第十四話 結界崩し
「あはははは!
貴様如きの魔法ではどうにもならんぞ」
「嵐空乱枝」
樹人が反撃してくる。
無数の真空波と多数の枝の刺突が王を襲う。
「堅土壁」
王は舞台に向かって土壁を展開し防御した。
樹人の攻撃は土壁に当たるが、土壁を壊すまでの威力はない。
「五連珠豪雷破」
王が問題なく防御したのを確認してから、僕は稲妻の矢を五つ立て続けに舞台に向かって放った。
縦に落ちる雷ではなく指向性を持たせた稲妻だ。
だが結界に当たると次々と阻まれかき消えていく。
土属性の鏡だから、弱点属性の木属性、その派生雷属性にしたのたがダメだったようだ。
属性の相性以前に威力が違う。
「伸蔦雷鞭!」
樹人から反撃が来る。
樹人の体から蔦が伸びてきた。
しかも雷撃を纏っているようだ。
「五連珠豪雷派」
樹人の反撃に再度、同じ魔法を撃つと樹人の雷鞭を吸収して舞台に向かっていった。
こちらの雷魔法の方が威力が上だ。
がしかし、それでも結界はビクともしない。
上級魔法程度では結界を破ることはできそうにない。
ここは魔剣を試すしかないか?
「噴流泥炭」
王が僕の考えを読んだように結界の一部に泥流を吹き付ける。
結界の表面が泥に塗り潰されて、その構成面が見えるようになった。
円形の結界から垂直に立ち上がる結界面がハッキリと分かる。
「雷網捕棘」
樹人が王を捕まえようと帯電した網を放つが、元々反撃を想定済みなので既に王はかなり横に走り抜けて回避している。
樹人の気が王に向いている隙に、僕は結界についた泥の視界を利用して一気に舞台に近づいた。
鞘から剣を走らせて横一文字に斬り抜く。
パーン!
魔剣の異音よりも大きな音が響き、結界が割れた!
が、すぐに修復する。
「何!」
「何をした?」
樹人が焦っている。
他人の魔道具を使っていながら、その能力、効果を把握してないのか?
「くそっ! まずはお前だ!」
「無限荊牢獄」
追い詰められた樹人は王に向かって封印魔法を打った。
随分アッサリと大事な封印手段を披露してくれたものだ。
「土影身」
王は土で分身を作り囮にした上で彼自身は軽く横に躱して距離を取った。
樹人が放った魔法は緑の魔力の塊をつくり王へ向かって飛んだが、王の作った分身に当たるとその分身を取り込んだ。
取り込んだ後で、緑の大きな球になった。
何であんな魔法に昔の王が捕まったのか不思議だが、あの程度で回避できるなら僕も問題なく回避できるだろう。
「噴流泥炭」
「噴流泥炭」
「噴流泥炭」
「菌糸蜘蛛糸」
「菌糸蜘蛛糸」
目くらましとダミーを兼ねているので適当に魔法をばらまく。
王の方は先程と同じ泥を結界に叩きつける魔法だ。
僕の方は木魔法で茸の菌糸と蜘蛛の糸を混ぜたような糸の網を結界に貼り付けた。
僕が先に泥の影から結界に向かって走り、何ヶ所か結界を切り裂く。
パーン!
パパパーン!
結界が破れた。
王はそのうちの一つから結界内に入り込んだ。
僕も後を追って、新たに結界を切り裂いて舞台上に飛び上がった。
「さて、次はどうする?」
王が樹人に近づいていく。
「それ以上近づくな!
