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第十話 エルフ


「オレはここに土の国を作り始めた。

けど、力が強いからこそゆっくりと他を圧倒しないように注意した」


 王がふと顔を上げる。


「土の力が強過ぎるとどうなるか分かるか?」


「んん? そうだね。

土が強いと水が弱くなる。

水が弱いと木が少なくなる。

水が弱いと火も強くなる。

木が弱いと土はより強くなる。

火と土が強いから砂漠になる。

そんなところかな」


 王が僕を見て驚いたような顔をする。


「よく分かったな。

何事にもバランスがあるんだ」


 王が再び歩き出した。

 落とし穴の底から左の幅広通路を上がり始める。

 その足取りに迷いがない。


「オレは辺りを砂漠にするつもりはなかった。

むしろオレは地下に国を作り、地上は水と緑にしたかった。

でも、木の奴等はそうは考えなかった」


 王が言葉を切ると通路の先に大型の蟷螂(カマキリ)が一匹いた。

 倒さずに通ることはムリだろう。


 さて、どうしようか?

 王の前であまり戦いたくないが、彼の力だと余計な被害が出そうだ。


「王はしばらく休んでて。

僕が行くよ」


 素早く王の前に出て風魔法を使う。


風刃覇(ふうじんは)


 風の刃を飛ばした。

 一発で蟷螂(カマキリ)の首を落とし仕留める。

 威力が弱いと倒せないし、強いと色々疑われそうだしなかなか難しい。


「ほう。なかなかの腕だ。

一人でオレを助けに来ただけのことはある」


 振り返ると王が腕を組んで観戦してた。


 いやいや、助けに来たんじゃなくて、僕も迷子中なんですけどね。


「木の奴等とは?」


 王に話の続きを催促する。


「木の奴等は木の奴等だ。

樹人(トレント)にさっきの人虎(ワータイガー)とかだな。

奴等は弱いくせにオレの力を欲しがった。

オレが放っておいたら魔道具を奪い、オレを封印しやがった」


 木の奴等ってことは木属性の奴等ってことかな。

 一緒に通路を進みながら会話を続ける。


「王のように魔力を持っているのですか?」


「ああ、さっきの人虎(ワータイガー)も喋っただろ。

魔法も使うし、寿命も長い」


 おぉ!

 僕の驚いた顔を見て王が補足してくれる。


「極端な話になるが魔力に目覚めると別の生き物になるようなものだ。

魔力により身体能力を強化できるし。獣でも喋れるようになる。

その副作用で成長が遅くなり寿命が延びる。

それでオレみたいに見た目と年齢、力がアンバランスになる」


 王は魔力を手に集め石礫(いしつぶて)に変え壁にぶつけた。


「オレも人間の街に行けば化け物だ。

化け物の中には人間の中でうまくやってる奴もいるし、人間のいないところにいる奴もいる」


 王は天井にいる蛾を新しい石礫(いしつぶて)で倒した。


「木の奴等は人のいない森を選んだ。

だが、オレの力が怖かったらしい。

そしてオレの力が欲しかったようだな」


 王は自嘲気味に笑った。


「正直、どれぐらいの間封印されてたのか分からない。

だが、奴等から魔道具は取り戻さなきゃならない。

お前にはもう少し付き合ってもらうぞ」


 王の思い出話は終わったようだ。

 空気が張り詰めたものに変わり、王が色々と取り戻したのが分かった。


「この先から白煉瓦に変わりそうかな」


「白煉瓦?」


「うん。ここって、土が剥き出しの落とし穴部分と白煉瓦で作られた謎解き部屋でてきてるでしょ」


「なんだそれは?

白煉瓦とか、謎解きってなんだ?」


「えっ? 白煉瓦ってあの白い石組みのことだし、謎解きはあの大広間の落とし穴!」


「うん?

白煉瓦ってあの白い魔導石のことか?

それなら分かるが、謎解きって何だ?」


 そういや、王は長い間封印されてたのか。


「あの白い石組みに使われている石を白煉瓦って言ってたんだよ。

謎解きは……、昔はなかったのか?

大広間から落とし穴に落ちてさっきの戦闘跡のあった洞窟に着いたんだけど」


「魔導石は昔の城跡だな。

ここは昔、城があった。

あの白い魔導石で作られていて瀟洒な城だったらしい。

それが火山噴火で熔岩に呑まれ、土に埋まったようだ。

オレが来たときはただの枯れ火山だった。

この姿だし、供がいたから岩穴に隠れ住んだんだが、岩穴の奥がその城に続いていた」


「へぇ。そんなに昔の白煉瓦なんだ。

不思議な素材だよね。

僕の魔法でも傷付かなかったし」


「魔導石を壊そうとするとは、無茶な奴だな」


「閉じ込められてどうしようもなかったからね」


「そういえば、どうやっておれの封印を解いた?」


「それは……、この剣の力だ」


 僕は腰の魔剣に軽く手をやった。


「魔剣か。抜いてみてくれないか?」


 王は無理強いすることなく聞いてきた。


「いいけど、危ないから近寄るなよ」


 シャン。


 魔剣を抜いた。


「ほう。魔力を流してみてくれ」


 隠しておこうと思ったが仕方ない。

 魔剣に魔力を流す。


 ヴォン。

 魔力をながしながら、少し剣を振って収めた。


「なかなかの剣だが、それだけで結界を解けるとも思えん。

お前にも秘密がありそうだな」


 あー、何か勝手に想像されてる。


 僕たちは土の洞窟から白煉瓦の城に移った。


「どっちに行けばいい?」


「右に曲がって上に行く。

一番奥まで行けば魔道具がある。

それを奪う」


「木の奴等はどれぐらい居るのさ?」


「さぁ? さっきの虎人(ワータイガー)の他に蛇と鳥がいたかな?

