06 確信犯
魔法の都ランディアの空は、薄い青色。
の結界に包まれている。
転移の間の塔の色もそんなでした。
ただ青いならまだしも、中に無数の白い小粒がうっすら動いている。
これが、マナの流れって奴?
「すごい…イシェンドラ様の結界、そこまでとは。」
「これは、すごいですね。これがリティラが作った結界か。」
「イシェンドラ様はほぼ1人の力で、この魔法の都ランディアを作り出した。そして転移の間を設置し、我々魔法を追求するものに千年の方便を。偉大なお方です。」
千年、か。
まあ、エルフあるあるか。
でも待ってよ、転移魔法はスキルツリーにあるスキルじゃない。
「その、転移魔法はリティラ様が作り出した、術ですか?」
「ええ、そうですよ。千年前、姉であるアティラファナは魔法の聖地を作り出し、妹であるリティラファナは魔法の都を作り出す。魔法使いと賢者なら、誰しも聞いたことある話ですよ。」
「作った術はスキルツリーに乗るんだ。」
「そうですね、偉業過ぎてあんまりない話だけど。」
俺は飛んだ失礼を働いたかもしれない。
でもリティラにアティラという姉があるか。2人離れ離れで大丈夫か、俺が替わりに挨拶しとこう。近日。
そして今俺は、ミラちゃんとランディア観光を満喫する。
彼女はどう思うが知らないけど、これから挨拶しに行くと言ったが。
俺は行かないと言った。
「勿体無いのに」と言われたけど、権力争いに巻き込まれたくない。
多分どうせ巻き込まれるけど今は避けたい。
賢者のスキルツリーに結界魔法は四層にあった。
てことはリティラは賢者lv70以上確定、と。
でも多分リティラはこれ以上だと思う。
結界魔法を作り出したのもおかしくはない。
「ミラさんは、転移魔法は最近で覚えた?」
「そうですね、約一年前のことです。」
一年前?早くないか?
俺は神様のミスがないなら、今更俺は人間変幻lv1しか使えないので、少なくともチーターの俺(1.0)より強い。
でも人間にも50spあったな、結局俺の方が強いか。
セラ様最初25spを持ち出したけど。
「それならミラさんはもっと早く魔法の都に来れたのに、なぜ一年後の今ですか?」
「一年前はまだ11ですよ。私の国では成人は15、働くには12歳なるから。」
「そうか。」
お前働く気だな、偉い。
そして解説ありがとうございます。
「人族の国は大体そんなものですよ。カイト様も12になられたでしょう?アスタ族の方ですよね。」
何それ、アスタ族?食べ物?
「アスタ族では、ないです。」
「え?!それともミールドワーフ族の方ですか?でも銃持ってないですし。」
何その危険なドワーフ族、そいつら毎日銃持って歩いてんの?アメリカか?
にしても俺の知らない種族多いな。
でもこうも人間に勘違いしやすい種族なら、近親種族かもしれない。
いやドワーフと言ったし。
「多分僕、オーソドックスの人族と思うよ。」
「えい?見た目まんまの年齢ということですか?失礼ですが、お幾つなんでしょう。」
「10歳になります。」
「若い。す、すごいですね。」
人間変幻の説明文ではこの世界、身分を調べる手段があると知った以上、嘘つくのはリスク高い。
ここはおとなしく年齢を教えてやる。
ミラちゃんはどうも俺が十歳にして転移魔法を習得するのは不思議でならないそう。
習得してなくて取得しただけだけどね。
「僕はその、山奥で育て来たので。ある日見つけた魔導書で魔法を学んだです。」
とりあえずベタのデタラメをミラちゃんに。
「その魔導書のこと、これから他言無用の方がよろしいかと、狙われます。」
魔道書は持ってる。内容はしょうもないけど。
「は、はい。肝に銘じます。」
「でもすごいな、私より速く転移魔法を習得するなんて。天才という方はやはり私なんかではなくて、カイト様みたいな人こそ…」
ミラちゃん、やはり呼ばれてるんだ、天才に。
「様はやめてください。年上だから、カイトでいいです。」
「ではカイトくんってことで。」
いいな、この会話。
くそつまんねーけど、いいなぁ。
「やはりカイトくんも小さいごろから、魔物狩りをしてたよね?」
「う、うん。ミラさんはいつから?」
「私は家の方針で、八歳の時から騎士団の皆様の守りで、鍛錬をしてました。それに母も大魔導師でしたし。ちょっとずるいかもしれないけど。」
「僕も、八歳の時かなぁ。その、大魔導師という称号はどうやって手に入れるですか?」
「転移魔法で魔法の聖地にたどり着けるものにしか授けられない称号です。賢者のlvは70以上、魔法使いはlv90とされるですが、初代大魔導師様以外大魔導師のみんなは全部賢者でしたので確認できる術は。」
なるほど、レベルのことはこの世界では認識済み。
解説のミラちゃん、ありがとうございます。
「lv90の魔法使い、この世にいないですか?」
「はい、魔法使いの方は賢者より多いですが。レベルはそう高くないです。」
