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04 リティラ

 転移魔法そのものは特に変わったことはなかった。

 一瞬周囲が真っ暗になっただけ。

 俺は新の魔法を司る者であるなら、きっとマナの流れとか、魔素の密度だの全く感じ取れる。

 そしていざという時その感はチートという名の策として色々の問題を解決出来る。

 そもそも魔法は感じ取れるものなのか、それとも俺には感じ取れないだけなのかは分からない。

 ただ転移魔法を使った後、mpはこっそり使われた感はある。

 結構な消費数だな、調べたら全部持っていかれた。

 今の俺はlv70の賢者で、聖剣のmp2倍効果と魔道書の+100はないけど。

 この「転移・魔法の都ランディア」は賢者lv40そこそこで取得出来るスキルだから、案外転移系の魔法そのものは全mp消費するかもしれない。

 そして気になる転移先は、幾つ細い塔で組み立ててる、塔そのものは大きくない。

 5メートルから10メートルぐらい不規則の高さで、塔の上にそれぞれ淡い青色の球体が光ってる。

 「その球体に、凄まじマナの流れを感じる。素晴らしい!」などの感想は浮かばない。

 でもこいつの正体は転移魔法の装置だと想像できる。

 そして自分は今、多分建物の中に。宮殿というか、高級ホテルのロビーのような場所、大きいし寂しい。

 

 「二人だけか。」

 

 勝手な想像だけど、転移先は街中の大広場とか、あるいは賢者達のたまり場など、そういう賑やかな場所かと想定したが。

 しかし案外こんな寂しい場所だ。でもこれはこれでいい、多くの人間に疑わずに済む、後この2人は俺の詮索しないならパーフェクト。

 奥にいる二人、一人は穏やかの筋肉質の中年おっさん、多分人間。彼は、こっちを見ていない。よし1人クリア。

 そのおっさんの隣の椅子で偉そうに座ってるのは、金髪ロングのエルフ美少女。

 長い紺白いのロープを着用して、左手には高そうな銀色の杖。偉そうだけど、威厳はあんまり感じない。

 むしろ女子高生がさ●りさんのコスプレをしてる感ある。

 顔は、女神様セラちゃんと竜神様ヘレナほどではないが、確実に美少女、しかもエルフ!

 そしてスタイルがいい!生前愛用のサイトの作品では、エルフは重装備と軽装備の2パターンがある。

 どれもまあ素晴らしいけど。

 でもこの世界ではエルフの重装備装着可能に、感謝!

 

 「カリスマカリスマカリスマカリスマカリスマカリスマカリスマカリスマカリスマカリスマカリスマオレヲミロオレヲミロオレヲミロ!」

 

 多分ドラゴンのスキルツリーの一つ「ヒューマン」にあるスキル「カリスマ・人間」は常時発動するスキルで、俺はどう唱えても発動するとか、あるいは効果増加とかはしないだろう。

 しかし、目の前にエルフ美少女がいて、たとえ僅かな可能性でも、俺は諦めいない!

 見ろよ、あの寂しそうな目、哀愁漂う背中。間違いなく俺を待っている。

 まあ、哀愁漂う背中は俺の想像だけど。

 

しかし、彼女は俺のことただ一目見ただけで、「フンっ」の発してすぐ目をそらした。

 おいおいおいおい!全然役立てないですか、「カリスマ・人間」!。仕事しろ!

 貴重のsp9ptもお前に注ぎ込んだぞ!

 ほぼ竜神様の全財産だぞ!

 

 「お、落ち着け。」

 

 注目されないのは、今の俺にとって幸運かもしてない。そもそも俺は注目されて、素性とか聞かされらたまるもんじゃない。

 断じてこの世界で、初めて出会ったエルフ美少女が俺のこと振り向けなくて、ショックを受けたことなんてないだから!

 俺は諦め、黙々と出口らしき門へ向かい、出そうとする。

 一応2人を確認。

 おっさんはこっちを見てる、しかし何考えてるのは分からない。

 無視無視。

 しかしエルフの美少女も俺をガン見。

 驚いた顔で、「え?帰るの?マジ?」と言わんばかりな顔。

 いや、断じて俺の妄想ではない。本当だ。

 なるほど。結局この「カリスマ・人間」を取得した俺と話したいのか。

 参ったな、この「カリスマ・人間」を取得した俺に、とんだ厄介ことになってぜ!

