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第十九話 ギルドに行こう



「だからって、朝早くに教会を出る必要があったのかな?」


「あんなところにいたら、何を見られるか分からんからな。

 さっさと金を稼いで旅の準備をするぞ」


 僕たちは夜が明けると修道女(シスター)のメアリーさんに挨拶をして教会を出た。


 昨日の鹿狩りでサバスさんに目をつけられたし、放っといたらカレンとミアがやって来そうだ。


 お金を稼ぐには冒険者ギルドに行くしかないんだけど、あの二人がいると色々と面倒なので足早に冒険者ギルドに向かう。




 朝早くにも関わらず冒険者ギルドは賑わっていた。

 大勢の子供がカウンターの前や掲示板の前にいる。


 子供たちに混ざって並んでるとあちこちから声が聞こえてくる。


「赤パクラの実は幾ら?」


「シャシャリの薬草はあるか?」


 子供たちでもできる採取系の依頼が結構あるようだ。

 その依頼の奪い合いで早朝からカウンターが混んでいる。

 順番が来たので、二人で受付嬢と話した。


「初めてなんだけど、手続きとお勧めの依頼があれば教えて欲しいです」


「あら、初めてなんですね。

 分かりました。では少し説明させて頂きます」


 そう言って、受付嬢は話し始めた。


「冒険者ギルドでは大きく分けると二種類の依頼があります。

 一つはお手伝い系の依頼ですね。

 臨時の畑仕事や採取のお仕事です。

 単価は安いですけど、危険の少ないお仕事です。

 もう一つは護衛や獣退治のお仕事。

 商隊の護衛をしたり、獣や魔獣を退治するお仕事です。

 どちらのお仕事も、冒険者ギルドに登録して頂いてライセンス発行後に受けることができます」


 そう言って、金属のプレートを翳した。

 掌に入るぐらいの小さな長方形のプレートに革紐が結んである。


「こちらのプレートに名前を刻ませて頂きます。

 冒険者ギルド用の身分証明証になりますので、依頼を受けられる際や報酬を受けられる際にはご持参下さい」


「ライセンスにお金がかかるのかな?」


 僕はちょっと不安になり受付嬢に聞いた。


「ライセンスは有料です。

 お一人につき大銅貨一枚頂きます」


「お金がない人はどうするの?」


「そうですね。常設依頼であれば達成報酬と引き換えにライセンスを発行させて頂くこともできます。

 常設依頼とは、一定期間はどなたでも限定なく受けられる依頼です。

 例えば、山ブルスの採取や猪の退治などですね。これらは依頼を受ける制限がありません。なので、どなたでも受けることができて、達成時に達成証明となる一定量の山ブルスをお持ち頂いたり、猪の鼻をお持ち頂けば達成報酬をお支払い致します。

 ですから、ライセンス発行と報酬支払いを同時に行い相殺することができます」


「なるほど、それは助かる」


 トゥーファンが頷き、僕は続きを聞いた。


「常設依頼はどんな依頼があるの?」


「常設依頼なら、薬草の採取かしら?」


「恥ずかしながら薬草の種類をよく知らないんだ。森にいそうな分かりやすい獣が助かるな」


「獣でしたら、普通の獣と魔獣になります。

 獣の場合、猪の鼻、猿の頭、鹿の脚などですね。これらの獣は冒険者ギルドとしては退治になりますが、商店によってはお肉や皮の買取りがありますので、討伐証明部位以外の持ち込みも歓迎しています。

 魔獣についてはどの魔獣も全て買取りさせて頂きます。通常は頭が証明部位になります」


「最近、魔獣の目撃情報はあるのかな?」


 トゥーファンがさりげなく聞いてるが、あれはかなり気にしてると思う。


「最近はありませんね。

 ですが、森の奥には熊や狼の目撃情報がありますので、あまり奥に行かれないようにお願いしています」


「?

 それはどうして?

