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第三十三話 ダゴン迷宮

 

「ねぇトゥーファン、次の街ってニコキュリオスだっけ?」


「あぁ、クレイプモスより大きいらしいし、褒賞金も貰ったから楽しみだな」


 僕とトゥーファンはフォシアン島の南にあるクレイプモスの街を出て、そこから西にあるニコキュリオスの街を目指していた。

 フォシアン島はグランデン大陸の南東にある小さな火山島だ。グレンマゴウ火山を中心にして西の大陸側にニコキュリオスの街、南にクレイプモスの街がある。

 他に村はいくつかあるが、街は二つだけの小さな島だ。


 三日前の夕方にクレイプモスの町を出て、海岸と森をいくつか抜けて来た。


 ニコキュリオスの街の岩壁は遠目からはクレイプモスと同じように見えたが、高さも厚さも二倍位だろうか。

 高さは大人二人分、厚さも両手を広げたぐらいの厚さがありそうだ。

 畑を見ながら道を歩いて、岩壁にある門に辿り着いた。


 岩壁に囲まれた門で衛兵に一人あたり銅貨1枚の通行料を払って街に入ると、街の賑やかしさも桁違いだった。


「凄い喧騒だね」


「あぁ、思ってたよりも賑わっているな」


 街の外では感じなかった人出だ。あちこちを馬車が走っているし、街路を歩いている人が多い。

 既にお昼を過ぎている時間帯なので、人の行き来が多い時間帯だが、それにしても人が多い。


「まずはギルドに行って情報収取だね」


 僕は衛兵さんに聞いた道を進みながら冒険者ギルドを探した。


「中央の通りを西に進むと見えて来るって言ってたけど、……。

 あれかな?」


 視界にはしっかりとした石造りの上等な3階建ての建物が見えた。

 入り口正面、門の内側も広く、左右で入り口が分かれている。


 右側が通常の受付で、左側が達成受付か買取受付のようだ。右側は身なりの良い人も入っていくが、左側は台車を引いた人や派手な装備の冒険者が出入りしてる。


「トゥーファン、右に行くよ」


 お昼過ぎという時間帯なので空いていると思ったけど、この時間帯かのギルドでも混んでいるようだ。

 しばらく列に並び、ギルドにいる人たちを観察する。


 ギルドの受付の隣には、食事処兼酒場が併設されている。

 冒険者が多いということは、荒くれ者も多いので普通の酒場よりトラブルも増える。

 そんな雰囲気の酒場だ。


 順番が進み、僕たちの番が来た。


「ギルド受付のスイナです。

 ご用件をお伺い致します」


 綺麗なお姉さんだ。

 水色の髪でふんわりした雰囲気だからクレイプモスにいたミアが大人になった感じ。


「クレイプモスから来たんですけど、お勧めの依頼とかありますか?

 それとしばらく滞在したいので、お勧めの宿とかも教えて欲しいです」


「あら、そうなのですね。

 ニコキュリオスにようこそおいで下さいました。

 それでは最初にライセンス証を拝見してもよろしいですか?」


「はい。どうぞ」


 僕とトゥーファンのライセンス証を渡す。


「シンハノ・シオンさんとシンハノ・トゥーファンさんですね。

 ! ……シンハノ・トゥーファンさんは星を取得されているようですが、どのような経緯で星を取得されたかお伺いしても良いでしょうか?」


 僕とトゥーファンが入れ替わり、簡単に説明する。


「クレイプモスで盗賊が教会を襲う事件があって、そこに居合わせたんだ。」


「それは、トゥーファン様が撃退されたという理解で宜しいでしょうか?」


「まぁ、それに近いことをしたかな」


 言葉少なく肯定してみせて、こちらを見やるトゥーファン。口元がニヤけてるぞ。


 くそっ。


「畏まりました。

 それでは、一度受付の記録をさせて頂きますので、このままライセンス証をお預かりしても宜しいでしょうか?」


「はい。お願いします」


 僕は頭を下げた。


「すまないな、シオン。オレだけが手柄を立てたみたいで」


 ……ニヤついてるよ、トゥーファン。


 暫くして受付嬢のスイナさんが戻って来た。


「それでは、トゥーファン様ライセンス証をお返し致します。シオン様もこちらです」


 ……言葉は丁寧だけど、完全にトゥーファンが主で僕が従です。


「それで、何かお勧めの依頼とかありますか?」


 気を取り戻すのに時間が必要だったけど、ちゃんと自分を取り戻した。

 ……この街で絶対星を取ると誓って。


「トゥーファン様の腕があれば護衛や討伐も可能だと思います。しかし、この街での実績がございませんので、ダゴン迷宮はいかがでしょうか?」


「「ダゴン迷宮?」」


「はい。ダゴン迷宮です。

 この街の西海岸のすこし北に迷宮がございます。

 ダゴン迷宮と言いまして、十階層の迷宮です。

 一階から九階までは普通の平原が続くのですが、十階には海に続く池がありまして、その池から魔魚が獲れます。たまに鋼の魔魚が現れることもあり、実力のある冒険者の方はそちらで常設依頼をこなされる方も多いです。

