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第七話 大広間


 隠し扉の先は大広間だった。

 天井の高いドーム型の大広間。

 扉はなく三方向の壁面に大きな石のレリーフが据えられている。

 そのレリーフにはよく分からない幾何学模様が彫ってある。

 レリーフとレリーフの間には彫像があり、その前には鉄の甲冑が並んでる。


 振り返ると僕が出てきた隠し通路も大広間側にはレリーフが彫られている。

 レリーフには幾何学模様に蔦と葉っぱが浮き上がる。

 徐々に白煉瓦が積み上がり組み合わさって一枚のレリーフとして通路を塞ぎ直している。


 大広間には扉はなく、背後のレリーフと合わせて合計四枚のレリーフがある。

 ほかの三枚のレリーフのどれか、あるいは全てに何か仕掛けがありそうだ。


 背後の白煉瓦がレリーフとして完成したところで天井が光った。

 天井の中央にもレリーフがあり、それが光ってる。


 ギギギギっと周囲から音がする。


 天井から視線を戻すと、彫像と甲冑が動き出すところだった。


 マジか……。


 ゴーレムにリビングアーマーが一杯。

 周囲に配置されていた甲冑がリビングアーマーとなって剣を片手にガチャガチャと迫ってくる。

 その後ろで同じく周囲を飾っていた大きな彫像がゴーレムになり重たそうな体でズンズン歩いてくる。


 いきなり戦闘開始だ。


 今まで本でしか見たことのない相手だからちょっと興奮する。

 森の中にリビングアーマーはいなかったし、ゴーレムも動力源とか術式とか解体して調べてみたい。

 好奇心のそそられる相手だ。


 リビングアーマーには何が効くのか知らないので火と雷で様子を見る。


火弾(かだん)

雷振(らいしん)


 火弾は火の弾をぶつける魔法。

 小部屋で色々やってたときと違い、火の弾を高速で打ち出す。

 火の弾丸が一体目のリビングアーマーに当たる。

 リビングアーマーは胸のところが大きく潰れて四肢が弾け飛んだ。


 雷の方は、雷でできた鞭のようなものをぶつける魔法。

 一直線に二体目のリビングアーマーに伸びていき、絡みついたまま数体を巻き込んで電撃で倒していった。


 雷の方が簡単そうだ。


 あまり近距離で使うことはないんだけど雷魔法を連発する。


雷陣(らいじん)

雷鞭(らいべん)


 雷陣で前方に雷を落とす。

 雷陣の雷は落ちたところを中心に一気に雷が拡大して周囲を巻き込み倒していった。

 残ったリビングアーマーには雷鞭で電撃の鞭を振り回して片っ端から痺れさせて弾き飛ばす。


雷輪(らいりん)