 逆じゃないの?」


 聞きようによっては冒険者ギルドが冒険者を奥地に行かせないように注意してるように聞こえた。


「それは皆様の安全のためです。

 この街には熊や狼を退治できるような冒険者様がいないので、追加捜索も困難です。

 何かあった場合もニコキュリオスの冒険者ギルドと連携して対応しなければなりません。

 ですので、できれば奥地に進まない。熊や狼を見つけた場合は素早く逃げてギルドに情報をお願い致します。

 情報があれば、大人数での調査やニコキュリオスからの応援を仰ぐことができます。

 そう言う訳では、無理をされないようにお願い致します」


「そうなんだ。

 分かりました。無理しないようにしますね」


 長話で後ろに続く順番待ちの列が長くなってきたところで、お金がないので、とライセンス登録を辞退して受付を離れた。


 冒険者ギルド内には子供が減って大人が増えてきた。

 恐らく、これからが冒険者の時間帯になるのだろう。


 冒険者ギルドを出て森に向かって歩き出す。


「とりあえず、森に入るのでいいかな?」


「まぁ、森に行って何か狩れば相場も分かるだろうしそれでいいんじゃないか。昨日の鹿で幾らぐらいか分かると楽なんだけどな」


「そうだね。でも教会で大騒ぎだったし、あの状況で幾らぐらいか聞くのはお金を要求するようで難しかったよね」


「そうだな」


 トゥーファンと歩いてると、向かいから三人組の男がこちらにやって来た。

 遠目に見ても、こちらをジッと睨んでる。


 面倒なので少し道の端に寄ったが、相手の方も僕たちの道を塞ぐように寄ってくる。


 冒険者のようだ。

 革鎧の装備をしている。

 中央の男が一番背が高い。三人とも剣を下げているが、右側の男は弓も持っている。


 足を止めてトゥーファンと顔を見合わせると、真ん中の一番体格良い男が喋った。


「この街で見ない顔だな。

 子供が剣を持ってても危ないだろう。

 オレが預かってやるよ」


「はぁ?」


 それが当然と男が手を差し出してくる。


 トゥーファンが一歩前に出た。


 さっさまで手ぶらだったのに、いつのまにか手に真っ赤な剣を持ち相手の顔に向けて突き出している。


 男は急に剣を突き出されその場で尻餅をついた。続けて左右の二人も尻餅をつく。


「人の物を欲しがるよりも、自分の命を大事にしろよ。」


 トゥーファンが剣を引いて言った。


 トゥーファンがそのまま歩き出したので、僕も後について行く。

 よく見ると男たちの足元の土が固まり、爪先を固定していた。


「凄いな。トゥーファン」


「あぁ、つい、やってしまった」


「その剣もいつ作ったの?」


「これはシオンの剣を見て便利そうだったから、さっき作ってみた」


「それ土の剣だよね」


「あぁ、土を固めた剣だな。そこらの剣ぐらいの硬さはあるし、すぐに作れるから便利だろ」


「僕もこの剣は使いにくいから、何か考えようかな?」


「シオンは鉄で似たようなことができるだろ」


「そうだね。今度試してみるよ。

 ……さっきはありがと」


「シオンはああいう奴に慣れてなさそうだからな」


「うん。

 意味が分からなくて反応できなかった」


「別世界の生き物だと思って対処するしかないさ。1回目は身を守って、2回目は懲らしめてやって、3回目が無いようにするしかないな」


「ふぅーん。

 なら次は凝らしめるのか。

 こんなに平和そうな街でもあんな人間がいるんだな」


 そう言いながら岩壁を潜り、衛兵に挨拶をして街を出た。



 街を出たら、とにかく森の奥を目指す。

 森から出てきたとき、鹿や猪には合わなかったので川沿いではなく、少し西の方に向かうことにした。


 受付嬢との会話からすると、猪か鹿を狩ればいいだろう。一匹で足りなければ、明日二匹目を狩れば良いし。


 昨晩、鹿肉尽くしだったので暫く食事は我慢できる。

 寝るところも冷え込まなければ、野外や森の中で問題ない。


 そう思うと、トゥーファンと二人だけでいる方が楽なのでのんびりと狩りをする気になった。


「神聖魔法って、何なのかな?」


 のんびりと森を歩きながらトゥーファンに聞いた。


「神聖魔法なら昨日見ただろ」


「そうなんだけど、属性とか気にならない?」


「神父とか神聖騎士団の使う魔法だから縁がなかったな」


「へぇ。そうなんだ。

 知り合いのエルフが治癒魔法を使えたけど、雰囲気が違ったんだよね」


「うん?」


「治癒魔法って、ずっと水魔法だと思ってた。

 グリニータ神父の魔法はそれとは違ってた」


 僕は掌の上に水玉を作りながら話した。


「僕は水魔法で魔力の濃い水を作って、その水で傷口を覆うと治るんだと思ってたんだ。

 でも、グリニータ神父は水ではなくて光のようなのをかざす? 包む? でカレンの傷口を治したから不思議でさ」


「……そうなのか?

 治癒魔法について考えたことがなかったな。

 必要ないのもあるが、自分の属性と違う魔法は使えないからな。エルフなら使えるんじゃないのか?」


「エルフにも得意不得意はあるよ。

 みんなが五大属性を使える訳じゃないからね」


「ん?

 そうなのか?」


「うん。

 よく知らないけど、みんなが使える訳じゃないよ。

 それと五大属性を使えてもその中にも得意不得意があるよ」


「ほう。

 それは空間魔法も同じか?」


「うん。

 多分空間魔法が使えるのは一部のエルフだけだよ。里の中でも五大属性以外は誰が使えるか秘密だったからね」


「おいおい、そんなことオレに言っていいのか?」


「内緒にしといてよ」


「はぁ? もう少し警戒しろよ」


「転移魔法を知ってるから一緒だよ」


「シオン個人のことと、エルフ全体のことだと全然違うだろ」


「うーん。

 そうかもだけど、そんなに大差ないよ。

 むしろエルフについては噂話みたいなもんだよ。

 僕もよく知らないから」


「……噂話かよ」


「それでも僕は一応五大属性を使えるし、治癒魔法も見たことあるよ。自分では使えないけど、何となく水魔法かなって思ってた。

 でも、グリニータ神父の使った神聖魔法はそれとは違ってた。

 だから、ちょっと気になるんだ」


「ふーん。

 そんな気になることかねぇ」


「うん。神聖魔法って何ができるか面白そうじゃない」


「治癒とか強化に興味があるのか?」


「強化?」


「あぁ、シオンが見せてくれただろ。指輪の効果。

 神聖魔法はああゆう支援効果(バフ)が得意なはずだ」

「えっ! それホント?」


「あぁ。治癒、浄化、強化。そんな系統の魔法だろ」


「なら、ひょっとして指輪の魔法も神聖魔法かも!

 なんか閃いたかも。ぐふっ」


「おいっ、ちょっと待て!

 何か思いついたようだがいきなり色々試すなよ。

 何か嫌な予感がする。

 場所も時間も考えて行動しろよ」


「あ、大丈夫。大丈夫。

 簡単なことだから。

 ムリしないし」


「いや、胡散臭い」


 何故かトゥーファンに却下されて、とりあえず食事のできる場所を探すことになった。




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