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第七十九話 醜奪人鳥の崖

 

 ゴロゴロとした岩場の先にある崖。

 山の頂上はその向こうにある。

 夜空に浮かぶ月は雲に隠れたり現れたりを繰り返している。


 幽かな月明かりに浮かぶ崖はさほど高くないけど、所々の窪みに丸くなった醜奪人鳥(ハルピュイア)が眠っている。その数はざっと二十。しかし崖にはいくつかの割れ目がある。

 その奥にも醜奪人鳥(ハルピュイア)がいるとしたらその数はもっと増えるだろう。


「想像してたより面倒な状況だな」


「しかし、醜奪人鳥(ハルピュイア)の巣を見つけた。崖下に紫水晶(アメジスト)が落ちてないか確認して、登れそうな所を探すしかないな」


 トゥーファンのため息にアルフレッドが荒い息を被せた。


 アルフレッドの言う通り、周りを調べてから実際に巣の中を探したい。周りに紫水晶(アメジスト)が落ちてればリスクがあってでも巣に近づくのだけど、今の段階では無謀過ぎる。

 崖を登らないと醜奪人鳥(ハルピュイア)の巣に辿り着かないし、巣に着いて醜奪人鳥(ハルピュイア)が目を覚ますと崖を飛び降りる以外に逃げ場がない。


「ぶつからない程度に広がるが、まとまって行くぞ。

 サーラとシーラは後ろから周囲を警戒してくれ。特に上空を頼む。オレたちが崖下を調べる」


 みんながトゥーファンの言葉に頷いて歩き出した。




「待ってくれ」


 アルフレッドがしゃがみ込むと足元の石をつまんで調べ始めた。


 親指の先ほどの角張った石。

 薄明かりでただの石とは違うのが分かる。


「当たりだ。紫水晶(アメジスト)だ」


 声を抑えているけど興奮してる。

 とりあえず第一段階はクリアだ。少しでも紫水晶(アメジスト)を回収する可能性が出てきた。


 ここから崖下まではまだ距離がある。

 ということは醜奪人鳥(ハルピュイア)の巣から転がり落ちて飛び散ったか、運び込むときに落としたか。


「まずは落ちている紫水晶(アメジスト)を回収しよう。

 アルフレッドとシオンはオレと一緒に紫水晶(アメジスト)を拾う。

 サーラとシーラは継続して上空の警戒を頼む。

 醜奪人鳥(ハルピュイア)に気付かれたらすぐに撤退するぞ」


 みんなが声を出さずに頷くと早速行動を開始する。


 薄明かりの中、足元の岩石、砂利の中から紫水晶(アメジスト)を探して歩く。

 アルフレッドはどうやってあの一粒を見つけたんだろう。不思議になるくらいの難易度だ。


 取り敢えず明るい所で確認すればいいや、ぐらいの感覚で紫水晶(アメジスト)っぽい石をポケットに入れていく。光の反射を見つけたら、石の形と透明度で判断する程度の見分け方だ。そして溜まった所で巾着に放り込んだ。

 アルフレッドは布袋を持っていたようで、その袋に拾った石を入れている。

 トゥーファンもいくつか拾い集めては巾着に放り込んでいる。

 なかなか順調そうだ。


 だけど、こんなにあちこちに飛び散っている元の量を考えると憂鬱になる。


「今晩はどこまで調べるか……」


 宵闇の中、目を凝らして紫水晶(アメジスト)を探すのに疲れて視線を上げると、崖の割れ目にかなり近付いているのに気付いた。


 崖を登り醜奪人鳥(ハルピュイア)の巣を調べるのは難しいけど、割れ目の調査ぐらいはしとくべきか?


 割れ目の中にも醜奪人鳥(ハルピュイア)がいるのか? 割れ目の奥はどうなっているのか?


 もし、割れ目の中にも醜奪人鳥(ハルピュイア)の巣があった場合、外から見える二十程度の数では済まなくなる。だから、割れ目が奥まで続いていない方が助かる。


「トゥーファン、割れ目の一つを調べてみないか?」


 トゥーファンが石を拾い上げ視線を挙げたタイミングで声をかけた。


「うん?」


「そろそろ周辺の回収を一段落させて、これからの段取りを考えるために、割れ目を調査しないか?」


「あの崖にある割れ目か?」


「うん。

 紫水晶(アメジスト)を回収するにはちゃんとした袋が必要だろうし、醜奪人鳥(ハルピュイア)の巣を調べるのはリスクがある。

 一応、割れ目に醜奪人鳥(ハルピュイア)の巣があるかどうかぐらい調べといた方がいいんじょないかな?」


「それもそうか。

 なら、オレが行くか」


「あ、そうか、全員で行かなくてもいいのか。

 なら僕が行くよ」


「別にどっちが行っても構わないが……」


「楽しそうだし僕が行くよ。

 アルフレッドたちが危険になっても困るし」


「そうか。悪いな」


 警戒をトゥーファンに任せて、静かに割れ目に近づいて行く。宵闇に包まれた崖の陰に入ると割れ目の中は周囲よりも更に暗い。

 割れ目の中へ二、三歩入り目が慣れるのを待った。


 目が慣れてくると見えてくるのは更に奥へと続く崖の割れ目。人が一人入れる程度の割れ目が続いている。


 奥へ進むのを躊躇い、足元を見ると外に転がっていたよりも一回り大きな紫水晶(アメジスト)がいくつか転がっている。

 その石を拾い確認してから、上を見た。


 薄明かりの中を流れる雲しか見えないけれど、恐らく醜奪人鳥(ハルピュイア)の巣がある。

 でなければ紫水晶(アメジスト)が転がっていないだろう。


 改めて視線を戻し、割れ目を奥に向かって進むが、この割れ目がどれほど続いているか分からないので不安になってくる。


 二十歩ほど進んでも終わりが見えない。

 引き返そうかと思い、振り返るとそちらも暗いままだ。割れ目は少し曲がりくねっていたようで、入口が見えない。

 同じ道をそのまま戻るのも勿体無いので紫水晶(アメジスト)を拾いながら割れ目を帰る。

 割れ目の外とは比較にならないぐらい紫水晶(アメジスト)が転がっている。


 この割れ目の上にはどんな巣があるのだろう?

 視線を上に向けたとき、この割れ目に入ってくる人がいた。


 ?!


「シオンさん!」


「サーラ?」


「良かった。

 醜奪人鳥(ハルピュイア)が目を覚ましたようです。」


 サーラが振り返り外を心配するとサーラに続いて、シーラ、アルフレッド、そしてトゥーファンも割れ目に入ってきた。


「マズいことになった。

 醜奪人鳥(ハルピュイア)が目を覚ました。ここで騒ぎを起こすと更に沢山の醜奪人鳥(ハルピュイア)が目を覚ましてしまう」


「奥は割れ目が続いているけど、逃げ切れるか分からないよ」




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