、強襲者の声に耳を傾けてはなりません、やるべきではありません』

「ということは出来るんだな、それなら話をさせろ、リヴ。」

『…畏まりました。一時的に紘一様の霊力をあげて、視認できるようにします。』

紘一がホームに振り替えると、線路の真上、何もない中空に人が立っている。女性だ。髪は肩までまっすぐ伸び、グレーの制服なのだろか。黒いパンプスをはいた足もある。うすぼんやりとして見えにくいが。紘一は彼女の目をまっすぐと見て話しかける。はたから見れば、電車を待つ一人の青年だろう。

「あなたが居酒屋で起こした事件の被害者の友人です。」

『居酒屋?居酒屋、なんのこと?』

「覚えていないのですか?一週間前、あなたが居酒屋で起こした爆発事件のこと、その現場にいた全員の意識を貴方は喰らったのでしょう?」

『いざ、かや?、うぅ、解らない、ただうるさいのは嫌いなの、人がにぎやかにしているのが、なんだか嫌なの、そう、そうよ。憎いの。』

そう最後にぽつりと言った瞬間、あたりの空気がいっぺんに冷えた。恐ろしいまでの冷気が紘一を襲う。

『あいつら五月蠅いのよ、私がこんなにも苦しんでいるのを知っていながら、がやがやと。あの人とあいつが、二人で手をつないで、それで、そうよ、許せなかったの!許せるわけないじゃない!許さない許さない許さない許さない!!ユルサナイィィィィィイィィ!!!』

「ぐはあっ!」

強大な音量で、駅のホーム内のスピーカーが一斉にハウリングする。耳を抑えても爆音が鳴り続け、紘一は立っている事すら困難なほどの音量に鼓膜が震え続けるのを体感していた。ホームのあちらこちらにいた人たち全員が同じように耳を抑えていた。

『紘一様、逃げてください、彼女の怒りが周囲にタタリを招いています。今は何も彼女に届きません。』

「あんたの孤独を分かってやることは出来ない、でも、オレが解放してやる。いや、オレ達が解放してやる!苦しみから解放してやる。ぐぅあ…。」

紘一は耳を抑えながら地下鉄のホームを去った。駆けあがった地下鉄の入り口までハウリング音が響いていたが、やがて止まった。


「紘一様、何度も申し上げた通り、強襲者に声をかける事は百害あって一利なしです。おやめ下さい。」

リヴが怒りに染まった声でスマートフォンから声を発する。

「そんな事は無いさ。解ったこともある。」

「わかったこと、でございますか?」

「今の彼女を開放するには戦うしかないってことさ…。」

イラついたように"執事"は返す。

「何度も申し上げた通りでございますが。」

「言われたことを実証するのも学者の端くれの仕事だよ。…ただ、救えるなら救いたかった。それだけだ。」

「…。」

リヴはそのまま押し黙った。

読んで下さった方に最大限の感謝を。

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