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11 大豚足

 夜、体感で多分九時すぎる。

 新たに召喚された「林古屋敷」の中に、猫耳の少女ヘレナと犬耳の少女セラに見守られて。

 

 「カイト様、何があったら私に念話してください。」

 

 ヘレナは俺の帰り際にいきなりのテレパシー宣言。

 

 「えっ?出来るの?」

 「出来ます。竜血騎士だから。」

 「俺が何をやってるのも、分かる?」

 「いいえ、全てカイト様の主観意識で出来ます。」

 「そ、そうですか。」

 

 よかった。

 猫耳美少女からプライベートを守られた。

 

 「え〜ずるい。私もカイト様と繋がりたい。」

 

 繋がりたいだと?!

 

 「二人直接は出来ませんが、私に通じては、三人の会話は可能です。」

 

 す、3ですか。

 しかし何そのス●イプ。

 

 とりあえず俺は二度目の「転移魔法・魔法の都」を発動した。

 今日二度目の転移の間。

 昼間椅子に偉そうに座るエルフ美少女も確かに、まだそこに。

 クライブのおっさんはいない。

 まぁ、深夜の乙女の部屋に入り込むなんて、おっさんとしてはあるまじき行為。

 

 「こ、こんばんは。リティラさん。」

 「・・・」

 

 リティラはジト目で俺を見る。

 沈黙の中、俺の魔光板は鳴った。

 この音、紛れなく、ビーパーね。

 そしてビーパーはずっと鳴らしている。

 ミラちゃんに失礼かもしれないけど、ちょっとうるさい。

 にしても夜遅く他人の部屋を邪魔して、ビーパー鳴きっぱなしなんて。

 かといって、勝手に内容を確認するのもまた失礼ですね。

 うん、どうしよう。

 

 「見たら。」

 「す、すみません。」

 

 お言葉に甘えて、俺は魔光板を開く。

 流石に「板」と呼ばれることがあって、ビーパーよりずっと見れる文字数が確実に多い。

 

 ①お陰様で、母の実家への挨拶は済みました。どこかよって行きますか?

 ②よかったら夕食、バトン家で食べませんか?

 ③嫌でしたら、二人きりでもいいですよ。

 ④ごめんなさい、返事がないので、先に夕食をすませました。

 ⑤今日はずっと忙しいですが、明日の予定は?

 ⑥今日はお疲れ様でした。

 

 ざっと六通か。

 俺が外にいる間、チェックしそこねた。

 デートのチャンス。

 

 「魔光板って、すぐ返事したほうがいいだっけ。」

 「ひ・ま、であればね。」

 

 リティラは相変わらずジト目で俺を見る。

 これは帰ったら返信するほうがいいか。

 

 「す、すみません。」

 「ふん。ところでお前、なんでいきなりそんな多数の受信貰ったの?お前賢者の知り合い少ないと見える。」

 「え?あ、えっと、ある人物が一度複数のメールを送ったかもしれない。」

 

 ごめん、ミラ。濡れ衣だ。

 今度賢者に戻る時、ちゃんとメールを確認するから移動する。

 

 「メール?メッセージのことか。バトン家の娘だな、見た目よらず、積極的な小娘ではないか。」

 「はぁ〜。」

 「ところでお前、そろそろなんでこんな夜に、宿も決めまずに乙女の部屋を訪ねるのを、説明してもらおう。」

 

 乙女(年齢四桁)でけどね。

 

 「その、調子乗って、迷宮に入りましたので。出たら、こんな時間に。」

 「ふん?怪しいな。でもお前、本当に挨拶に行かなかったんだね。まぁ、あんな連中に挨拶もロクなことないから。」

 「では、そろそろ僕は。」

 「宿か。」

 「はい。」

 

 なに、俺を泊まるの?

 どうしても言うなら、お言葉に甘えても。

 

 「お前、調子乗って迷宮に言ったと言ったな。察するに、お前は身分証明を発行してないだろう。宿に入りたくも入れさせないな。」

 「え?ところで今から発行は?」

 「朝になるな。」

 

 そうか、やっば俺を泊まるのか?