近づくとこいつらを殺す!」
何を今頃言い出すかと思ったら奥から蛙人と犬人がそれぞれ一人づつ獣人を連れてきた。
人狼と鹿人だ。
後ろ手に拘束され、口を塞がれている。
「生きていたのか?」
マズイ。王が動揺したのか、瞬間、無防備になった。
「無限荊牢獄!」
樹人が一瞬の隙をついて魔法を唱える。
「神速雷針」
僕は即座に樹人に小さな雷を飛ばして牽制し、王を突き飛ばそうとしたが間に合わなかった。
僕の雷は樹人に当たる直前で弾かれ、樹人の魔法は僕より先に王を捉えた。
「くっ」
直後、王の足元から荊の結界が発動する。
まだ荊の結界なら何とかなる。
「残念だったな、赤土。
次はお前だ!」
樹人がこちらを見て枝を伸ばしてくる。
「五柱爆炎陣!」
樹人にどれぐらい効くか分からないが、まずはおまけの二匹を倒して王と昔のお供二人を確保しないと話にならない。
僕の魔法は樹人を中心に五本の火柱を上げた。
樹人は不思議なことにピンポイントの光る防御が三ヶ所発生してダメージを防いだ。
蛙人と犬人はアッサリと爆炎に巻き込まれて吹き飛んだ。
お供二人も吹き飛ばされたが、火柱の位置が離れてたので大丈夫なはずだ。
爆炎が上がっている内に王の荊結界を魔剣で切る。
シャラーン。
「すまない。助かった」
結界が破れると王は自分で出てきた。
すぐに供の二人の許へ行く。
「お前たち、生きていたか」
「すみません。
生き恥を晒しておりました」
「王様もご無事で」
「よい。
しばらく離れておれ。
レアンはルーを守れ」
「はっ」
「はいっ」
レアンが人狼で鹿人がルーみたいだ。
ルーを庇いながらレアンが下がっていく。
二人とも歩き方がぎこちない。きっと使っていた影響だ。
だが舞台が降りれば、とりあえず巻き込むことはないだろう。
火柱がきいたのか樹人が暴れて枝と根を振り回している。
僕と王は樹人から更に距離をとった。
「すまない。
さっきのような無様はしない。
樹人自体は大したことはないが、奴の持っている杖が魔力を増幅するようだ。
杖を何とかしたいな」
言って王は土魔法で陽動をかけた。
王の魔道具が魔素を濃くして樹人の杖が奴の魔力を強化するようだ。
と言っても王の魔道具については樹人がコントロールしてるので僕たちには効果がない。こんなにも魔素が溢れてるのに、使えるのが樹人だけというのは不公平だが仕方がない。
一方の杖は、普通サイズの杖だ。
樹人が使うからといって特別なサイズではない。
特別なのは杖に付いている大きな水晶の方だ。
歪な形をしたあの水晶があの杖に謎の効果を与えてるに違いない。
樹人が詠唱短縮して強力な魔法を使用できているのも舞台だけではなく、杖の効果を含めてなんだろう。
そうと分かれば。
「せいっ!」
樹人の懐に入り魔剣を打ち込んだが例の不思議な光る防御が発生して弾かれた。
円盤型の盾のようなものが一瞬で現れてガードする。
盾の大きさは樹人の大きさからすると小さいが、僕の体ぐらいの大きさの盾だ。
さっきは魔法の炎を防いだ。
そして魔剣も防いだ。
?
空間魔法なしだったら?
……ダメだな。
空間魔法なしの普通の剣であんなバカでかい木を切れるはずがない。
王は舞台に手を当てて何かを調べている。
あの樹人のガードも舞台と杖の効果だろうか?
「爆烈雷極」
「爆烈火極」
「爆烈土極」
「爆烈鉄極」
「爆烈水極」
ガードの性能を調べるために五つの属性違いの爆発を撃ち込んだ。
樹人は咄嗟に三つの爆発を防いだが、残る二つには被弾した。
防がれたのは鉄、火、土の三属性。ヒットしたのが雷と水。
あの至近距離で属性を考慮して防御したとは思えないが、うまく弱点属性を防御している。
「ギャァア!
貴様!許さんぞ!我が手で直に握りつぶしてやる」
「繋枝電獄」




