08 竜血騎士
精霊召喚・シェンドラルスピリットと極・十字撃二発で、今聖剣騎士となった俺のmpがそこをつけた。
この精霊召喚は最高級の治癒魔法の一つなので、コストが非常に大きい。
時空術師を始末したあと、俺は急いで救助を始まる。
先ずは横になってる狼人族の少女のところへ行く。
リマンド(偽名)曰く、彼女はドルイドの神の加護があるので、意識はまだある。
つまりまだ助かる可能性が高い。彼女だけでも何としても助けたい。
「精霊よ、この子に治療を。」
精霊シェンドラルスピリットは少女の体に手を乗せた。
彼女に触れるだけで、hpが大きく回復する。
「た、すけ、て。」
少女は枯れた声で俺に助けを求める。
「みんな、を、たすけて。」
「…」
彼女の虚しい瞳とは違う。
残りの子供達の目は、すでに死んでいる。
正直この子達を助けるかどうか分からない。
精神を治療する術なんて、あんまりない。
俺だって、一度死んでたから、だ。
「これから俺は、恐ろしい存在になるかもしれない。先に目を閉じたほうがいい。」
狼人族の少女は軽く頭を振った。
「だい、じょうぶ。」
「そうか。後でどうなるかは知らないよ。」
俺は、使える魔法を一通り使うつもりだ。
それらの魔法をやるには、一度ドラゴンに戻す必要もある。
この子に見られるかもしれない。
いや、命が助けるならやるしかない。
そう考えて、俺は一振りで檻の鎖を切った。
「解除。」
俺は人間の姿を解除し、ドラゴンの姿に戻した。
白亜色の大きな竜。莫大の力。
山の悲鳴が聞こえるような気がする。
魔物達が怯えているにも見える。
俺だって今の自分が怖いかもしれない。
狼人族の少女の方を見る。
彼女はどうだ。
彼女はただいま、大丈夫と言った。
今の俺の姿を見て、どう思うのだろう。
「っ!う、う〜」
泣きそうじゃないか、まぁ無理もない。
しかし怖いながら、狼人族の少女は俺のほうに。
両足が震えてるのに。
「た、助けてください、みんなを助けてください!」
渾身の勇気を絞って、叫びのように俺に助けを求める。
俺はそれを応じる。
「よかろう。」
mpの消耗を考えれば、人間変幻を使うのがいいが、ドラゴンのステータスが高いなので、そのままスキルを発動する。
最強状態で魔法を使うのだ。
「騎神の慈愛」
騎士の神は子供達を振り向いてくれない。
「大いなる世界樹の加護」
エルフの樹神も。
「殉教者の復活」
「聖なる創世の光」
人間の神様も。
「霊脈覚醒」
不死者の神ですら。
ドラゴンの姿で初の魔法発動。
人間の時よりよっぽど強力で、多様な治癒スキルを使った、しかし子供達の目に生気が戻る気配がない。
狼人族の少女はただ俺のそばにそれを見るだけ。
彼女はすでに俺が怖くないのか。
しかし逆に今の俺は、彼女の目を見るのが怖い。
彼女の期待を期待を背けるのが怖い。
「このままじゃ。」
やがてドラゴンとしてのmpも尽きそうになる。
mpが尽きなくても分かるんだ。
神はもうこの子達を見捨てた。
「どうにもならないのか!」
「ひっ」
狼人族の少女は思わず悲鳴。
俺のそばに立つものの、やはり俺のドラゴン姿の怒り声は、怖いらしい。
案外ドラゴンの時、自動的に人間に恐怖を与えるスキルが常時発動しているかもしれない。
でも狼人族の少女はビビった後、すぐ俺のそばに寄ってくる。
それでも俺のそばにいる。
治癒魔法が無理なら、ドラゴンのスキルでどうにかするしかない。
この世の神はいないなら、俺は神はになる的なことをやるしかない。
ドラゴンの魔法は、人間の魔法より優位性を持つ。
そう考えるしかない。
ヒューマンの第四層と第五層のスキルは、主にステータスの増加。
最終的にドラゴン本体のステータスまでにあげることが出来る。
これが聖剣があれば、きっと強力になるだろう。
何せドラゴン越えのステータス。
しかしこれじゃ駄目だ、子供達を助けない。
ステータスの問題じゃない。
「竜血授与5sp」
自分の血を人間種のものに与える、竜の知恵を持つ不老不死の「竜血騎士」となる。「竜血騎士」にはエインシェント魔法とブレスを習得可能。血を与えるには、自分自身に「竜の傷」効果が追加する(基礎ステータス10%下がる)、神級治癒魔法しか治れない。
第四層にこのスキルがあった。
これだ。
これしかない。
この子達に竜血を与える。
俺はすぐ第三層のスキルの属性増加でspを埋める。
人間変幻lv4を取得、そして次、目当ての竜血授与を手に入れた。
spがほとんど残してない。
しかし。
「これでどうだ。」
これが、竜の力が子供達の助けるになれるなら。
やるしかない。
「竜血!」
その一言で、俺の体の中に、大きな傷口が開く。
痛い。
かつてないほどに痛い。
ほとんどの魔法と物理攻撃が通じない、竜の体に傷を開くのは、これほど痛いとは。
「手伝え!こいつらに俺を血を飲ませろう!」
狼人族の少女に命令。
彼女は急いで子供達を俺のところまで運ばせ、一人一人、俺の血を飲ませた。
最後の一人が血を飲まされた後。
「大いなる世界樹の加護。」
俺は治癒魔法を自分にかけ、傷口を治した。