「ちなみにリティラ様のレベルは、ご存知ますか?」
「測量されてないので、でもみんなlv99あるじゃないかって。」
「さすがですね。」
lv99の奴やはりいるんだ。どれぐらいの実力でしょう。ちなみに現在俺は人間変幻lv4とlv5を取得していない。できるが、保険だ。
「先話したアスタ族とミールドワーフ族とはどういう種族でしょう?」
「私も詳しくは分かりません。アスタ族は人族の一種で、ちょっと背が小さい。たまに人間の子供に勘違いされるんです。ミールドワーフ族はドワーフ族より背が高く、そして体がとても細い種族でして。カイトくんはこの二つの種族かなと勘違いしました。」
「なるほど。」
「アスタ族の中に商人がすごく多いので、ただいまカイトくん、イシェンドラ様と私に素敵な品をお贈りしたので、てっきりアスタ族の方だと。」
「そうですか。」
アスタ族の商人。この設定、使えるな。
俺も中身17、いや27、37かもしれないの大人なんだから。
そう考えると、俺の前世プラス今世、半分以上寝ている。
いや、三分の二が寝ている。
転移の間から出てから、リティラ曰く「自慢の庭」、そこからランディアの町まで結構歩いた。
どんだけ広いのよ、リティラの庭。
さすがランディアの主。
主であってるよな。
ランディアの町はまあまあ賑やかだった。
最初に辿り着く町としてはまずまずのところではないか。
しかし、ここは異世界の都市として、ファンタジーと言えばファンタジーだが。どこが違い。
この違和感は、結界ですかな。
開放感がない。
包まれるような感じ。
でも住民たちは気にしなくてうまくやっている。
そして魔法の都だからか、町中の店はなんかデザインか、商品の並びが凝っている。
建物も奇抜。
ミラちゃんに聞いたら、どうやらここがおかしいなだけです。
「魔法を探求するものはみんな、品位とスペシャルを求めますから。」
「ミラさん、ここ詳しいですね。なんか道も、迷わず歩いてるし。」
「はい、魔法の都の地形は勉強したことあります。あ、よかったらこれ使ってください。」
ミラから地図を貰った。
「いいですか?」
「大丈夫です、もう覚えているから。」
地図って覚えるものですか?
「四区に分かれてますね。」
「そうですね。母親の実家のバトン家はランディアの治安を任されたので。その地域に冒険者ギルドがあるので、冒険区とも呼びます。当然宿屋も多いし、旅人にとっては一番住みやすいところです。もちろんバトン家に加入するなら、宿屋はお安くになりますよ。」
そうですか。
また勧誘してない!
「防衛区、貿易区と研究区もありますね。」
「はい、それぞれフォーレ家、ノートリアン家にアラン家ね。」
説明は?
商売敵は説明なしか。
そして冒険区につく時。
「是非、バトン家の傘下に入っていただきたい!」
やはり勧誘か。
「僕はすでにリティラ様とクライブ様に、魔法活動に参加する意向ないと伝えたので。」
「勿体無いですよ。」
本日2回目の断り。
女の子一日2回振るなんて、俺も増長したな。
「残念です。」
「でも町の観光なら大丈夫ですよ、また誘えば。」
「そ、そうですね。そうだ!魔光板の交換をしましょう、連絡ができるよう。」
魔光板?何それ。
田舎者の俺に教えてくれ。
「魔光板って、何かの工具ですか?すみません、僕は持ってません。」
「え?そうか、カイトくん、今まで魔光板必要なかったか。」
「あの?」
「すみません、説明しますね。魔光板は賢者のスキルツリーに第一層にあるスキルです。方便なのでみんな取得します。魔力で魔光板同士でメッセージを受信送信出来ます。このようなものです。」
このようなものって、ビーパーか。
古いな。
確かにそんなスキルいたな。
俺はmp関連のスキルに使ったから取得してない。
とりあえず試しにspを使い、ビーパーをゲット。
「はい、出来ました。」
「えっ?どうして。」
「だから習得しました。」
「わざわざ、ですか?私のために?」
うん?何かまずいですか?
「うん、そうなりますね。でも今後使えそうなので大丈夫ですよ。」
「でもちゃんと計算して第三層までのスキルを取りましたでしょう。今更第一層にspを使うなんて。私なんかのために。」
なるほど、spって貴重なものなのを忘れた。
これははやく誤解を解かないと。
「はい、いつもミラさんと連絡を取り合うなら、スキルポイント1や2ぐらい、造作もございません。」
「そ、そうですか。今後のために…えへへ。」
ミラちゃん、顔赤い。
「ミラちゃん、顔赤いよ。具合悪いですか?」
一度言ってみたいセリフ。
できるだけイケメン口調。
「大丈夫です、こ、交換しますね!」
まさか異世界で、顔真っ赤の女の子とメアド交換みたいな行為に至るとは。
それにしても、アレですね。
アレはたくさんの作品で見た。
アレのセリフを聞くととてもウザく、ムカつくけど。
自分がやるには、気持ちいいものですね。
確信犯だけど。