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第八十二話 水晶玉

 

溶鋼収斂殻ようこうしゅうれんかく


岩石楔杭陣(ロックウェッジパイル)


 峩榴堕(ガルダ)の動きを止めた僕たちは、すかさず金魔法と土魔法で峩榴堕(ガルダ)を檻に閉じ込めた。

 流石に鉄と岩石でできた巨大な檻の中に閉じ込められたら、飛び立つことはできないだろう。


 ……霊鳥に対してこんなことをしていいのか? という罪悪感がハンパないけど、紫水晶(アメジスト)を取り返すためには仕方ないと言い訳して峩榴堕(ガルダ)の巣に向かった。


 峩榴堕(ガルダ)の巣は遠目に見たとき感じたままだ。

 ……大きい。

 岩石を寄せてすり鉢状にした土台の上に枯れ木、枯れ枝を組み合わせて巨大な鳥の巣が作ってある。


 この島の生態系の頂点にいるだけあって、光り物が沢山転がっている。


 どうしようかと悩んでいたら、トゥーファンが巾着にホイホイとしまい始めた。


 あ、そうか。

 巣ごとどうこうするつもりはないし、紫水晶(アメジスト)の水晶玉が目的で、他の宝石はおまけだ。


 ホイホイと宝石を集めてたら、お目当ての水晶玉があった。


「トゥーファン、あったよ」


 紫水晶(アメジスト)の水晶玉を両手で持ってトゥーファンに見せる。


「おぉ、大きいな。これで白金貨十枚か。

 この調子だと峩榴堕(ガルダ)の巣にある宝石だけで城が建つんじゃないか」


 言いながらトゥーファンが同じ大きさの柘榴石(ガーネット)を拾った。


「まぁ、確かにアルフレッドが見たら気を失うんじゃない。兎人(ラビットマン)のセフェウスも悶絶するだろうね」


 僕は肩幅ほどの大きさの珊瑚(コーラル)を木の枝の中から引きずり出した。


「あぁ、とりあえずは貰っておくがどこまで出すか考えないと余計なトラブルまで付いてくるぞ」


「こっそりと付与(エンチャント)とか素材に使えばいいんじゃない」


 笑って返すと、トゥーファンが思い出したように聞いてきた。


「ここにある宝石でシオンの指輪とか作れるかな?」


「うーん。どうだろう?

 この指輪はかなり特別な石だと思うんだよね。

 うーん、作れるかも知れないけど、僕じゃ難しいかも……」


「そうか……」


「この指輪がどうかした?」


「いや、兎人(ラビットマン)たちにな。

 せっかくだから、何かやれないかと思ってな」


 トゥーファンが拾い上げた大粒の真珠(パール)を弄んでいる。


 そうだった。

 アルフレッドの方は何とかなりそうなんだけど、兎人(ラビットマン)たちは、難しい。

 魔法はちょっとマシになったけど戦えるかとうかは微妙だ。醜奪人鳥(ハルピュイア)は無理だし、熊とか土竜(もぐら)も敵わないと思う。

 身を守るために付与(エンチャント)を教えたいのに、付与(エンチャント)は全く進んでいない。


「ほう、シオン、面白いものがあるぞ」


 トゥーファンが巣の一角で何か見つけた。


 綺麗な宝飾のついた短剣だ。


 木の枝の下の方にも槍みたいなのが見える。


「さながら武器庫だな」


「寝心地悪いんじゃない。

 だから、一カ所に集めて木の枝で隠してるんでしょ」


 次々と宝剣が出てきて、最終的に十本近い剣や盾が出てくる。龍の紋様が浮き彫りになっている槍とかかなり貴重な品っぽい。




 パキィーーーン!


