第五話 指輪の効果
二つの指輪を外して転移魔法。
ジャンプアンド着地。
はい。失敗です。
指輪は関係ありませんでした。
ホウランの指輪が長距離の空間転移を阻害してる可能性もあったからな。
指輪を外して、指輪から離れて試したけど、指輪をしてなくても転移失敗だ。
今度は魔剣を床に置いて試す。
ジャンプアンド着地。
はい。
やっぱり魔剣も関係ないですね。
魔剣を腰に差し、扉に戻って指輪をつける。
どうせだったら、指輪の効果も試しとくか。
ひょっとしたら威力が上がって転移できるかも知れないし。
まずは色の濃い指輪を発動。
指輪が輝き癒しと支援魔法効果が発揮されたはず。
一応、火魔法を試す。
「火弾」
壁に向かって火球が飛んで行く。
あれ?
さっき試した火弾と威力の違いが良く分からないが、ホウスウ達と試したときは威力が上がってたので、今回も威力が上がってるはずだ。
……少し焦ってるのかも知れない。
威力の変化が分からなかったのでちょっとパニックになってしまった。
河原で指輪の実験をしてから二刻は経っている。
流石にそんなに長い時間支援効果が続くはずがない。
一度効果が切れているはずなのに、効果の違いに気付かないなんて。
そう思い一度深呼吸してから試すことにした。
スーッ、ハー。
「よし」
ジャンプアンド着地。
はい。
ダメでした。
失敗が続くと転移できるのか不安になってくるので、ここらで一発室内転移をしておく。
ジャンプアンド着地。
はい。
成功しました。
転移魔法はできるんだよ。
でもこの部屋から出られない。
調子に乗ってもう一つの指輪を発動させる。
治癒魔法って言ってたから大丈夫だろうと安易な気持ちでした。
透明な緑英晶石のついた指輪から淡い光が出る。
一瞬僕の周囲に大きな球形の形を描いて光が消えた。
あ?!
何か発動した。
ちょっとマズイ気がする。
あんな魔法視覚化見たことない。
しかも僕を中心に発動したから直接強化か支援効果かだと思う。
直接強化や支援効果は効果確認が難しい。
転移魔法の検証中に、やってしまった。
多分無理だと思うけど最初はやっぱり転移魔法だよね。
行きましょう。
ジャンプアンド着地。
はい。
無理でした。
それじゃ透明指輪の効果予測からいってみよう。
僕を中心に発動して球形なので直接強化や支援効果だとしたら単体効果じゃなくて範囲効果かも知れない。
ほかには僕を中心にしてじんわりと効果範囲が広がるような支援効果。
言っててそんなのあるかな?って気がしてくる。
効果範囲は僕を中心に実験に使った土槍二本分ぐらい。
僕の転移魔法は手を繋いで円形に集まった範囲までだから、それよりはふた回りほど広い。
さっきの光は手が届かない広さまで広がっていってた。
当然自分自身にも効果が出てると想定して進めよう。
直接強化から。
ダッシュ、ジャンプ。
身体能力は今まで通り。変化なし。
「雷鉈」
「火弾」
「土槍」
「鉄剣」
「水鞭」
ドーン。
ボガンッ。
ガーン。
キィン。
バジャッ。
魔法能力も変化なし。
……いや、何か違和感あったのでもう少し試すことにする。
「火弾」
ドーン。
うーむ。
掌から発射した時の火の様子が何かおかしい気がする。
威力は変わらないけど耳の調子でもおかしくなったかな?
火球の速度を遅くして発射してみる。
「火弾」
右手の掌に魔力が集まり、火球に変化して発射。
火球はゆっくりと壁に向かって飛んで行く。
グワッ。
途中で威力がアップした気がする。
ヒュー。
ズバン。
着弾した。
一瞬爆音が響くが、威力と比較してちょっと大人しい感じがする。
聴覚低下? そんなのあるのか?
うーん。聴覚向上はあるかも知れない。
あ、防音とかあるかも知れない。
聴覚減少じゃなくて防音。
さっきの魔法視覚化は防音結界が広がった様子を現しててその範囲内の音を小さくする。それか、その範囲内では外の音を小さくする。
どうだろう?
