14 ミールドワーフ
「あ、あの、今日の昼は魔法の都の名物、ラムの丸焼きでいかがでしょう!」
「は、はい。いいと思います。」
ということで、異世界で四度目の飯を満喫してます。
察しの通り、四度目の焼肉です。
でも不思議に体の拒絶感は感じない。
逆に怖い。
ドラゴンはいくら食べても満腹にはならないだっけ。
実際先はヤギの肋肉食ったし。
焼肉四度被りと、羊肉二度被り。
「今朝はアラン家の挨拶が済みました。午後はフォーレ家です。明日のノートリアン家の挨拶を済ませたらやって解放ですよ。」
「お疲れ様でした。」
聞いてもしんどそうなスケジュールだ。
「でも、もしカイトくんが私とその、あの、でー、ランディア見物なら。ちょっとスケジュールを絞っても。」
行くんだ結局。
でも。
「フォーレ家って何を管理する勢力なの?」
「魔法の都ランディアの結界を維持する組織ですよ。カイトくん、魔法の都で生活するならこれぐらい覚えないと駄目ですよ。」
「そうですね、いろいろ勉強不足です。」
結界か。
「その、グリフォン隊ってフォーレ家の管轄下ですか?」
「そうですね、よくご存知ですね。フォーレ家の役目が分からないのに。やはり男の子はそういうカコイイものが憧れだったか。」
やはりかっこいいだ、グリフォン隊。
「男の子の話だけど、ミラさんは「魔王軍実力ランキングTOP10」って知ってますか?」
「フルネームは「大戦時魔王軍実力ランキングTOP10」ですね。読んだことないです。最近流行してきたですね。一体どなたが描いたでしょうか。今朝アラン家に挨拶するとき、その本を読んだ少年がいましたよ。結構魔法の都の少年達の中流行してるとか言いましたし。」
やはりか。
リティラの中、俺はそこら中の厨二ガキと同じレベルか。
ちくしょう、読んでないのに濡れ衣を。
とりあえず、トップテンを読みたいなら、アラン家を当たるですね。
「すみません、話を逸らしました。その「赤い悪魔」?やはりフォーレ家が管理してるんですね。」
「はい。「赤い悪魔」、確かにそう呼ばれていますね。」
「では午後、一緒にフォーレに挨拶しに行きませんか?」
「え?挨拶しに行くんですか?カイトくんはフォーレ家を選んだですか?」
ミラちゃん、大ショック。
目が死んでる。
「そうか、憧れのグリフォン隊に入り、空の中と美人のミールドワーフ族の女の子といちゃいちゃするですね。」
「いえいえとんでもない、実はかくかくしかじか。」
今朝のことを話す。
それにしてもミラちゃん、なんという発想だ。
「な、なるほど。取れ乱れました。」
ミラちゃんはやっと落ち着いた。
「しかし私としたことは、金策でフォーレ家に遅れを取ったとは。」
「いや、別に深く関わるつもりじゃ。」
「カイトくん、今後魔法の素材を売るとき、ぜひ私のとこまで行ってくださいね。」
「はい、分かりました。」
四大勢力の人材争いはガチだな。
でもちょっとグリフォン隊の女の子が気になるなぁ。
会ってもいないのに、すでにヘレナセラとミラに脅威が感じさせるのは。
きっととんでもない美少女がいるに違いない。
その後昼飯を済まして、俺とミラは、防衛区の役所まで来た。
そこにいる建築は、それは、誠に。
「赤い。」
「ミールドワーフの国は、真っ赤な赤色が好んでいます。彼らの三原色は赤、火薬と自由ですね。」
「後半色じゃない。」
「とりあえずそんな種族なんです。」
どんな種族だよ、物騒としか思えない。
「つまり、ここにいるみんな全員ドワーフなの?」
「違います。魔法の都で種族をこだわっては、他の三家にあっという間に人材取られるよ。ただここの上層部というか、族長というか。代々ミールドワーフですね。」
「なるほど。」
「あくまで噂なんですが、ここに来る族長は大体ミールドワーフ王家の争いで負けた方。つまり魔法の都まで追放だそうです。」
「代々もですか?」
「ミールドワーフならありえる話ですね。」
「あ、そういえば。」
思い出した、ミールドワーフは全員銃を持っている物騒な米国人だった。
喋る間に、門番らしき男は接待してくれた。
若い男。人間だった。服が赤い。
いや、ミールドワーフはほぼ人間だというから、まだ結論は。
確か体がとても細くて、そして。
あった、腰に綺麗な小型鉄砲が。
こいつミールドワーフだな。
「カシア王国ルグサンド・カシア将軍の長女ミラ・カシアです。」
「てことはお前うちじゃなくてバトン家につくのね、だるいワ。で、お前は?」
「防具屋の親父さんに、これをグリフォン組の方に渡してくれと。」
「確かに。まぁ、とりあえず上がって。族長今超暇だからすぐ会える。まぁおっさんに会えてもなぁ。あははっ」
あははじゃないよ。
なんだこいつ。
「そ、そうなんですか。」
ミラちゃんもさすがに引いた。
「そうよ、新しい族長が来たよ、族長はほったらかしてんの。やることなくて超暇なのよ。」
軽いなこいつ。
いい加減にしろ。
族長に聞かれたらお前クビだぞ?