 残っているリビングアーマーには雷でできた円月輪を飛ばす。

 幾条もの弧を描いて飛び、あっという間にリビングアーマーは全てへしゃげたりバラバラになって動かなくなった。


 第二陣のゴーレムが近付いてくる。

 ゴーレムは動きは遅いが硬くて魔法も効きにくい筈だ。

 ゴーレム(コア)を壊せば倒せたと思うが、どこにゴーレム核があるか分からない。

 数も多いので見極めて倒す余裕はなさそうだ。


 魔剣で斬りまくってみるしかないか。


 方針を決めると魔剣を抜いた。

 すぐに魔力を流す。

 ヴォン。


 音の出る剣だから普通は仕掛けを警戒するようなものだが、ゴーレムにはそんな知能はないようだ。

 力任せの一撃のために腕を振り上げている。


 隙だらけの懐に入り魔剣を横に薙ぐ。

 斬られたゴーレムは上半身が崩れ落ちアッサリと動きを止めた。

 魔剣の斬れ味がゴーレムの硬さを上回っている。


 大振りなゴーレムの腕をかいくぐり適当に魔剣を振るだけでゴーレムの腕が落ち、足を斬れば支えを失いバランスを崩して転倒する。


 一撃一撃が重く威力があっても、囲まれないように戦えば危ないことはない。

 的が大きいので足元を狙い動きを止めていけばとどめを刺すのも簡単だ。


 勢いに乗って次々とゴーレムを倒していったら、あっという間に全てのゴーレムが動かなくなった。


 ……結局ゴーレム核があるのかどうか確認できなかった。


 リビングアーマーとゴーレムを倒し改めて大広間を見渡す。


 リビングアーマーが沢山倒れてる方のレリーフが僕が入ってきた隠し扉。

 残りの三枚のレリーフを調べることにする。


 まずは左手の一枚。

 レリーフの大きさは入ってきた一枚と同じ。

 小部屋の扉、五大属性の魔法の鍵がかかっていた扉と同じぐらいの大きさだ。

 レリーフには同じような幾何学模様と縦の波打ち模様が彫られている。

 入ってきた扉は蔦模様だったから、縦の波打ちは炎を表しているのだろう。


 四方向と中央のレリーフ。

 多分五大属性を表している。

 中央が土。

 東が木。

 南は火。

 西が金で、北が水。


 入って来た扉が蔦模様で木を表しているなら東側、左手が南で火。

 正面が西で金。

 右手が北で水になるはずだ。


 転移で飛ばされた部屋の五大属性の鍵といい、隠し扉やこの部屋の五種のレリーフ、五大属性にまつわる装飾が好きらしい。


 答え合わせをするために正面、多分西側のレリーフに向かう。


 正面のレリーフには幾何学模様と菱形があしらわれていた。

 金属性を表すモチーフが菱形とは知らなかった。


 最後、北側のレリーフは幾何学模様と横の波形が彫られている。

 木の蔦模様は分かり易いが他のレリーフから見ていたら五大属性に気付けていたか不安になる。


 天井のレリーフが中央、土属性を表すのだろうがそんなに細かなところまでよく見えないので諦めた。


 とりあえず、五大属性を方位に合わせてあしらっているのだから魔法で何とかしろってことだろう。


 当然、レリーフに魔法を当てろ、ってことだよな?


 入ってきた扉、木属性のレリーフ扉の前に立つ。


風刃(ふうじん)


 バン!


 風魔法が扉に当たるが、ビクともしない。


 威力が弱かったかな?


風刃覇(ふうじんは)


 今度は威力の高い風魔法をぶつける。


 バーン!

 ……風魔法は音だけ残してかき消えた。


 おおぉ。

 白煉瓦ってこんなに魔法防御できるんだ。

 知らなかった。思わず感動する。

 レリーフに何か細工がしてあるかもしれないけど、それよりも白煉瓦の基礎性能がいいんだろう。


 今度はもっと強いやつ。


烈空斬(れっくうざん)!」


 バガーン!!


 風魔法が扉に当たり、大広間全体が揺れるような衝撃が起こった。

 風魔法が弾け、辺りに衝撃が走る。


 っと。


 あまりの衝撃にビックリして咄嗟に左手で顔を覆った。

 辺りに吹き荒れた風が収まってから目を開けて扉を見る。

 扉は前と変わらずにあった。


 !


 レリーフ扉硬い!


 それならもっと強い魔法で、と思ったがそうすると当たったときの衝撃が凄いことになる。

 さっきの烈空斬でも大概だったので、力押しは取っておいて別の攻略方を考えることにする。


 蔦模様だから木属性でいいんだよな。


 風も雷も木属性の一部と考えてたけど、ひょっとして違うのか?


雷鉈(らいしゃ)!」


 雷の塊をぶつけるが変化なしだ。


伸突樹(しんとつじゅ)


 木属性で木を生やしてその枝で刺突した。


 ガガガガガガガ!


 何本もの枝による連続刺突で打突音が続くが扉は変わらず閉じたままだ。

 ……結局、木属性で直接攻撃しても扉を開けれなかった。


 なら相剋(そうこく)か?


