表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

05 芸術家肌

 「して、ミラよ。確かにお前はあたし、この転移の間で働きたいと言ったな。」

 「は、はい!是非!」

  

 ミラちゃんとリティラはなんか真剣に面接に入ってる。

 俺とクライブのおっさんはちょっと離れた場所で待機。いよいよ俺関係ないだけど。

 クライブ曰く、俺とミラが同じ日に魔法の都デビュー果たす。

 これは一種の同期みたいなもの、見届けるのがスジ、途中の退席もまた失礼。

  

 「今は駄目だ。」

 「えっ?・・・はい。今は、ですね。」

 

 ミラは必死に憬れのリティラの下に働きたいみたい。

  

 「お前には実績がない。お前はオレーナの娘でも、カシア王国でどれだけ優れた魔法の天才でも、


このランディアでは通用しない。」

 「それは、はい。」

  

 まず面接者の格を落とすね、スタンダード。

  

 「お前はバトンの血筋でもある、実力が知らされないお前をあたしの下に置くのも、立場的には無


理がある、許せ。」

 「いいえ、とんでもないです。」

 「そしてお前はこのリティラファラと、この転移の間のことを知らない。オレーナはお前に何を教


えたのは分からないが、彼女もただバトン家の娘として私を憧れていただけだ。そこにいるクライブ


とは違う。ついさっき、自分の未熟さもお前に見せた。幻滅するかもしれない。」

  

 リティラお前なに一話置きで気の良い奴になろうとしてんだよ、キャラが定まらないよ。

 

 「とんでもないです。むしろイシェンドラ様に会えて、さらにその憧憬は増すだけです。」

 「ふん、そっか。そのうち気が変わらないならまた来な。」

 「はい!」

 「ちなみにお前、今年で幾つだ?」

 「12になります。」

  

 「うん、2つ上か。ありだな、むしろちょうど良いか。」

 

 クライブのおっさんは無言で俺を見る。まさか独り言聞かれたんじゃないよな。

  

 「若いな、その若さなら、そのうち実績を出す。でもその前に、ちゃんと進路を決めればな。これ


からはこのランディアの四大勢力に挨拶するが良い。」

 「はい!そのつもりです。」

 

 おお、なんか締めっぽいセリフ、早く俺を開放してください。

  

 「ここに来て、やはりその四大勢力?に挨拶したほうがいいか?」

 

 クライブのおっさんずっとこっちを見るから適当に話を振る。

  

 「そうですね。転移魔法を取得してここに来た新人賢者なら、みんなするね。」

 「僕も、したほうがいいですか?」

 「ううん。君はこのランディアで賢者として名と実績を残したいなら、する方がいいだろう。そう


でないなら、しなくてもいい。僕もリティラファラ様も君のことを紹介しないし、今後の生活に支障


は出ないだろ。」

 

 四大勢力?は俺のことを知ったら、今後の生活に支障が出ることをされるとでも?

 

 「へえ〜そうなんだ、ではその節はよろしくお願いします。」

 

 是非紹介しないでください。リティラとミラの面接はまだ終わってないみたい。

  

 「お前はバトンの血筋だが、ここランディアはみな魔法のことばかり考えてる、派閥争いなど気に


せず、好きな分野を選べ。」

 「リティラファラ様、そう思うのは貴女だけですよ。その誤解、新人に教えるには致命傷ですよ。


 

 クライブは会話に割り込んで、ミラちゃんも「うんうん」みたいに頷く。リティラファラさん、お


前は一番分かってないな。

  

 「えっ?そうなの?お前ついこの間、奴らの動きはまだ平穏だと言ってたじゃない?」

 「それは、三年前の話だよ。」

 「落ち着かない奴らだね。」

  

 どうやらここでは、魔法の四大勢力が争ってるらしい。

  

 「僕は君の母親の実家、バトン家がおすすめする。」

 「私も、そのつもりです。」

 「でもちゃんと4家もしっかり挨拶するのよ、あいつらそういうのうるさいから。」

  

 リティラ様よ、お前も似たものですよ。

  

 「こ、これ、お土産です、よっかたら。」

 おお!今度こそ締めっぽい!

  

 「酒か!」

 「はい!カシア産、「おぼろのなみだ」です。」

 「気が利くね。」

 

 心底嬉しいそうなリティラは、さらって俺の方を見る。

 また?変わねえなこいつ。

 でも得意気に大きめの酒瓶を抱える仕草もちょっと、いや滅茶苦茶可愛い。

 でもムカつく。めんくいな自分が悔しい。

  

 でもリティラは一応転移の間の管理人。

 ひょっとすると彼女のお陰で、俺はここまで来れたかもしれない。

 俺もなんかお土産的なを贈ったほうがいいか?でも手持ちのアイテム、狼の肉2種類と魔法の糸とそ


の副産物しかない。

 贈るなら、試作品「魔法のドレス ギアスコア6」の方がいいか?