いや前族長かもしれないから大丈夫的なノリ?
にしても不謹慎だな。
「ミールドワーフってそういう感じなんですか?」
小声でミラに確認する。
「私もミールドワーフはあんまり接触したことないです。でもそういう豪放自由な噂は確かに聞いたことあります。でもさすがにこれは厳しいです。」
銃と自由ね。
大体わかった。
男は俺達を役所の中まで案内して、そして「族長室」という場所まで連れて来た。
そしてドアを開けた。
ノックもせずに。
「こいつは族長だ。まぁ後一週間国に帰るけど。」
こここ、こいつだと。
しかも目の前に。
中のガリガリおっさんに指を指した。
おっさん、どんだけ人望ないのよ。
ミラちゃんは?ミラちゃん的にこれありなの?
「え?」
ミラちゃん、男の軽い態度にフリーズ。
貴族生まれのミラちゃんには刺激が大きいようだ。
「言っとくが俺は国に帰ったらすぐ王子になる。お前みたいな軽い口も聞けなくなるけどな。」
おっさんはなんとも思えないみたい。
でも若干脅し混じってるような。
「ちげえねえ、俺帰らんけどなぁ。てなわけで、族長頼んだぞ。」
「ああ。」
おいおいおっさん、お前気にしないの?
あいつ殺さないの?
「その、私はカシア王国ルグサンド・カシア将軍の長女ミラ・カシアでございます。フォーレ家の族長、大戦の英雄、魔弾のプリンス、マグニ・フォーレ様にお会い出来、光栄に思います!」
「素材売りのカイトです。お、同じく光栄です。」
このおっさん、大戦の英雄かよ。
にしても人望ない?
かえて悲しいよ。
「先の野郎の無礼を許してくれ。でも君らももっと我々ミールドワーフと接触すれば分かると思うが。ミールドワーフは大体あんな感じだ。」
「はぁあ。」
あんな感じか。
よくそんな職場で働い続けてるな、おっさん。
「そして魔法の都のミールドワーフは、もっとあれだ。国王の管轄外で、自分が国防を任せたランディアでは、調子乗ったみんなはあんな感じになってる。」
「それは、大変ですね。」
「忘れもしない、ここに族長を継ぐ初めての日。みんなに呼び捨てにされるのを。」
「族長ですか?」
「マグニ、マグ、マニ、マグマニとかだ。」
「それはお気の毒ですね。」
やはり気にしてんじゃないか、おっさん。
「どうだ、フォーレ家は自由なところですよ。我々の傘下に参加しないか。」
なるほど、人望が無いのも無理もない。
こんなおっさん、死ねばいいのに。
「…」
「…」
「そうか、やはり人望のない俺のところは。でもまぁ、次期族長は違う。彼女に会えて見てください。俺なんか。」
なんと言う哀れな大戦の英雄。
「次期族長女の子ですか?」
これは重要情報だ。
でもなんかミラちゃんに睨まれた。
「ああ、俺の妹だ。41離れてるけどね。」
こいつ王子だとすると。
おっさんの親父は、凄いだな。
「国王様、すごいですね。」
「あいつは、まぁ、元気なジジイだな。」
マグニ、お前も十分失礼だぞ。
「妹は人気があるだ。可愛くて、才能もある。我々一族は適当だが、可愛い奴が自然に尊敬する。だから妹はすでにここの実権を掌握した。」
「現金な一族だな。」
「あいつは俺の兄貴と継承争いで一旦ここで追放だけど、どうやら五年内再起する予定かなんとか。」
「え?言っていいのそんなこと?」
俺は慌ててミラちゃんに確認。
ミラ、またフリーズ。
「他人であるこの俺も知ってることだ、もっと他人にばれても大して変わらないだろう。」
「そういうものですか。」
「いや、そんなことは。」
決めた、今後内密なことはミールドワーフという種族に絶対言わない。
「でもまぁ、いいことだ。人望があるのは。俺は歳だ。ここに残る唯一の未練は、リティラファナ様の美しい顔が見れないことぐらいだ。」
