表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/21

16 ぽっぽ

 グリフォンを掴んでるまま、今日二度目の隠れ家に到着した。

 ちょっとした交通事故もあった。

 無事戦利品のグリフォンも手に入れた。

 

 「厄介なものを拾ったな。」

 

 正直こいつをどうするか分からない。

 返したい気持ちは山々だけど、どうやって返す?

 

 「シャルロット様、落し物のグリフォンです。」

 「あらありがとう。ところでなんでガキのお前がグリフォン持ってんのよ。」

 

 「小さき人間よ!貴様、忘れものだ!」

 「あ、ありがとうございます!ドラゴン様、私と後ろ十数名の隊員は、絶対あなたのこと他言無用です!」

 

 うん、無理だな。

 そう考えて、飼い猫のヘレナは迎えに来た。

 そして可愛い飼い猫は、泣いていた。

 うちの猫はあんまり泣けないのに。

 昨日飼ったばっかなんですけど。

 でも昨日泣いてないのに今日泣くなんて、不思議だ。

 いや、泣いていたとも言えないかもしれない、でも涙目になってるのは確かだ。

 誰だ!うちの子をいじめたのは!

 しかし、クールのヘレナが泣くとか、あんまり想像出来ません。

 一体何があった?

 

 「どう、どうしたヘレナ。何があった?」

 

 まさか竜血騎士だから、ひょっとして俺のピンチを察して泣いてとかじゃないよね。

 ご主人様がピンチなのに、私は何も出来なくなんて。

 いやいや、そもそもさっきのあれ、ピンチか?

 ほぼノーダメだけどね。

 

 「いえ、泣いてはいません。動揺、ショックをしていただけ。」

 

 ヘレナは指で涙を拭き、ちょっと鼻を吸った。

 あのヘレナは、こんな可憐な姿に。

 そして彼女は俺が掴んでるグリフォンをガン見。

 興味あるでしょうか。

 俺は一応人間に変幻。

 

 「ショックってなんだろう?ヘレナ。」

 「その、カイトからの防具が揃ったので、せっかくだから、セラと軽く冒険と探索していました。」

 「おお、凄い魔物にあった?」

 

 でもここの魔物、確か風奏者の気配探知lv2で感知出来るlv40以下の魔物しかない。

 月光暗殺狼なら納得はするけど。

 でも二人ともlv1だよね、やはりちょっと厳しいか?

 

 「いえ、魔物は大したことありません。ただセラは…」

 

 lv1なのにちゃんと高レベルの魔物を倒せるか。

 竜血騎士のお陰かな。

 未だ竜血騎士のステータス見てないけど。

 

 「セラはどうした?」

 

 セラに何かあったとは思いません。

 ていうかヘレナの後ろに何かの串焼きを食べている。

 てことはセラは何かやらかした?

 にしても、なんの焼き物だろうそれ。

 なんか白い。

 

 「セラは、虫を。」

 

 ヘレナ、また涙目になってる。

 確かに泣いてはいない。

 でもかなりのショックだ。

 

 「泣くつもりはありません、ただショックで、涙が勝手に。」

 

 分かる、分かる。

 俺だって

 

 「あれ、虫…」

 

 俺の脳みそも固まった。

 

 「セラ、お前、なんちゅうものを食べてるの!」

 「あ!カイト様、おかえり!」

 

 セラは俺を見て、無邪気に虫の串焼きを頬張りながら、向かって来る。

 

 「だからお前何を。」

 「葛根の中の虫を。」

 

 葛根、虫?

 葛根ってなんだ?

 漢方か?

 いやどうでもいい。

 問題は虫。

 虫だよなあれ、なんかの幼虫。

 確かに元の世界も食べた奴いるかもしれないが。

 無理、俺には無理。

 食べるのも、いや見るのも無理。

 

 「焼いて食べると美味しいですよ、油を塗ったらさらに風味が湧く。」

 

 犬飼ったことないけど、もし飼い犬は虫くぉ食べたら普通どうする?

 しつけ?

 でもセラは人間だ。

 殴っちゃダメ。

 俺に美少女を殴るのは無理だ。

 

 「200個ぐらいしかないのよ、今度はもっと集めなきゃ。食い足りないですよ。」

 「2、百。」

 

 数を聞いて、またヘレナは震えている。

 俺も初めて、「こいつ手に負えない」という感想が浮かぶ。

 出会って2日目だけど。

 なるほど、虫でも食える生命力だから、生き残るのもおかしくはない。

 

 「ヘレナ、お前セラを阻止しなかったのか?」

 「い、いいえ。虫を食べる種族も、あります。私が阻止する理由なんて。」

 

 ヘレナは引きつった顔で俺を見る。

 これは、助けを求む目だ。

 こいつ何とかしてくれ、と。

 

 「犬と猫は大して変わらないと思うけどな。」

 「ひどい!私は狼ですぅ!」

 

 黙れ!

