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第三十二話 星



 一日かけて夕方に山から下りた僕たちは教会でミアと少女を休ませて、グリニータ神父とトゥーファンにあらましを説明した。


 僕が盗賊の一部を倒したこと。

 サバスさんと二人で人狼(ワーウルフ)を倒したこと。

 狼たちが山を移動したこと。


 そして今晩、盗賊の残りが教会を襲うだろうこと。


「みんな無事で良かった。」


 グリニータ神父はそう言ってくれた。

 その後をトゥーファンが続ける。


「盗賊の残りだが、昨日の夜教会が襲われた」


「「!」」


「えっ、どういうこと?」


「恐らく盗賊の仲間割れだろう。

 教会からサバスさんが居なくなって、翌朝にはシオンも出て行ったからな。

 先行してた奴等が欲張って自分たちだけで金をせしめようとしたんだろうな。

 それをたまたまオレが捕まえたって訳だ」


 グリニータ神父はニコニコしながら聞いている。


「実は昼間の内にギルドに説明して引き渡しも終わってる」


「えぇーっ。

 何かズルくない?」


「どうしてだ?」


「いや、トゥーファンが先に盗賊捕まえてたら、何かこっちの方がおまけみたいな。

 僕がやったのは残党狩りみたいな、感じになるじゃん」


「いやいや、そっちの方が大変だったのは分かってるぞ。主力部隊が教会を襲っているときに、盗賊のアジトを暴き、ミアを助け出したんだからな」


「こっちこそ、いやいや、だよ。

 僕が盗賊の首領を退治して、三十頭の狼の群れと戦い、人狼(ワーウルフ)の呪いを解いてミアを助けて来たのに」


「まぁ、今回はことを大事にできないからな。

 諦めろ。

 オレだけはシオンの活躍を知ってるぞ」


「俺もシオンの活躍を知っている」


「私も感謝しているよ。

 シオンの働きで、ミアだけでなく人狼(ワーウルフ)と狼たちを救うことができた」


 グリニータ神父が頭を下げた。

 サバスさんも隣で頭を下げている。

 ……トゥーファンだけはニヤニヤしてる。


「後のことは神父に任せて、ギルドに行くぞ」


 トゥーファンが言うので、後のことはグリニータ神父とサバスさんに任せて教会から出た。


「洞窟の盗賊もさっさと捕まえたいからな」


「まぁ、木魔法で動けなくしてるからしばらくは大丈夫だよ」


「シオン、また魔法使ったな」


「一人で十人とか急いでたんだよ。

 そう言うトゥーファンだって魔法使ったでしょ?」


「オレはバレないように使ったからな」


「ん? どう言うこと?」


「一瞬足元固めて動けなくしてる内に殴ったり、捕まえるのは教会にいる他の人にやってもらったし」


(きたな)っ!

 こっちは一人きりでやったのに」


「こっちはこっちで大勢いるから見られないように大変だったんだよ」


 そう言ってる内にギルドに着いた。


 エリーナさんに取り繋いでもらってギルド長の部屋に上がる。


 ヘイザースさんは疲れてた。


「よお、トゥーファン、それにシオン。

 ちょうど良かった、トゥーファンにはライセンス証を返そうか。

 また何かあったのか?」


 ヘイザースさんは机の引き出しからライセンス証を出してトゥーファンに渡した。


「これが昼間言ってたヤツだ。

 盗賊退治の功績で星を授与する。

 ライセンス証に星が刻んであるのが分かるだろう。

 これがギルドからの評価だ。

 強さと信頼の証でもある。

 そしてこっちが褒賞金、金貨八十枚だ」


 トゥーファンのライセンス証にはクレイプモスの街の名前の横に星型が一つ刻んである。


「いいなぁ。

 カッコイイよ」


「シオンも上手くいけば、今回の盗賊退治でもらえるさ」


 トゥーファンが言って、ヘイザースさんが顔を(しか)める。


「トゥーファン。今、何て言った?」


 ヘイザースさんが詰問調だ。


「あぁ、シオンが山の中で盗賊の残りを退治したんだ」


「山の中って、この前捕まえたばかりじゃないか?」


「それが、同じ洞窟が今度は別の盗賊のアジトになってたみたいで……」


 僕からヘイザースさんに説明しようとしたけど、うん。同じ洞窟に別の盗賊って、胡散臭いよな。


「うん?

 この前洞窟で盗賊見つけたときは偶然って言ってたが、お前ら賞金稼ぎか?」


 ほら、話が変な方向に……


「オレの方は教会の依頼。

 シオンの方は狼探しで山に行ったら盗賊に出会っただけだ」


「うん。

 まさか空っぽの洞窟に新しい盗賊がいるとは思わないじゃない。

 狼がいそうなところを探してたら、盗賊に出会ったんだよ。

 それで、一応動けなくしてある」


「オイオイ、本当かよ。

 確かに私が依頼したけど。

 場所は? って本当にこの前の洞窟か?」


「うん。あの洞窟に別の盗賊が集まってた」


「なら急がねぇと、って、また山登るのか……」


 ヘイザースさんがげんなりしてる。

 そこにトゥーファンも乗っかった。


「そこで相談なんだけど、また案内必要かな?

 ちょっと連日のことで僕たちも疲れててさ……」


「うーん。

 そうだな、普通は引き渡しを確認するためにお前らとギルドで確認か必要だが、俺も昼間の盗賊の処理があるしなぁ。


 よしっ。

 今回はちょっと別の奴に行かせる。

 お前らはギルドに任せるんだったら行かなくてもいいぞ。場所も分かるからな。

 ただし、ギルドや衛兵が行くまでに逃げられてたら褒賞金はなしだ」


 トゥーファンがチラッとこちらを見る。

 大丈夫だ。

 ただ、僕が行かないと蔦を外すのが大変かも知れない。


「うん。それでいいよ。助かる。

 もし、行けそうだったら、後から追いかけるよ」


「分かった。期待せずに先に確保できるように進めるわ」


 ヘイザースさんはまた衛兵とか色々段取りするみたいなので、僕たち二人はギルドを後にした。

 これで今晩はゆっくりと休める。

 気が向いたら転移して合流すればいいよね。


 宿屋の方に向かって歩き始めた。


 ……?


 トゥーファンが宿屋の前を通り過ぎてまだ歩いてく。


「トゥーファン、どこ行くの?」


「あぁ、このまま街を出るぞ」


「えっ? えーっ!」


「静かにしろ。

 ちょっと目立ち過ぎたから、さっさと次の街に行くぞ」


「えーっ、行くのはいいけど、僕のライセンス証は?

 トゥーファンだけ星がついてズルくない?」


「いやいや、オレの正当な評価だし」


「いや、僕ももらいたい」


「あの少女とかミアとか、盗賊の調査とか、色々面倒になる前に逃げる」


「まぁ、そうなんだけど」


「分かったら、文句言わない。

 オレが稼いだ褒賞金で何か買ってやるからさ」


 トゥーファンがニヤニヤしながら上から目線だ。

 あれは、ギルドに行く前から街を離れることを考えてた目だ。

 くっそー。

 次の街じゃ僕の方ができるって見せてやる。


 そうして僕とトゥーファンはクレイプモスの街から夕焼けを見ながら逃げるように立ち去った。




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