「それは辛いですね。」
おっさん、しょうもないこと考えるな。
リティラ様は俺が面倒を見る。
「おお、分かるのか!俺はもう一年リティラファナ様に会いませんでしたよ。」
「リティラ様は上層部のマグニさんとか普段会えないか?」
「会えないよ!全部あの野郎、クライブがやってるんだよ!」
なるほど、リティラ様、厄介ことクライブのおっさんに丸投げだな。
リティラレベルの美少女と毎日会うから、これぐらいの苦労は当然だ。
「そ、そうなんですか。」
「それはお気の毒に。」
「君達、ついこの間リティラファナ様とお会い出来たんですね。いいなあ。ああ、あの美しい顔を。せめて帰る時…」
「普段リティラ様のとこに行くのはまずいですか?」
俺は普通に行けたけどな。
「それはまずいだろう。リティラファナ様は多忙につきます。あんな方を邪魔するなんて、心細いです。」
「うんうん!」
「そ、そうですか。」
それなら昨日の俺は何なんだ。
「聞いたぞ!糸を売るやつがいるって。兄上、お邪魔しまーす。」
透き通った声の主は、真っ赤な女の子。
真っ赤な髪、真っ赤な瞳、真っ赤なスーツとスカート。
真っ赤な銃とレイピア。
熱情そのものみたいな女の子は、俺の方を見る。
「で、誰が糸を売る奴ですか。」
「僕ですけど。」
「うん、ガキですね。」
ここにきて初めてガキ呼ばわりされた。
まぁガキですけど。
「でも魔法の糸あるでしょう。あったらガキでもなんでもいい。今あたしの旗を作ろうとするだよ、魔法の糸。せめて兄上の旗より質のいい奴に作って貰わないと。」
やめて!本人の前でやめて!
「はい。180個ぐらいあります。」
「全部よこして。」
女の子は金貨2枚を俺の手の中に。
おお、指先いい感触の柔らかさ。
「ふふん、可愛い反応ね。」
そして後ろミラちゃんからの涼しさ。
とりあえず糸を全部出した。
「多いね。数えるのをめんどくさい。」
「200個ぐらいあるので。」
「ルード!早く来い!」
女の子は大声を出し、その後30代の男が現した。
「糸数えて。あたし、任務あるから。」
「はい、シャルロットお嬢様。こちらも済み次第向かいます。」
「ではでは。」
シャルロットは俺とミラに手を軽く振ったはすぐ行ってしまった。
赤い風のように。
もしかして、カリスマは本当に念じて発動するものなのか。
そんな馬鹿な。
この子来ると去るのはあんまりにも早いだから、持って行かれた。
今でも実験しようか?
いや、今目の前におっさんしかないから実験はやめておこう。
「まぁ、気にしなで。」
マグニのおっさんは俺たちを慰める。
「いえいえ。」
ちょっとしか落ち込んでないよ。
美少女だからあんなことは許されるんですよ。
その後、数を確認したルードのおっさんにお釣りの銀貨を返した後、俺とミラはここを去った。
「なんかすごいですね、ミールドワーフ族。」
役所を出たミラちゃんは素直に感想をいう。
「ミラさん、これからどうします?」
「そうですね、やはりバトン家に戻りますね。ちょっと疲れちゃった。カイトくんも一緒にどうですか?」
「僕はいいですよ。まだ落ち着いたら。」
「そうですね、では!」
ミラと別れた後、俺は念話を使った。
「ヘレナか?」
「はい。」
「これからそっちに向かう。野菜とか持ってくる。そしてその後迷宮でも行くつもりだ。大丈夫だよな。」
「はい、私はともかく。セラの戦闘力は上げるべきです。」
「では1時間半後な。」
「はい。」
そして俺は買い物を済み、魔法の都を出た。
森の中ドラゴンになり、隠れ家へ向かう。
当時の僕は知らなかった。
赤い風は、すでに巻いていることを。