 五行には相生と相剋がある。


 相生(そうせい)は相手を生み出していく陽の関係。

 相剋(そうこく)は相手を打ち滅ぼしていく隠の関係だ。


 木剋土(もっこくど)。木は地中から養分を奪い取り土を痩せさせる。

 土剋水(どこくすい)。土は水を濁し、水の流れをせき止める。

 水剋火(すいこくか)。水は火を消し止める。

 火剋金(かこくごん)。火は金属を溶かす。

 金剋木(ごんこくもく)。金属の斧や鋸は木を切り倒す。


 簡単に言うと弱点属性だ。


 木に対しては金剋木。だから金属性が有効。


鉄斧(てっふ)!」


 イメージ的に剣より斧の方が効きそうなので鉄の斧を作り出し、回転させて扉にぶつける。


 ドガーン!


 鉄斧はレリーフに凄まじい勢いでぶち当たり、扉は光を放って開き始めた。

 レリーフにギザギザな割れ目が入り、ゴォンゴォン言いながら左右に開いていく。

 扉の向こうには僕が歩いてきた通路が見える。


 当たり!


 謎が解ければ簡単だ。

 ここを守っていたリビングアーマーとゴーレムは全て倒したので、木属性以外の扉を開けていくことにする。


 左手の扉から。

 木が東で、南は火。

 縦波の紋様扉だ。

 火属性に対しては火を消す水。


水鞭(すいべん)


 軽く水の鞭で扉を打つ。

 バシン。


 ゴゴゴー。

 アッサリと扉が開き始める。

 この扉もギザギザに割れて左右に開いていく。


 扉の向こうはちょっとした踊り場のようだ。

 その先は下り階段が見える。


 うん。

 この道も長そうだ。


 続いて正面、西側は金属性。

 レリーフに菱形が並んでいたやつだ。

 金属性には金属を溶かす火属性。


火弾(かだん)


 ボゥッ!

 火の球をレリーフに向かって飛ばす。

 ドーン!


 このレリーフも火弾が当たったら光りながら左右に分かれていく。

 レリーフと同じ属性の魔法を当てていたときは威力が高くても弾き返していた扉が、相剋属性だと簡単に開いていく。

 このレリーフにはどんな魔法回路が組まれているのだろう?


 西側は扉の先の通路が二手に別れてる。

 扉のすぐ前は真っ直ぐな通路が見えているが、その先は二手に別れているのがハッキリと見えている。

 面倒そうな感じだ。


 最後が、北側。横波レリーフの水属性。

 水には土剋水。水を濁らせ流れを止める土属性が効く。


土槍(どそう)


 レリーフのすぐ手前の床から土の槍を突き刺す。


 ズシャッ、ゴォーン。

 すぐ手前からだから土の槍は即座にレリーフに刺さり、扉が開き出す。

 魔法属性に反応して扉は開く始めるが、どの扉も全然キズついていない。

 鉄斧もものすごい勢いで当たったが、突き刺さることなくそのまま床に落ちた。

 今の土槍も尖った土槍がレリーフに刺さったように見えて、土槍の先端の方が潰れている。


 白煉瓦の塔に住んでいながらこんなに凄いとは知らなかった。

 こんなに硬いのなら塔の中でもう少し無茶しても良かったかな?と思う。

 北側の扉の先は上り階段だった。


 南が下で北が上。

 東と西は同じ高さ。


 忘れてた。


 もう一つのレリーフが中央の天井。

 あれは中央だから土属性のハズだ。

 土に対しては木剋土。

 土の養分を奪い痩せさせる木が弱点だ。

 天井が高いが一応レリーフに魔法を当ててその先があるか確認しておこう。木魔法を当てるとこだが天井が高くて面倒なので、木属性に含まれる風魔法を当てることにする。


風刃(ふうじん)!」


 バァン!

 風魔法がレリーフに当たりレリーフが光る。

 同時に僕の足元の床が抜けた。


「!」


 僕はレリーフに風魔法を当てるため大広間の中央にいた。

 風魔法がレリーフに当たると、中央付近の床がくの字に折れて大きな落とし穴になった。

 僕は落とし穴に呑まれ穴の底に落ちていった。




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