 大魔導師リティラファラの魔の手にこの可愛いのが評判の俺が、逃れなれないか。

 参ったなww。

 

 「これをあげよう、私が作った杖だ。」

 

 リティラは超ミニのおもちゃサイズのスティックを俺に投げ捨てた。

 

 「リティラ、鍛冶も出来ろんですか?」

 「ああ?杖を作るのは杖職人だよ。」

 「そうですか。二つの職業をお持ちですか?」

 「職業は一人一つだ、でもほかの職業のスキルも習得出来る。時間がかかるけどな。」

 

 なるほど、ほかの職業のスキルも習得出来る。そんなこともあるか。

 いいこと聞いた。

 でも時間掛かりそうだな。

 リティラ、ヒマそうだしな。

 

 「この杖は凄いですか?」

 「ステータスは大したものではない。でも身分証明の発行の代わりにはなる。これで宿に入る。」

 「ええ〜、俺を泊まるじゃないですか。」

 「ふん!乙女の部屋に一晩過ごす気が。そんなわけ、いや、そうだ。お前なら。」

 

 リティラは何を思い浮かんだようで、ロープの内側に金貨を取り出した。

 え?なに?あたしはそんなやすい男ではないぞ!

 

 「ぼ、僕冗談のつもりでして。は、初めては好きなあいてと、」

 「お前、これを酒のつまみを買ってくれ!あたしはここ出れないから。」

 

 リティラめ、嬉しい誤解を勘違いされやがて。

 

 「釣りはお前が持つがいい。」

 

 お使いですね。

 しぶしぶ転移の間を出た俺は、この辺の串焼きを大量購入して、リティラの酒の相手にされた。

 

 「お前、酒を飲まんか。」

 「流石にこの年では。」

 「ちっ、つまんない男だ。」

 

 でもまぁ、ちょうどいいか。

 リティラの酒気分で、聞きたいこともある。

 

 「リティラさんって、魔将クレオラフスを存じてますか?」

 「三魔将の一人ね。」

 

 俺は怪しめる覚悟は出来たが、リティラは「魔将クレオラフス」どうでも思えないみたい。

 まさか、しょぼい相手だった?

 

 「魔将リマンドも?」

 「それも三魔将の一人ね。」

 「はぁ〜」

 

 なんつうか、反応が俺の予想とは全然違う。

 

 「なに、乗って欲しいの?魔将の話題?」

 

 リティラは豪快に串焼きを貪る。

 

 「お前はきっとあの「大戦時魔王軍実力ランキングTOP10」の本を見て、ワクワクしてんだろう。そしてあいつらと戦ったことあるあたしに確認しに来たんだろう。お前ぐらいの歳の少年は、みんなそういうの好きだな。ガキだな。」

 

 違う!

 俺はもっと真剣な話を。

 でもちょっとその「大戦時魔王軍実力ランキングTOP10」が見たい。

 まぁ、変に疑うより、ガキの厨二話に勘違いされるのがまし。

 

 「魔将クレオラフスは、リティラさんには勝てますか?」

 「お前、本当あたしのことなんも知らないな。あたしはなぁ、三魔将倒しを果たした女だからな。」

 「えっ?す、凄い。」

 

 英雄じゃん。

 

 「そう、そう。もっとあたしを褒めるのいい!」

 

 リティラは荒っぽく俺の頭を掻きまわる。

 可愛がるのも悪くないが、明らかにリティラ、酔った。

 

 「一人で倒したんですか?」

 

 リマンド(偽名)によると、魔将クレオラフスはリティラ同格かそれ以上の力を持つ。

 魔法の都の兵力に考えれば、それ以上だと思う。

 

 「まぁ、アティラと一緒だな、あたし一人じゃ無理。」

 「お姉さまですね。」

 「違う違う、アティラは姉じゃない?」

 

 え?どうして?仲悪いの?