 十歳にして魅力でエルフの美少女を虜にするなんて、困るな〜。

 ありがとう、カリスマ!負けるな、カリスマ!

 でも、俺のことをガン見するが、エルフの美少女は俺に話しかける気はない。

 

 「・・・?」(話かけるんじゃなかったの?)

 「・・・フン!」(お前から挨拶してこないの?)

 

 なんだかんだそんなエアー会話が流れる気がする。

 めんどくさいな、こいつ。俺から話すか。

 

 「あ、あの。お疲れ様です。」

 「疲れていない。お前は今日、いや今月初の来客だ、よく来てくれた。」

 

 えっ?ここはこのエルフの家なの?賢者みんなの転移場所じゃなかったの?

 転移先は私有地の発想は無かった。

 

 「…」

 「…」

 

 エルフはまたこっちをじっと見てる。今度のガンマン大会は俺の勝ち。

 

 「名乗れないの?」

 

 そうか、エルフさんは俺を名乗るのを待ってたんだ。

 偉そうだな、でも本当に偉い可能性はあるというか多分偉いので、これは名乗るしかないな。

 でも名乗るなら、「ナナシ」じゃ駄目よな。

 

 「僕はニーゲンカイト、カイトと呼んでください。これからよろしくお願いします。」

 

 勝手に竜神様のニーゲンヘレナ様と前世の俺の名前をアレンジした。

 

 「家名はないのか。」

 「そんな大層なものはないです。駄目でしょうか。」

 「いや、構わない。むしろその方がいい。ここに来る奴は皆堅苦しい連中だから。お前の方は新鮮で面白い。」

 

 エルフ美少女は偉そうに手を振る。

 俺は何か面白いことをする覚えはないし、逆に先の沈黙の空気が続いてる。

 このエルフ、種族柄実年齢は分からないけど、見た目15歳そこそこの子で、貫禄など微塵も感じてない。

 幼い声と変な言葉使いも変えて可愛らしい。

 本当に偉い人なの?

 

 「リティラファラ様は堅苦しい挨拶は好んでない、もっと砕けた話し方がいい。」

 

 おっさんはエルフ美少女のフォローをする。よし、エルフさんの名前ゲット。

 

 「はい、リティラファラ様。」

 「うん?」

 

 何この空気?俺は彼女のことをリティラファラ様と呼んだ後、リティラファラ様の眉はピクリ動いた。怒?

 読んちゃまずいの?

 

 「え?それともリティラ様でよろしいですか?」

 「うん、まあ、いいよ。リティラで、様もいらないよ。」

 

 大丈夫という割に。機嫌、大して治ってない。

 

 「はい、リティラさん。」

 「・・・」

 

 リティラは難しそうな表情で俺を見つめる。

 

 「ひょっとしてお前、あたしのこと知らないの?」

 

 なるほど、自分の知名度に自信有り気な彼女。俺が彼女を知らないことで怒なの?

 知らないけど、興味はある!は言えないよな。

 かといって嘘はよくないし、特に既にばれた嘘は。

 

 「は、はい。すいません。」

 

 「そ、そうか…珍しいよね。ねえ、クライブ。」

 

 リティアは「本当か?信じらんない!」の顔でおっさんを見る。

 

 「自分もリティラファラ様を知らない賢者など、初めて会うかもしれない。」

 「そ、そうなんだな。凄いな、このリティラファラ・フォン・イシェンドラを知らなくて、よくここまで賢者やってたなあ。感心した!」

 

 ところどころか、リティラさんにトゲが。

 

 「すみません。」

 

 どうやらこのリティラファラ・フォン・イシェンドラ様は賢者界では、有名らしい。

 

 「いやあ、本当に感心した。カイトと言ったな、お前は素晴らしい、気に入った!」

 

 怒る時もすっごく可愛いけど、今あなたのその口調、とても俺を気に入ったと思えないよ、リティラ様。

 

 「・・・」

 「・・・」

 「あ、あの。」

 「なにか?」

 「お邪魔でしたら、そろそろお暇したいですけど。」

 「え?ああ、うん。いいよ、構わない。また来るがよい。」

 「はい、ぜひ。」

 