 突然、澄んだ甲高い音がした。


 振り向くと僕とトゥーファンが作った檻がガラガラと崩れた。


「ヤバッ!」


「早かったな」


 峩榴堕(ガルダ)が崩れた檻を翼で押しのけて姿を現わす。


 心なしか怒気が身体から噴き出しているように見える。


「面倒だし、さっさと戻るか」


 トゥーファンが僕の肩に手を乗せてきた。


「了解」


 軽く見回して忘れ物がないことを確認する。

 二人とも剣を腰に下げ、巾着にをその横に付けている。


 峩榴堕(ガルダ)が羽ばたき、その羽根を飛ばして攻撃してくる。その羽根を回避するタイミングで、モーションなしの転移で砂浜に飛んだ。




「さて、三人に何て説明しようか?」


 東の砂浜、毒に侵されたシーラをサーラとアルフレッドに任せて放置した場所に飛んだ。

 離れたところから三人の様子を見ようとして転移した僕は姿を探しながらトゥーファンに聞いた。


 陽も高くなってきているから砂浜に寝たままということはないだろう。

 かと言ってシーラに無理させるはずがないから、その辺にいると思うんだけど。


「まぁ、転移と複数属性はダメだな。

 特にアルフレッドに知られたらこの先面倒だ」


「だよねー」


 三人と離れてる間は逃げ回ってたことにすればいいから、問題は最初に転移したのと、その後醜奪人鳥(ハルピュイア)の巣に戻ったやつと今の帰ってきたやつ。

 あ、草原の家にある醜奪人鳥(ハルピュイア)の巣。


「転移は醜奪人鳥(ハルピュイア)に転移させられた、じゃ無理あるかな?」


「ちょっと無理があるな。

 シオンが転移石を持ってた、とかはどうだ?」


「転移石?」


「あぁ、転移のできる魔道具で、魔力を込めるとどこか近くに転移する石だ」


「そんなのあるの?」


「いや、知らない。でっち上げだよ。

 シオンが転移できる、空間魔法が使える、よりはマシだろ」


「まぁ、仕方ないかな?

 それで使い終わったら壊れて無くなった、ってことだね」


「そして、砂浜に転移したことに気付いたシオンは猛ダッシュで山に戻ったんだ……」


「猛ダッシュ……。

 あの三人は気が動転してて僕が消えたように見えた……」


「……無理があるか?」


「無理かも知れない」


「その場合は、ショート転移でちょっと離れたところまで走って見せればいいさ」


 トゥーファンが笑いながら言ってるけど、目が泳いでるよ。ショート転移も控えるとして、ちょっとぐらいならごまかせるかな。


「後は醜奪人鳥(ハルピュイア)の巣だね。

 流石に草原の家の中に二十もの巣が積み重ねられてるとマズイよね。

 何だこれ? ってなっちゃう」


「うーん。

 一度、草原の家に戻るか?

 先に三人が草原の家に戻ったら見つけられる。その前に巣をどこか近くに移しておこう」


「あ、そうだ」


 僕はトゥーファンと一緒に跳んだ。

 淡い光が僕たちを包んで一瞬で草原の家に転移した。




「っと、おぉ! 凄い量だな」


 部屋に到着するなりトゥーファンが呟いた。

 草原の家、中層の大部屋が醜奪人鳥(ハルピュイア)の巣で埋められている。

 両手幅の巣が五つほど積み重なった塔が四つある。

 一つの塔で僕の身長ほどもあり、巣のあちこちに紫水晶(アメジスト)が引っかかっている。


「これを背負って運んだとか、無理だな」


「え〜、大変だったんだよ」


 トゥーファンがあっさりと判断したので、思わずむくれてしまった。


「まぁ、いいさ。この部屋にあるのがマズイだけだ」


「あ、そういうことね。

 じゃ、近くの草原に持って行く? いや河原がいいかな?

 川を船で下ったことにしようか?」


「それなら何とかなるな。

 河原にそれらしい船と小屋を作るか」


 ん? 今、下の方で声が聞こえたような?


「……トゥーファン、ひょっとしてサーラたちが下にいる?」


 声をひそめて、耳をそばだてた。


「……いや、まだ家に入ってないな。

 だが、近くまで来てる」


「ヤバッ!」


 自分で声を上げ、自分の口を手で押さえた。


「大丈夫だ。さっさと河原に飛ぶぞ」


 そこからは口を噤んで近くの河原に転移した。

 最初にトゥーファンを連れて河原に土蔵を作ってもらうと僕が醜奪人鳥(ハルピュイア)の巣を運ぶ。

 河原に木魔法で何本かの木を転がすと土魔法で結びつけて筏にした。


 うーん。火魔法縛りだとすごく面倒だ。

 木魔法で一気に作ると魔法で作ったのがバレそうなので普通の木を作ってトゥーファンに土魔法でそれらしく固めてもらう必要かある。


「もう一つ作るか? この筏だけじゃ巣が乗り切らないな」


「じゃ、二人で二艘の船に別れて下ったことにしよう」


 もう一艘似たような筏を作って河原に並べた。


 これで一応辻褄は合うかな。


 シーラが怪我して危険だと思った僕は持ってた転移石で醜奪人鳥(ハルピュイア)の住処から転移した。

 転移石は壊れてしまったけど、無事三人を砂浜に逃がすことができた。

 僕とトゥーファンが最初に到着した砂浜であることを気づいた僕はすぐに醜奪人鳥(ハルピュイア)の住処にに向かって走り出した。

 転移したから魔法視覚化(エフェクト)が見られたと思うけど、魔法で身体強化をかけたことにしよう。


 トゥーファンと合流した僕は醜奪人鳥(ハルピュイア)から逃げながら、巣を抱えて逃げ出した。

 紫水晶(アメジスト)を探す余裕が無くて、崖に登った僕がトゥーファンに巣を投げて運び出したことにしよう。


 偶然川を見つけた僕たちは簡易の筏を作って流れに任せて下って来た。

 手頃な河原に着いたので、土蔵を作ってそこに巣を運び込んで休んだ。


 とりあえずこれで行こう。


 それにしても木魔法ばっかり使ってる気がする。

 火魔法って攻撃力はあるけど、使い道が少ないな。




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