 

 「世間はアティラをあたしの姉とされるが。あたしはアティラの叔母だ。」

 「え?」

 「確かにアティラはあたしより五つ上だけど、あたしの父はアティラの祖父だ。」

 「そういうことですね、分かりました。」

 

 でも確かにややこしいだから、この二人を姉妹にした方が覚えやすいし、宣伝にもなる。

 お互い千歳超えちゃってるし。

 でも、魔将召喚のこと、リティラにぶっちあげるのがいいのかな。

 信じてくれるのかな。

 生贄のこともあるから。

 なにより、ヘレナ達のことは知られては困る。

 これからのこともあるから。

 ここは黙る。

 

 「そういえばさ。」

 「な、なんですか。」

 

 リティラ、お前変なとこ鋭くなるんじゃないよ。

 

 「お前、ミラと魔光板交換したな。」

 「はい。」

 

 よかった。

 

 「あたしと交換してないのに。」

 「いやはや。」

 

 リティラちょっと頬っぺが膨らんでいる、かわいい。

 でも一時相当怒られた仲だから。

 

 「大体僕は当時、魔光板というスキルを習得しませんでした。」

 「えっ?」

 「その、ミラさんに教えられて、僕習得しました。」

 

 あっ、確か。spが重要かなんとかのくだりね。

 俺は鈍感系を演じた時の。

 俺は今リティラの目に、女のためspを無駄使いをした男になる。

 

 「おなごのためにわざわざね、男ってみんなレクリピア大オークの大豚足だ。」

 「なに、その例え。」

 「知らない。でも言って見たら愉快な気分になる。」

 「そうですか。」

 

 リティラ、不愉快だったのか。

 それとも酒のせいか。

 

 「よ、よかったら。リティラ様も、僕と魔光板の交換を。」

 「そしてすぐ手をあたしのとこまで伸ばす気か。しかもこういう時限ってあたしを様付けでよぶ。やはり男ってみんなレクリピア大オークの大豚足だ。」

 

 だからレクリピア大オークってなに。

 上位種のオークなの?

 

 「だ、だめですか。」

 「いいよ。」

 

 酔のせいか、リティラの顔が赤い。

 テーブルに伏せて、上目遣いで俺を見る。

 やばい、反則だ。

 でもここは一応例のアレを披露する。

 

 「リティラ様、顔赤いよ。」

 「やはり男ってみんなレクリピア大オークの大豚足だ。」

 

 看破された!

 この女、そこいらの女と違う!

 

 「ほら。」

 

 でもリティラ様は素直に彼女の魔光板を差し出す。

 

 「はい、お願いします。」

 

 これで二人目のメアドゲット。

 

 「ちなみにリティラ様、何人登録してますか?」

 「生きてる人間は、姉ちゃんにクライブ、そして大豚足ね。」

 「男みんなだったら、お姉さんと大豚足二人の間違いでは?」

 「そうね、男ってみんな大豚足ね。レクリピア大オークの。」

 

 また引っ張るか、豚足を。

 でも「姉ちゃん」?アティラ様のことですね。

 さき姪っ子って言ってなかったっけ?

 本当はアティラ様を姉さんと認識してたんだな。

 酔のせいで本音ダダ漏れ?

 でも登録者数少ないな。魔法の都の偉い人達いっぱいいるのに。

 

 結局俺は深夜まで、リティラと飲んだ。

 リティラは寝酒したから、一応寝室まで運んだ。

 いい匂いとか嗅いでないよ。

 あくまで紳士的な。

 その後無事転移の間付近の宿を取った。

 宿の旦那にステッキ見せたらちょっとびっくりされたけど。

 

 手持ちの金はまだある。

 宿を一週間の分に地図。つまみのお釣りを合わせて、宿を一週間の分ざっと金貨二枚。

 全部女の子から貰った金だ。

 人間のヒモですな。

 

 明日調べよう、「大戦時魔王軍実力ランキングTOP10」。

 どの辺に売ってるんだろう。

 そこいらの男の子の好物なら、入手するにはさほど難しくないだろう。

 あとレクリピア大オークも調べよう。

 そして魔光板を操作。

 

 「明日の午後、空いてます。昼飯でも大丈夫です。」っと

 

 「でしたら明日の昼、転移の間付近で会いましょう!」

 

 即返信だった。

 寝てないのか、ミラ。

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