魔法によっては視力向上や望遠とかあるだろうし、逆に視力低下、暗闇の付与もできるだろう。
聴覚低下、体に直接働く能力低下。そんなのあったら怖いな。
結界内に消音効果。
そっちの方がありかも知れない。
防音結界。……違和感はあるけど試していくか。
防音効果の範囲測定か。
もう一人いれば魔剣に魔力流してもらって、音を出しながら距離を測ればすぐに分かるのに。
音を出す魔法陣でも描くか?
あ、閃いた!
「操雷」
バン!
右手を前に突き出して小さな雷を出した。
掌ほどの大きさで雷光が中心部からバリバリ出てる。
雷球だ。
雷魔法で雷球を生み出し、それを操る。
手をかざす方向を変えて雷球を操作した。
右へ、左へ。
雷球はずっとバチバチ鳴ってる。
雷球を部屋の中央で停止させる。
動いてないけどバチバチ鳴り続けてる。
僕は部屋の端、壁に向かって歩き雷球から離れてく。
雷球は部屋中央で相変わらずバチバチ鳴ってるけど、少し音が小さくなった気がする。
しばらく立ち止まったまま、雷球の音に耳を傾ける。
音の大小が分かるかどうか悩ましいところだけど、とりあえず部屋の中央に向かって歩いてく。
多分、今は雷球が防音結界の外にあって消音効果が効いてるけど、雷球が防音結界の内側に入ったら急に音が大きくなるのだろう。
ゆっくりと雷球に向かって歩いていく。
徐々に近付いていき、そろそろかな?と思ったけれど特に変化がない。
あれ?
何で?
ちょっと離れてみる。
うん。
バチバチ鳴ってる。離れても何も変わらない。
今度は用心してゆっくりと近付く。
一歩。
一歩。
あと一歩で雷球に触れるぐらい近付いたが変化がない。
あのさっきの違和感は何だったんだろう。
属性の問題か?
火魔法を試すことにする。
「操炎」
今度は火魔法で火球を出して雷球からちょっと離れたところで止める。
燃え続ける火球。
近付いてみるけど、さっきの違和感の正体が分からない。
目の前でゴウゴウと燃えている。
雷球と何か違うか?
雷球に近寄って変化があるか目を凝らすが分からない。
変わらずにバチバチ鳴ってる。
火球と雷球、両方とも近付いても離れても違いが分からない。
指輪の想定効果は治癒魔法、支援効果魔法。
指輪をしてる僕を中心に発動した。
魔法視覚化が出てたし発動してるはずだ。
……。
ああー、混乱してきた。
転移は使えないし、何か魔法が発動したけど効果が分からないし。
効果の分からない魔法なんて怖すぎる。
……、一度リセットしよう。
リセットできるか疑問だけど、ものは試しだ。
僕は二つの指輪を外した。
外した指輪を雷球と火球の手前に置く。
雷球と火球も消す。
そして謎の扉の前に行った。
一応距離を取ったのでひょっとしたら指輪の魔法効果が解除されてるかも知れない。
ダッシュ、ジャンプ。
あら、ホントに身体強化が解除されてるっぽい。
ちょっと体が重い。
マジか?
さっきまでとかなり違う。
ヘコむぐらい能力が落ちてる。
ちょっと憂鬱になりながら魔法を唱える。
「火弾」
ブワッ。
ヒューン。
ドン。
魔法の方もショボくなってる。
ホウランの指輪のブースト具合が異常過ぎて悲しくなってくる。
全て濃い緑英晶石の指輪の効果だった訳です。
さて、透明な指輪の方の効果はどうだろう?
とりあえず雷球と火球を出してみる。
こんなことなら消さなきゃ良かった。
また同じことを繰り返すとは思ってなかったよ。
「操雷」
「操炎」
ショボい。
さっきまでの雷球、火球から三割減ぐらい。
河原で能力五割増しって言った通りで合ってると思う。
悲しくなるので一度消して、気合いを入れて威力を上げた雷球と火球を作り直す。
「ふん!操雷、操炎」