しかし、ドラゴンの傷口が治っても、この子達が俺の血に全く反応しない。
「ど、ドラゴン様!」
狼人族の少女の声。
微動もしない子供達の中、一人猫耳の少女の体に異変が起きる。
大量の血が皮膚を裂けるほど膨張する血管を登って、脳に渡るように見える。
「ぐ、ぁああああああ!」
彼女の体に赤いオーラが纏ってる。
体の毎寸の血肉が千切れるように破壊され、そして再生していく。
やがてその衝動が消え、猫耳の少女の瞳は、真っ赤な色になっていた。
その瞳は、生きている証となった。
「よ、よかった!」
狼人族の少女が猫耳の少女を抱きつく。
猫耳の少女は周囲を見渡した後、俺を気付いた。
軽く抱きつく狼人族の少女を退かせ、俺の前に膝を伏せた。
「あなた様は、私のあるじと見受ける。」
「あ、ああ。」
「私を助けていただき、感謝します。そして、この私の忠誠を捧げることを許しください。」
「別に俺に従う必要がない、お前は助けたいだけだ。」
「どうか私の忠誠を捧げる許しを。」
「だから、」
「どうか。」
彼女の目は非常に鋭く、真剣だ。
「ああ、構わん。」
「ははっ!」
俺らのやりとりを見て、狼人族の少女は俺の前に
「どうか私も血を与えてください!」
先に言えよ。
あれは痛かったぞ。
しかしどうだろう、その必要があるのか。
「あなたは止しなさい。」
「えっ?なんでですか?」
猫耳の少女は俺に代わって狼人族の少女を断った。
「あなたは私達と違い、自分が信じてた神に助かりました。」
「あっ」
「あなたの神はあなたを見捨てていない。あなたはあなたの神を信じ続ければいいです。」
「女神エルナが、私を…」
狼人族の少女は感涙して、小さな体が震える。
「で、でも、ドラゴン様。僭越ながら、私をあなた様に仕えてください。ドラゴン様は女神エルナ様同様、私を救ってくれました。恥知らずかも知れないが、どうか、どうかドラゴン様と女神エルフ様同様の忠誠を捧げることをお許しください。」
「私からも。」
犬耳と猫耳は俺に懇願する。
別にどうでもいいよ。
「俺は、俺はみんなを助けなかった…」
「あるじ様、このもの達の命を断つ許しを願います。」
猫耳少女は子供達を見て俺に言った。
やはり、彼女は助かる前に、苦しかったのか。
俺にも分かる、あの感覚は。
「なぜ、と聞いてもいいか。」
「みんな、苦しんでます。そして、もう戻られません。」
戻らないか。
「お前には分かるのか?」
「はい、みんなと一緒に地獄の底に落ちる夢を見た。みんなは私を助ける、これ以上苦しめないようにと、私に願いました。」
「そうか。」
「みんな頑張ったと思います。私にはエルナ様がいる。この子は私達の中一番の年長者でしたし、ソードキャットの方だから、精神力は人一倍ありますから。」
結局この猫耳の少女も、自分の体質が優れたので、生き残ったんだ。
俺は人間変幻を発動した。
先、リマンドという偽名の男を倒した後、俺も時空術師の職を得られた。
そこには興味深いスキルがいっぱいあった。
「ただいま、俺は新しい力を手に入れた。このもの達の時間を止める魔法をな。今は無理だけど、いつれ助ける術が見つかるかもしれない。それでも、お前がこいつらやるのか?」
「はい。」
「え?でも。」
「みんな、苦しんでいます。そして、竜の知恵を持っても、みんなを助けるのは無理と分かりました。」
「…私からもお願いします。」
「そうか。好きにするがいい。」
「はい。ありがとうございます。」
俺もその感覚は分かっています。
この状態を続けるのが、辛い。
「始原の炎。」
猫耳の少女は炎を放つ。その炎は一瞬で子供達だけを燃やした後、消えた。
これは多分燃やしたいものだけを燃やすスキルだろう。部下なのに、俺の使えないスキルを使いやがって。
「ドラゴン様、もういいです。あなたは私達を救いましたから、どうか、どうかお苦しいにならないでください。」
「俺は、もう大丈夫だ。ありがとう。」
狼人族の少女は俺を慰める。そして猫耳の少女は
「あるじ様、どうか私に名を与えてください。これからはあるじ様と共に戦います。」
「別に今後戦うつもりは、いや、あるな。まあ、それはいい。お前には名前がないのか?」
「申し訳ありません、深淵の底で、忘れました。」
「そうか。」
俺は考える。
この子の名前を。
「お前には俺の知り合いの名前を与えよう、尊いお方だ。これからその名を恥じぬように強くなりなさい。」
「はい。」
「今日からお前の名はヘレナだ。」
「ありがたく「ヘレナ」の名前をお受けします。」
「お前も、名前を与えようか?」
狼人の少女に聞く。
「いいえ、私にはエルナ様から立派な」
「どうか彼女にも名前を与えてください。」
「えっ?えええ〜〜!」
「じゃお前は今日からセラだな。」
「なんか適当です!そしてセラって、人族の勇者の名前じゃないですか。私は平原狼人族なのに!」
「ありがたくお受けなさい。」
「は、はい。」
こうして、俺は二人の部下を迎えた。
ヘレナとセラ、竜神と女神の名前を持つ彼女たちは、亡くなった子供達の分、強く生きるように。