  

 「あの〜良かったらこれを。」

 「えっ?」

 「えっ!」

  

 リティラとミラは、俺の贈り物を見て、フリーズ。しょぼかったの?いい出来だと思ったのにな、


手触り超気持ちいいし。

  

 「これは、魔法の布で出来てるのね。それも、最高品質の。」

 

 ミラという女、どうやら目が利く。

 でも違うな、これはlv4で出来た素材。5層のスキルはまだ取得してない。

 

 「お前、それどうやって手に入れた?」

 

 作った。とは言えないな。

  

 「し、親切な人から貰った。」

 「貰っただと?」

 「はい。え?これ、貴重なの?」

 

 俺はクライブのおっさんに尋ねる。

  

 「貴重は貴重だけど、その問題ではない。」

  

 ならどういう問題だよ。

  

 「貴様、これが魔法の布で出来てるのは知ってるな。」

  

 知ってるよ、作った本人だから。

 

 「えい、先ミラさんから聞いた。」

  

 とりあえずとぼける。

 「その魔法の布は問題なのだ。魔法の布は魔法の糸で出来てる、それも知ってるな。」

 「し、知らないです。」

 「では教えてやる。魔法の糸を生成するには莫大なmpが消費する、その質だと、精々一日10個だ。


 「はあ。」

 

 つまりあれだな、布を生成するには糸が五個必要。

 一日2つ、このドレスを作るには、魔法の布10個で20日はかかる。

  

 「でも20日で、それは確かに手間は掛かるけど、さほど貴重とは。」

 「いや、カイトくん。その問題ではないだ。本来なら、魔法の糸と魔法の布は、質が高ければ高い


ほど、ドロップ素材の足しになるんだ。単独で装備をつくるには、ステータスは低い。」

  

 そういえば確かに、しょぼいステータスだな。

  

 「その品質、lv70以上の裁縫職人の手際と見た。」

 「す、すごいの?その裁縫職人?」

  

 俺だけど。

  

 「あたしがここに来る前なら、この質で作れる奴は一人知ってる。」

 「私も、大陸最大の国、ロッタルニア神聖帝国の皇帝陛下は、一人lv70以上の裁縫職人が抱えてい


ると聞いたことあります。それ以外は。」

 「多分あいつだ、何でお前があいつの品を?じ〜」

  

 リティラはジト目で俺を見ている。

  

 「ど、どうでしょうか。お気に召されるのか?」

 「あ?えっ、まあ確かに可愛い服ではあるな。本当にいいのか?」

  

 いいから、これ以上俺のことを詮索しないでくれ。

  

 「本当に、凄いです。でもイシェンドラ様への贈り物だから、やはりこれくらいな品でないと。」

  

 ミラちゃんは勝手に凹んでる。

  

 「そんなことない、酒も好きだぞ!」

 

 リティラはあわててフォロー。俺がミラちゃんに悪いことをしたかもしれない。

  

 「よっかたらミラさん、これを。」

 

 もう一着「魔法のワンピース」をミラちゃんに贈る。これならどうだ。

  

 「そんな!私そのつもりじゃ。」

 「いいですよ。僕にとって使えないものだから。」

 「だからといって、そんな高いもの、ただで貰うなんてとんでもない!」

 

 おお、金をくれるんのか。ありがてぇ。

  

 「ううん、実は僕一文無しでして、よっかたらこの服を小銭代で、譲っていただきます。」

 「え?はい!でも私、これぐらいのお金しか持ってなくて、全部持っていてください。」

  

 ミラちゃんは小銭入れを開けて、ラブレターを差し出すように僕のところへ。おいおいおいおいお


、ピカピカの金貨十数枚あるじゃあないですか。

 

 「これだけあれば大丈夫です。」

 

 俺も鬼ではない、金貨三枚だけ取って残りを返した。

  

 「そんな、もっと受け取ってください。」

 「これでいいですよ。魔法の都の同期のよしみってとこで。」

  

 俺とミラの間の遠慮無限ループ続ける中、いつの間にかリティラはまたジト目で俺を見ている。

  

 「しかし何でその親切の人は、女の服をお前にやるのよ。しかも二着。」

 ごめん、実はもう一丁エプロンも作ってた。

 でもそうか、女の子に女服を贈るのは正しいか、男の俺が持つのはおかしいか!やられた!

  

 「どうしてかな、きっと芸術家肌なんだよ。」

 

 裁縫職人は芸術家どうか分からないけど。

  

 「まあ、あいつなら有りゆるなあ。」

 

 なんかリティラ勝手に納得している。

 ごめんあさい、名の知らないlv70裁縫職人。

  

 こうして、俺とミラは無事?魔法の都デビューを果たした。やっと手に入れた自由、やっと入った


町。これからどうするかな。

 

 「良かったら私と一緒にランディア管理局の皆さんに挨拶するか?」

 ミラちゃんに初デートのお誘い。

 モテる男はつらいぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