第十三話 熔岩鏡
さて、どっちが行く?
と王と目を合わせたとき遠くから魔法攻撃が飛んできた。
風魔法。
風刃と同じ系統の魔法だ。
「乱風陣」
「堅土壁」
僕は空中に突風を起こし敵の攻撃を相殺した。
王は土の壁を築いた。
一方向だけだが厚くて面積も広い四角の壁だ。
直線的な魔法だったから相手もこちらが見えなけば攻撃してこないだろう。
でも攻撃してこないからといって後回しにするような僕たちじゃなかった。
僕が獣人剣士を相手することになり、王はすぐに壁を回り込んで魔法使いのいる方へ走った。
「余所見してんじゃねぇ!」
人狼が切り掛かってきた。
人狼の横薙ぎを咄嗟にバックステップで躱す。
下がった僕に横から傍にいた蛇が噛み付いてくる。
魔剣を鞘から抜きつつ蛇を斬りあげる。
視線を人狼に戻すともう目の前に突きが迫ってた。
「これでもくらえ!」
身を捻りながら突きを剣で弾き、後ろに倒れ込む。
そのままくるりと腹這いになったところに人狼の両手上段斬りが襲ってきた。
「鉄柵囲」
人狼に向けて柵を作る。
身長ほどの柵を作り、ついでに人狼を囲うように周囲に伸ばした。少しは動きを止めれるだろう。
「爆嵐刃」
僕の背後の雑魚を吹き飛ばす。
人狼の上段斬りを柵で防ぎ、後ろと左右には僕を中心にした風の刃を嵐のように散らせた。
人狼との戦いを見ながら、僕を取り囲む雑魚を排除する。
人狼は柵を軽く飛び越え連続して突いてくる。
僕は魔剣に魔力を流せずに突きを弾くので精一杯だ。
人狼は僕の左に回り込みながら斜めに斬りつけ、振り切ったら即斬りあげてくる。
かろうじて剣で逸らしながらも後退させられる。
「爆嵐刃」
今回は全方位に風の刃を飛ばしてスペースを確保する。
人狼の速い動きを躱すスペースがないとちょっとツライ。
攻撃の回数が多く魔剣に魔力を流す余裕がない。
……ちょっと反省した。
魔剣でゴーレムを簡単に片付けたが僕は本職の剣士ではない。
魔剣があるからと言ってあんな素早い動きはできない。
やはり魔法を織り交ぜなければ歯が立たない。
ふと王を探すとあちらもまだ仕留めてないようだ。
王は魔法を連発しているが相手の鳥の動きが速くて土魔法を躱されている。
ちょっとした間に人狼がまた左に回り込んで斬りつけてくる。
僕の左は隙だらけのようだ。
左からの攻撃を避けるように王に向かって走り出す。
人狼は調子に乗って追ってくる。
「どうした?
さっきまでの威勢はどこいった?
かかってこないなら、こっちから行くぜ!」
人狼は余裕のない僕に追い打ちをかけてくる。
「豪戈旋風」
僕は王の前にいる鳥に向かって風の渦を飛ばした。
ただの渦ではない、風の鉾を振り回す渦だ。
渦に巻き込まれた雑魚が吹き飛ばされ、鳥も王から距離を取って離れる。
「王、代わってくれ。相性が悪い!」
「風刃舞」
鳥に向かって風魔法を撃ちつつ、王の方へ走る。
僕と王はスイッチしてポジションを入れ替え、相対する敵をチェンジした。
ついでに使い慣れない魔剣を鞘にしまい、魔法戦スタイルに戻す。
「風刃覇」
撹乱用に風の刃を空中を飛ぶ鳥めがけて撃った。
鳥は急旋回して魔法を躱す。
「お前もまとめて倒してやる」
「風刃弾」
鳥が僕に狙いを代えて風魔法を撃ってくる。
僕の希望通りに戦う相手を代わってくれたようだ。
お礼に大型の風魔法を繰り出す。
「暴乱風刃龍」
風の刃でてきた長大な龍を空に放つ。
龍は目に見えないが、体に纏う風の刃があらゆるものを切り裂いている。
その通り道にいた者たちが次々と葬られていき、龍の暴れ具合がハッキリと分かった。
鳥が見えない龍を避けようと急上昇、急下降を繰り返す。
しかし、風刃龍は逃さない。
急下降したときには地面にいる虫たちを斬り裂くながら鳥を追い回す。
逃げ惑う鳥が天井の隅に追い詰められて餌食になった。
王の方を振り返ると人狼を土の壁で閉じ込めるところだった。
続いて王は人狼を閉じ込めた土箱を巨大な土の槍で貫き粉砕した。
スイッチして良かった。
周りの雑魚も粗方片付いてきた。
改めて中央の舞台を見る。
「あの中央の舞台は何なんだ?