 迷宮産の獣や魚は買取要望が多いので常に買取させて頂いています」


「魔魚、とか鋼の魔魚って何?」


 迷宮は楽しくて良さそうなのだが、どうも魔魚っていうのが想像できない。


「魔魚は迷宮で魔力を持った魚です」


「魚?」


「はい。魚です。

 魚以外にも亀や蛇もいるのですが、ダゴン迷宮に現れる魔獣は魚類なので、魔魚と呼んでいます」


「普通の魚と何が違うの?」


「外見は形が変わったり色が変わったりと色々ありますので一概には言えませんが、魔魚には亜水晶(デミ・クリスタル)があります。

 この亜水晶(デミ・クリスタル)が魔魚の証です。

 亜水晶(デミ・クリスタル)は魔道具の材料になったり魔力源として使用できるので非常に高価な素材です」


「ふぅーん」


「魔魚の体内にある亜水晶(デミ・クリスタル)は非常に高額で取引されますし、魔魚の身は魔力によって非常に美味しくなっています。

 ニコキュリオスに来られたのであれば、是非一度ダゴン迷宮に挑まれてはいかがでしょうか?」


「なら、試してみようかな。

 常設依頼ってことは、ダゴン迷宮は依頼書がなくても入れるんですか?」


「一応迷宮ですので、迷子になったり、たまには危険もありますのでライセンス証と実績が必要です。

 ですが、トゥーファン様は星をお持ちですし、先程当

 ギルドでの受付を済ませました。

 ですので迷宮入口でライセンス証を見せて頂ければ、迷宮に入ることができます」


 ……ぐぬぬ。

 星持ちのトゥーファンがいるから迷宮に入れる。

 それって僕一人だと入れないってことか。


「迷宮に挑む時は何か注意することとか持って行った方がいいものってありますか?」


 相変わらず気を落とさずにスイナさんに話しかける僕。


「そうですね。

 釣竿と糸は必須です。

 それ以外には餌は皆さん色々試して秘伝があるようなので最初は鶏肉や兎肉をお勧めします」


 釣竿?

 糸?

 鶏肉に兎肉?


 迷宮で釣り?


「もしお金に余裕があれば、10階分の地図を買って行かれるのも良いと思います」


「その地図はここでも買えますか?」


「はい。1階層が銀貨1枚になりますので、10階層分ですと金貨一枚です」


「結構するんですね。」


「下の階層に行くのに道が分かれてたりしますので、迷子にならずに済むかと思います」


「確かにそうかも知れませんね。

 なら、地図を一式お願いします」


「畏まりました」


 スイナさんは一度奥の方へ下がると羊皮紙に書いた地図を持って戻って来た。


「こちらになります。

 お確かめ下さい」


 金貨一枚払って地図を受け取ると、簡単に中身を確認した。案外分かりやすく書かれているようだ。


「ありがとうございます」


 受付嬢のスイナさんに礼を言ってギルドを出た。


 改めてギルドの中を見ると、入口には色々な釣竿が立て掛けてある。

 細くて長くしなりの良さそうなものから、強度を重視したような釣竿もある。


 冒険者の装備品も剣以外に斧や短刀を下げている人が多い。縄や網を腰につけている人もいる。


 ちょっと特殊な迷宮のようだ。


「どうする?

 釣竿を買う?」


 トゥーファンに聞いてみた。


「んー。釣場を見てからかな。

 どんな獲物かどんな釣場かによって違うからな」


「あ、そうだね。

 釣りってもの凄く久しぶりだよ。

 トゥーファンはしたことあるの?」


「したことはないな。

 聞いて知ってるだけだ。

 シオンがしたことある方が意外だが……」


「僕のいたところでは川釣りだね」


「魔法で獲った方が早いだろ」


「……うん」




 街の通りを彷徨(うろつ)き、釣具を見たりして宿に入った。

 ギルドで紹介してもらった宿で魔魚を食べたが、魚なのに濃厚だった。

 食べ応えがあり高価さが伺える逸品だった。




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