 狼なら狼肉食べんな。

 でも俺だって他人の食生活を言う筋合いはない。

 ごめん、ヘレナ!

 しかしヘレナ、泣くことはないだろう。

 お前最強の戦士竜血騎士じゃないの?

 虫食べたぐらいで泣くか?

 やはり、ヘレナも元は普通の女の子でした。

 

 「そういえば、カイト様、これは。」

 

 沈黙の後、やっと我に返ったヘレナは、話をグリフォンにふれた。

 涙目のままだが、さっきからずっとグリフォンガン見したのが分かったいる。

 どうやら興味ありそうだ。

 

 「グリフォンではないですか!凄い!」

 

 セラもやっとグリフォンが発見して、興奮してた。

 食べるつもりじゃないよね。

 今はセラの食習慣、全く使用していない。

 

 「おお!凄い!」

 

 そしてグリフォンを回って観察する。

 

 「何を餌にする?肉ですか?」

 

 よかった。食う気ではない。

 

 「ちょっとグリフォン隊にドラゴンの姿を見られた、こっち来る途中。」

 

 俺は事の顛末を二人に話す。

 セラは聞いていない。

 

 「随分と、早く見られましたね。でも仕方ありません、いずれはバレます。」

 

 バレるか。

 俺は考えて無かったなぁ。

 詰めが甘いよね。

 

 「この子大丈夫?私が治してやろうか?今日レベルアップしたのよ!」

 

 セラは虫の串焼きを掴んだまま、グリフォンに乗った。

 グルフォンめ。

 

 「いや、まず落ち着け。こいつが起きたら何をするかも分からない。」

 「ヒール!」

 

 聞いてない。

 ヒールにかけられたグリフォンは、目覚めた。

 

 「おお!さすが私!」

 

 セラは得意気に俺たちにドヤ顔。

 

 「馬鹿、降りろ!」

 

 そしてグリフォンは走りだした。

 

 「え?えっ!ええええ〜」

 

 目覚めたグリフォンは、迷わず俺達から離れ、助走して一気に羽ばたいた。

 飼い犬を連れて。

 

 「あの馬鹿。」

 

 俺は慌ててドラゴンに戻ろうとする。

 

 「それには及びません。」

 

 ヘレナは俺の前を立ち、足を深く踏み込んで、構えた。

 え?ヘレナって、ドラゴンになれるの?

 そして一気に飛び出した、生身で。

 グリフォンへ一直線。

 

 「嘘。」

 

 なんと言う身体能力。

 これが竜血騎士。

 少年漫画でしか見たことないジャンプ力。

 そしてヘレナはセラの後ろに乗り、グリフォンの頭の後ろの羽を掴んだ。

 

 「ハっ!」の一言を発せた。

 それを聞いたグリフォンはすぐ落ち着いて、やがてセラとヘレナを乗せて、戻ってきた。

 

 「しししし、死ぬかと思った。」

 

 セラはいつもふざけた態度じゃなく、真顔で言った。

 殴りたい、こいつ。

 

 「よくやった、ヘレナ。」

 

 とりあえずファインプレーの飼い猫を褒める。

 

 「はい、これは竜血騎士生まれつきの躾けの能力です。」

 

 そうですか。

 俺はその身体能力が気になるね。

 俺じゃ絶対できない。

 

 「その躾けスキルでどうにかこの馬鹿犬をしてくれないかな。」

 「馬鹿狼ですよ。」

 

 飼い犬はすぐ俺に反論を。

 こいつの反省は3秒ぐらいしかないみたい。

 

 「痛い!」

 

 ヘレナは軽くセラの頭を叩く。

 

 「降りて。」

 「はい〜。」

 

 懲りないセラは大人しくグリフォンから降り。

 

 「お前は今日からぽっぽ。」

 

 勝手に名前をつけた。

 

 「ぽっぽのことなんですが。」

 

 ヘレナも突然このグリフォン、ぽっぽで呼んでいた。

 いつ結論した?主人である俺の意見を聞こうよ。

 ていうか。

 

 「セラへの罰はこれきり?」

 「はい、きっと反省しているでしょう。」

 

 いやいや、刑が軽すぎだよ。

 当のセラはウズラのように大人しくヘレナの後ろに立つ。

 しょうがない、話を戻る。

 

 「このグリフォンのことだけど、やはり返した方がいいか?」

 

 「ぽっぽのことですね。返すと言っても、カイト様が直々この子を返すわけにはいかないでしょう。」

 

 「この子」と言う時、グリフォンは頭をヘレナの手のところへ伸ばす。

 躾け早いなこいつ。

 お前の主人はどうした。

 そしてヘレナ、およびさっきウズラのように大人しくしてるヘレナは、こいつの頭を撫でる。

 

 「ドラゴンの姿では、ダメかな。」

 

 シュミレーションもしたんだけど。

 

 「カイト様は直接交渉するつもりなら。」

 「ところで、俺のドラゴンの声と人間の声、違うよね。」

 「はい、竜と竜血騎士以外は分からない。」

 

 なに?ドラゴンなら分かるってこと?