 リティラは興奮を抑えて、貧乏ゆすりすら始まっている。

 クライブというおっさんの咳払いですぐやめて引き攣る笑顔に変わった。

 しかしこの空気、気まずい。

 例え美少女と話しても、気まずい時は気まずい。

 逃げたい。

 

 ちょうどその時、転移装置であろう塔のところに青い光が輝き始めた。

 光の中に背の小さい女の子が出てきた。

 年齢は俺ぐらいもしくはちょっと上、おかっぱ頭で可愛らしい。

 

 「カリスマカリスマカリスマカリスマカ!」

 「うん?」

 

 リティラ様は不審そうの目で俺を見る。

 

 「何でもないです。」

 

 転移装置の女の子はこっちを見て、いや、リティラ様を見て、目がキラッと輝いた。

 

 「も、もしかして大魔導師イシェンドラ様ですか!私、カシア王国ルグサンド・カシア将軍の長女、ミラ・カシアでございます。イシェンドラ様に合い、誠に幸甚にと存じます。今後この魔法の都ランディアに魔法活動を始めたいですが。これから是非、是非よろしくお願いします!」

 「ふん!」

 「え、え?」

 

 ミラちゃん、憧れのリティラ様に無視され、困惑する。

 しかしなんだろう、リティラ様ミラちゃんを無視したものの、明らかに機嫌がよくなってる。

 そして得意そうに俺を見る、「どうだ!」と言わんばかりの顔。

 はいはいはい、これが欲しかったんだろう。

 何が堅苦しい挨拶は好きじゃいないですか。

 

 「なんですか?」

 「いや〜別に。」

 

 そして満面の笑み。

 

 「おおおお取り込み中ですか、では私は一旦・・・」

 「構わない、こいつとの話すでに終わってる。ミラと言ったな、よく来てくれた。」

 「はい!ありがとうございます。」

 

 まあ、野次馬はよくないので、俺はクールに去るぜ。

 

 「帰るんだ。」

 

 俺が帰ろうとすると、まるで予知したみたいにリティラは冷たい声で俺を呼び止める。

 

 「駄目ですか?」

 「いや駄目ではない。」

 「・・・」

 「・・・」

 

 こいつマジでめんどくせえ。仕方なく俺は野次馬を続ける。

 

 「えっと、私はカシア王国ルグサンド・カシア将軍の長女ミラ・カシアでございます。よろしくお願いします。」

 「ニーゲンカイトです、よろしくお願いします。」

 

 見ず知らずの俺に親切に接するミラちゃん、この子は良い子だな。

 

 「して、お前。カシア将軍に嫁いだオレーナ・バトンとは。」

 「はい!母です、今はオレーナ・カシアです。母はいつもランディアに修行した頃と大戦の頃、大変イシェンドラ様にお世話になったと言ってました!そしてイシェンドラ様の力の強さと人徳の偉大さを、私に教えた。私、イシェンドラ様のことずっとずっと憧れました!」

 「ふん!」

 

 リティラは偉そうに俺を見る。はいはい、よかったな。

 

 「そうかそうか、あのバトン家の小娘も、今はもう母親ですか。あいつは最初ここに来た時も、お前みたいに堅苦しい挨拶してたな。似た母娘だ、めんどくせえ。」

 「リティラさん、人と話す時は僕の目じゃなくてちゃんと相手の目を見てください。」

 リティラはミラと話してるのに、ちょくちょく俺の方を見る。

 「して、お前はどっちに着く?やはり母親の実家で、あたしのお陰で仇から命拾いしたバトン家か?それともあたしが協力してた研究院のアラン家か?あるいはあたしの莫大の魔力に依存して、ここランディアの結界を維持するフォーレ家か?ノートリアン家じゃないよね?」

 

 説明ありがとうございます。

 偉そう俺の知らない単語を得意げに話すリティラは、途中で若干自己嫌悪を感じたか、ちょっと難しいそうな顔してた。

 嫌ならそんなアピールしなくて良いのに。

 

 「出過ぎたことかもしれませんが、クライブ様みたいにイシェンドラ様の傍に役に立ちたいです!」

 「へ〜」

 

 リティラは再度俺のところを見てくる。

 

 「何なっすか?さきから。」

 「なんでもない。いや、この小娘、いちいち大袈裟のこと言うだなって。」

 「・・・」

 「す、すみません!」

 