人質でも取られない限り大丈夫だ。

そういや、さっき謎解きとか言ってたな」


 王の歩き方は変わらない。

 城に入ってからも悠然としてる。

 この洞窟に慣れてるからかと思ったけど、謎解きを知らないし。

 もう少し確認しとかないと不安になるな。


「僕が見たのは大広間のレリーフ。

五大属性が彫ってあって弱点属性を当てないと扉が開かなかった」


「本当か? そりゃ大変だな。

木の奴等も困ったことになってるんじゃないか」


 困ったことと言いながら笑ってる。

 木の奴等が困ったところで笑い話でしかないのだろう。


「あぁ、あれは複数属性が使えないとどうしようもない」


「……お前はエルフか?」


 不意に王の語気が強くなる。


 !

 咄嗟に構えてしまった。


「そうか、お前はエルフか」


 王が再び目を細めて笑う。


「エルフなのは隠しておけ、魔法もできる限り複数属性は使うな。

これは忠告だ。

そして絶対に捕まるな。

……なんでエルフがこんなところに」


 忠告を言って、最後は呟きになった。


「エルフを知ってるのか?」


「知らない、が、知っている。

オレは魔力の強い人間だ。

エルフは人間より魔力が強い。

それぐらいだ」


「そうか。まぁ、よろしく。

でも、五大属性を複数を使えることが珍しいのか?」


「あぁ。少なくともオレが人の街にいた頃は複数属性は皆無だ。

ただ、どの属性でも工夫次第で色んなことができるから決定的に困ることはない。

むしろ一属性でも使えればその時点で普通ではないからな」


「そうか。僕はちょっと珍しいのか。

もう一つ気がかりがあって、王の詠唱は特殊な気がしたんだけど、あれが普通なのか?」


「詠唱は人それぞれだな。

普通はもっと長い詠唱文を使って魔法を発動させる。

魔力があれば、短詠唱でも無詠唱でも発動可能だ。

しかし、自分で魔法を作るのはかなり限られる」


「そうか。僕の詠唱も特殊なんだよ」


「ふっ。エルフが今更何言ってるんだ」


 王は改めて笑った。

 見た目は子供だが、中身は子供じゃない。


 二人で白煉瓦の階段を登っていくが、敵は全く出てこない。

 白煉瓦には防魔効果でもあるんだろう。

 一人で謎解きしてたときに比べて余裕があるのを感じる。

 王が強いのもあるが、一人じゃないのは精神的に助かる。


 目の前に扉が見えてきた。


 大広間への扉だろうか?


 落とし穴の落下があるのでちょっと確信が持てない。

 マッピングは得意なのでほぼ合ってると思うが、ちょっと違和感を感じる。


「王、ちょっと確認するから、ここで待ってて」


 王には扉の前、三段ほど下の階段で止まってもらう。


 僕が一人で扉に向かう。


 えっと、大広間の扉はどんなだったかな?

 その扉にはレリーフがあり、大きな円の内側に上から下に向かって広がる三本のギザギザ線があった。


 ギザギザ線で、三本あって上から下に広がる。

 これって雷だよな。

 いつになく分かりやすい。

 今回は扉に彫ってあるし、幾何学模様はないし。


 これは初級問題か。


 王も見てるしできればチャチャっとやって済ませたい。


操雷(そうらい)


 右手を突き出し、掌の前に雷球を出す。

 その雷球をそっと扉に当てた。


 ゴォン。

 目の前の扉がズズッと左右に開いてく。


「ほぉ」


 後ろで王が感嘆してる。


「これがお前のいう謎解きか?」


 あ!そうだった。

 王に答えが外れてるときの扉も見て貰えば良かった。


「ああ。この扉の模様は初めて見たけど、答えの属性と違う魔法を当ててもビクともしない」


 開く扉の中に目を凝らす。

 そこは大広間のようだ。

 しかし、リビングアーマーやゴーレムの残骸はない。


「王、この先の大広間はいくつある?」


「この先は二間続きの大広間だな。

そして謁見の間があって、奥の間だ。

と言っても、オレがそう使っていただけの話だ」


「いや、それで十分」


 扉の先は僕の知らない大広間。

 それが分かった僕は慎重に大広間に入る。

 王も僕の後について大広間に入ってくる。


 扉はまだ開いたままだ。

 扉が閉じると何か仕掛けが動く筈だ。

 周囲を確認する。


 何だあれ?


 天井に奇妙なシャンデリアが付いてる。

 馬鹿でかくて、骨太で……。

 恐ろしい重量がありそうな白煉瓦。


「面白いものが付いてるな」


 王が楽しそうに言う。


「アレは昔からあったのかい?」


「いや、オレも初めて見るな」


 背後で扉が閉まり始めた。


 ズズズズズ。


「アレもオレが相手するか?」

王が聞いてくる。ホント、楽しそうだ。


「いや、アレは僕がやる。

今度は僕の番だ」




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