 新情報だ。

 人間の前に黙っていてよかった。

 もし同類が変幻を使ったらバレた。

 だって種族隠蔽・古竜、取りやすいスキルだからな。

 

 「俺は直接交渉、回避したいなぁ。」

 

 女神との約束がある。

 

 「やはりヘレナ、お前に任せるよ。」

 「はい。やはり返すですね。」

 

 ヘレナは無表情のまま、グリフォンを撫でる。

 手つきが優しい、代わりたい、グリフォンと。

 そしてただただ、俺を見る。

 セラの「ジー」は無視した。

 

 「欲しい?」

 「いいえ。」

 

 即答である。

 しかし猫耳動いたのは見えた。

 グリフォンか。

 グリフォンのどこがいいだろうか。

 男の子なら分かるけど、ヘレナ、お前は虫を見て泣いた可憐な美少女ではないのか?

 

 「欲しくはないですが、ただ、竜血騎士の躾けを受けた魔物は、次の主人は竜血騎士の実力以上でないと、ぽっぽの躾けは出来ません。」

 「そうか。」

 

 また新情報だ。

 

 「セラが乗ってたので、やむなく、躾けました。」

 

 はいはいはい、言い訳しなくても。

 

 「ヘレナ、お前レベルは幾つ?」

 「今日でlv4になりました。」

 「低いではないか?」

 「いいえ、竜血騎士なので。」

 「はぁあ。」

 

 竜血騎士は凄い。

 俺にない竜の知恵があるからなぁ。

 どうやら、ヘレナはこのグリフォン、気に入ったみたい。

 女神の聖剣を与えた時こいつ全然嬉しくないだけど、たかがグリフォン、猫耳美少女に乗っかって、欲しがられるなんて。

 生意気な。

 

 「やはり、グリフォンは今後使うのか?」

 「はい、ちょうど私もセラも移動に難しさを感じました。ぽっぽがあれば、迷宮も行けます。」

 「そうか。」

 「でも、相手は魔法の都のグリフォン隊だよ、空飛んでたら、狙わない?」

 

 お前今朝いっただろう。

 

 「そこは交渉です。むこうはすでにカイト様の正体を見たから、この間私の話が実行する時でしょう。」

 

 昨日の話だけどな。

 ドラゴンの存在を隠すより、いっそ公開して利用するだっけ?

 でもいざとなるとちょっと心細いな。

 そしてヘレナ、lv4じゃん。

 俺はドラゴンlv1だけど。

 返り討ちされない?

 

 「ちょっとヘレナ、ステータスを見せてもらうよ。」

 「はい。」

 

  名前:ヘレナ 年齢:15歳 種族:猫人族 職業: 竜血騎士 レベル:4

  HP:1399

  MP:928

  腕力:928

  器用:290

  丈夫:880

  素早:290

  知力:928

  精神:2026

 

  物理クリティカル:17%

  魔法クリティカル:17%

  火耐性:250

  水耐性:250

  土耐性:250

  風耐性:250

  光耐性:250

  闇耐性:250

  治癒耐性:-150

 

 強い。

 何これ、俺は思わず賢者の今自分のステータスを見る。

 俺の知力は今1570。

 でも今はlv99、人間変幻lv4だから。

 なのにヘレナの知力は928。

 lv4なのに。

 全体のステータスは俺は上だが、ポテンシャル的俺は負けている。

 人間のほうなら

 

 「強い。」

 「聖剣がありますので。」

 「あ、そうか、聖剣が。」

 

 聖剣は幾つかの能力を2倍、耐性を100プラスか。

 にしても竜血騎士、強くない?

 竜の俺は高いステータス持つけど聖剣を装備できない。

 けどヘレナは装備出来る。

 セラのステータス、最高は500ぐらい。

 それも装備のおかげで。

 同じlv4差がありすぎる。

 

 「この強さなら、まぁ、出来なくもないか。」

 「安心してください。あくまで友好の交渉なので。」

 「そうか。任せたよ。」

 

 でも、ちょっと心配だな。

 虫を見て泣く女の子なのに。

 交渉なんて出来るだろう。

 

 「近日、出来るだけレベルアップしてくれ。」

 「はい。」

 「交渉する前に、絶対こいつを」

 「ぽっぽです!」

 

 セラは訂正した。

 

 「ぽっぽを乗らない。」

 「分かりました。」

 「レベルは10まで行けたら、交渉を始まるように。その間、俺はランディアに情報を探る。」

 「分かりました。」

 「カイト様、ぽっぽの餌の肉、もっと買ってくださいよ。」

 「ああっ」

 

 こうして、俺は可愛い飼い猫と飼い犬に、もう一匹鳥を飼うことになりました。

 グリフォン隊のアカーシャよ、すまない!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