ものすごい魔力を感じるぞ」
風刃を迫ってきた蟻に飛ばしながら王に尋ねる。
鳥と人狼を倒すために分散していたが、僕は会話ができる程度の距離に寄って行った。
「あれか? あれがオレの作った魔道具だよ」
あれが王の作った魔道具。
洞窟の一角を占める巨大な舞台だ。
色は真っ赤な紅。円型の舞台で表面は磨きあげられた鏡のようだ。
その表面から溢れるように魔素が流れ出てきている。
「なかなかすごいだろう。
ここにあった火山の眠った熔岩をベースにして作ったのだ。
地脈と繋げて魔素を精製する鏡だ。
普通にある魔素より濃厚だろ」
「精製というか魔素を生み出しているようにしか見えないな」
「元々土は火から生まれる。
火が燃えて灰となり土となる。
オレの力は土であり、火なんだよ。
火山、そして熔岩はオレたち土の根源だな。
その熔岩を使って熔岩石の鏡を作った。
鏡はオレを映し、もう一人のオレになる。
更に鏡を地脈に繋ぎ無限に魔素を映し出す鏡にした」
「考えたことは分かった。
そんなことが出来るのか?
出来るのか、というか出来たんだな。
どうやったらそんなことが出来るのか、全く分からないけど」
「あれは鏡で、オレで、地脈と繋がる土の力の塊だ」
王が残った虫を片手間に倒しながら、舞台中央にいる樹人を見ながら続ける。
樹人は杖を掲げながら何か唱えてるようだ。
「それを彼奴が欲しがったんだよ。
オレは魔素を濃くして過ごしやすい環境を作りたかったのだが、魔素が濃くなり土の力が強くなるのが許せなかったらしいな」
「今も魔素が溢れてる。
そんなものがあれば狙われるか」
「所詮は土の力だから、欲しがっても使いこなせないと高を括っていたのだがな。オレを封印したのと同じで何か仕掛けがあるようだな」
洞窟内を見渡すと後は隅の方で逃げ惑っている奴らが少しいるが、ほとんどの相手が倒れ伏している。
舞台上には樹人とそれに続いて蛙人と人犬がいる。
樹人の大きさは異常で横幅だけでも僕と王が両手を広げた倍ぐらいある。
蛙人と人犬は普通の大人ぐらいの大きさだ。
三人は何も着ていない。
樹人はデカ過ぎて服がないみたいだ。
後の二人は下僕かな。
僕が周囲を観察していたら樹人が喋った。
木の中ほどに顔らしい窪みがある。
「久しぶりだな赤土。
折角、長生きできるようにしてやったのに、何しに来た?」
唸るような声だ。
地響きのように洞窟内を反響する。
「飽きたから遊びに来ただけだ。
お前も陽の光が恋しいだろう。
みんなで洞窟内に引きこもるのは楽しかったか?」
「ぐぬっ。
貴様ー! 貴様の仕業か!」
樹人が簡単に王の挑発に乗ってくる。
楽しい引きこもり生活だったようだ。
五大属性の仕掛けの謎は残るが、樹人にそれだけの能力がないと分かれば充分だ。
「さぁ、どうだったな?」
「貴様ー! これでも喰らえ!」
「千葉千刃」
樹人舞台の上から自身の葉を大量に吹き付けてくる。
葉は一枚一枚が鋭い刀となって周囲一帯に突き刺さる。
僕も王も樹人の葉を左右に分かれて避けた。
二人して魔法は使わなかった。
壁などで防ぐよりも壁が死角になることを嫌った。
「土弾」
王が様子見で撃った土弾は樹人に向かって行ったが、舞台との境界で弾けた。
王の魔道具が結界を作っているようだ。
「ふはは!
貴様の攻撃など届かんわ!
さっさと降伏した方が身のためだぞ」
「さぁ、どうかな?」
「地皇凶威曝滅!」
突然、大きな地響きが始まった。
地響きと共に舞台の直前に大きな紅い光が地面から出ている。
光が大きくなるにつれて、地面が割れ始めた。
光は大きくなっては縮み、その度に脈打つように光が眩しく輝く。
脈打つタイミングが徐々にゆっくりとなり、ついにはゆっくりと収束していく。
両手に抱えるぐらいに収束したら、大爆発した。
ドガガガガーン!
ものすごい威力だ。
腰を低くして踏ん張っていないと爆風だけで飛ばされてしまう。
しかし、舞台には傷一つ付いていない!
王が一瞬眉を顰めた。
想定外だったようだ。