 ミラちゃんが謝ることではない。ていうかミラちゃんが板挟みで可哀想。

 

 「根に持ってんの?名前知らないこと?」

 「いや、何も。」

 

 リティラはまた顔を背けた。多分彼女も自分がしたことがよくないと思ってるでしょう。しかしプライドは自分の退路を塞ぐ。

 何と無くこの子拗ねやすい良い子だと思う。決して可愛いだからじゃない。しかしそんな素直じゃないリティラ、俺は容赦しない。

 

 「媚を売るやつが嫌いじゃなかったんですか?」

 「嫌いですよ。」

 「あの、その〜。すみません!」

 

 ミラちゃんはしょんぼりした顔。

 

 「え?いえ君が詫る・・・ふん、なんでもない!」

 

 そしてそれを見て一瞬取り乱したリティラ。

 

 「その子はリティラさんに敬って、リティラもすっごく嬉しそうじゃないすか。」

 「そんなことない!」

 

 おお!顔赤い。

 

 「これでいいじゃないですか、僕はこれでお暇するけど、僕に何を期待してるですか。」

 「もっと敬わてには構わないですか!」

 「はあ?!」

 

 リティラは爆発する。

 

 「あたしは凄いのよ!この魔法の都最っ強の魔導師ですよ!魔法の都四大勢力をまとめて、治外法権でランディアを魔法使いの天国に育ってたんですよ!あんたみたいのガキはこの小娘のようにどんどんあたしを敬わればいいんだよ!ピクっ!痛い!何するのよクライブ!」

 

 さきからずっと黙り込んだおっさんはリティラの頭を叩いた。

 この子、叩かれた後の涙目も可愛くて、かえてムカつく。

 

 「言い過ぎだ。」

 「うぬぬ。」

 

 リティラは頭を抱えながら、反論をしない。

 

 「すみません、リティラファラ様は四十年前の大戦以後、ずっとこの転移の間を守っていた。最近全く人が来ないからイライラしてるだけだ。どうかお許しを。」

 

 え?四十年前?さすがエルフ、四十年以上生けても見事ガキのわがままを残してる。

 

 「いえ、僕も取り乱した。リティラファラ様はこんなに凄い方だと知らなくて。」

 「ふん!痛い!」

 

 また叩かれた。

 

 「リティラ様、ごめんなさいは?」

 「え〜やだ。特にこいつには嫌。」

 「大人気ないぞ。」

 「ふん〜ゴメンナサイ。」

 

 このクライブというおっさんはどうやらこの女の轡をしっかり掴んでるみたい。

 もしこのリティラは賢者の中で相当偉い人、そう、●郎と例えるなら。

 ルーキーの野球選手である俺は●郎を知らない、これは確かに失礼かもしれない。

 

 「僕も君達くらいの年齢でリティラ様とこの転移の間に出会った。懐かしいな。リティラ様はこうですが、根はいい人だ、というか子供だ。どうかお嫌いにならないでください。」

 「き、嫌いなんてとんでもない!」

 「まあ、僕も美少女と対立することは避ける方針だ。」

 

 嫌いじゃない、むしろ好き。

 

 「な、何よ!」

 

 口説いセルフじゃないのにリティラは勝手に顔を赤くしてる。これだからチョロインは。

 

 「ははは、君は面白いな。ここに働く二十年、リティラファラ様に対してそんな接し方する奴居なかったよ。察するに君は伝統的に魔法の勉強をしてないから、リティラファラ様とこの魔法の都の事情も知らないよな。君の師匠は?どこの出身か?」

 

 伝統的に魔法の勉強する奴みんなリティラを知ってる。お前本当に●郎かよ。

 ていうか、なんかいきなり俺の詮索をしてない?

 

 「ぼくのことはいいから、先にこのミラさんの要件を済ましてください。これ以上彼女の挨拶を邪魔することはできまい。」

 

 俺は真顔で話を逸らした。

 

 「そ、そんなことないです!」

 「それもそうだな、悪かったな。」

 「い、いいえ!イシェンドラ様の高弟、そして代理人のクライブ様に謝れるなんて、とんでもないです。」

 そして、ミラちゃんはリティラの面接二回戦に突入する。


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