00 竜神様と女神様
「お前にはドラゴンに転生して、二千年後我等一族を救ってもらう!」
長い夢を見た気がした。
17歳のあの事故からずっと頭が空っぽのまま、現実と夢のはざまで。やがて来るべき終わりを得て、俺はようやく自我の意識を感じる。
目覚めの証は大きな白亜の宮殿、そこにいた白い巨竜が俺に宣言する。
「転生できるんですか?」
竜に話しかけてみる。
「お前は丸十年の夢境を経験した人間だ。まさに我等一族の救世主にふさわしい。」
「俺十年も寝ていたのか?」
「ああ、植物人間状態って奴だな気の毒に。」
植物人間状態十年か。快楽や苦痛など感じずただただ終わりたいの十年間。俺の親もよく十年俺を世話してくれたな。不孝な息子でごめん。これから俺はドラゴンに成り、自由自在に…
「その、ドラゴン?になれるんですか?」
「そうだ。ずっとその話だが。」
「人間の俺はドラゴンに。」
「言ったはずだ、お前は夢境を見た人間だ。その精神の強さはこの神界でも通用する。君には一族を救って貰う。」
俺は何を見たんだろう。夢境?がどうやら凄いらしいです。でも精神の強さは感じないな。
にしてもドラゴンか、強そうけど異種族ところが、人外だよな。
「ええっと、竜神様でよろしいですか?」
「構わん、似た者だ。」
「見ての通りわたくし前世人間でございます、小学校からの幼馴染がいるが付き合い時間は一週間切りで植物人間。できれば人間に生まれて出直したい、勝手な創造だけど転生する世界は剣と魔法の世界ならばイケメンのエルフでもなって前世の未練を果たしたい。」
「なんだ、そんなこと考えたか。」
「大事なことだと思いますので。」
目の前は自称竜神様だからドラゴンにしかなれない可能性は高いだけど、ダメ元で頼んで見る。
「我等ドラゴンは容易く人間に変幻出来る。そのままの行為交際も問題ない。万千の長寿、多種のカリスマ、そして何より人間より、強い。そっち方面の心構えは頂けないが、ドラゴンに転生するには一番だな。」
「ははっ!有難き幸せ!」
ボーナスそんなに多いなら先に言えよな。
「それではお前は白竜の種族とスキルポイント5pを見舞いしよう。そして今から竜の秘宝を一つあげるから、暫くそこで待ってろ。」
「はい。」
竜神様は残像になり頭の上の渦に吸い込んでゆく。一種の移動方法でしょう。
竜神様が言ってたスキルポイントや竜の秘宝は全然分からないけど。スキルポイント、SPだな。ひょっとしてこれから転生する世界はレベル制スキルポイントありとかは?ありそうだ。出来れば誰が説明して貰いたい。
「ちょっとそこの君。」
宮殿の外から女の子の声がする、振り向くと金髪ボブの天使が俺のところへ向かってくる。
やべえ、可愛い。見たことのない可愛さと神々しさ。そしてナイスバディ。
「どちら様でしょうか。」
「通りすがりの女神様でーす!」
ここではテンションの高い女神様が通りすがるらしい。見た目完全に天使だけど女神様なんだ。
「君は噂の夢境の魂か、でこの後竜の救世主に転生するという。」
「はい、そうなりますね。」
こんなに可愛い女神様と話すと、巨大の竜と話すより緊張するかもしれない。
「うんー、竜か。どうかなあ。」
女神様は意味深に頷く。仕草が可愛いけど、そういう言い方は何かを仕掛けるの前振りに違いない。しかし可愛い女の子との会話なので一応相槌。
「何かまずいですか?」
「いやああ、不味くはないですよ、まずくは。でも前世人間だった君にとってどうかなって。」
胡散臭い言方だけど、仕草がいちいち可愛いなこの女神様。
「どういうことでしょうか。」
「僕もね、昔人間だったんですよ。まあ創世神様すら感動する人徳とこの神界を驚かす美しいさで人族の神様になれたんだけど。まだ1300年しか経ってないですよ。」
いやいや、十分長い。
「君は確か眠りにつく十年間でしたね、どう?長い?」
「植物人間状態なので、体感ではよく分からないかな。しかし終わりたい気持ちは確かにあった。」
「そう!それよ。儚き人の一生は短く、とても長い時間では辛い。」
「今辛いすか?」
「最近はちょっとかな、じゃなくて。君は竜の救世主なるには二千年以上生存しなければいけないよ、耐えられるの?」
「二千年は長いなあ、でも転生したくないとは思えないね。」
「転生したいなあ、でも二千年は辛いよでおなじみのあなた!女神セラ様プレゼンツ「英雄プロジェクト」!、今なら君に人族の英雄になるチャンスがあげるけど、考えみたりはしないの?」
そう言って女神様は俺に胸を寄せて小さく呟く。
ヘッドハンティングか、「神界」でいいかな。結構大変なところかもしれない。しかしこの女神様セラちゃんの胸が俺の腕に当たって、非常にけしからん。
「おお!セラではないか。」
突然後ろからおっさんの声が。
「こいつは?例の夢境の?」
夢境とはどうやら俺のことだ。ひょっとして俺有名?
「ちっアレク。ええっと、様。」
「何、ニーゲンヘレナ様と話しが進まなかった?なんなら儂のところ来ない?最近人手不足でさ。」
「アレク様、勝手に同僚の適材をスカウトしないでください。職場は崩壊します。」
お前が言うな。
「まあ、そうだな。でも気が向いたら儂に当たれよ。儂は夢神のアレクだ。」
「しーしー、あっちいけ。」
「お前最近先輩に失礼だぞ。」
そう言っておっさんは去っていた。まあ、おっさんのところに働くつもりはない。
「では話を戻しましょうか。君には人族の英雄になり、20年後あらわれるべく魔王を倒すために転生するわ。けちん坊のヘレナと違い、王侯貴族の生まれとSP25を差し出すわ。もちろん聖剣もおまけするよん。」
ヘレナってのは竜神様でしょうか。ひょっとして女の子?しかしセラちゃんの先輩は竜神様をニーゲンヘレナ様と呼ぶけど後輩たるセラちゃんは本当に失礼だな。
「でも竜と人間、ステータス違うと思うけど。その条件本当に美味しいの?」
ドラゴンと人間のスキルポイントの違いは全く分からないので一度探っみる。
「君!美味しい美味しくないの問題じゃないですよ。二千年を生きなければいけないのよ?こっちの仕事を二十年さっさと片付け、スローライフ五、六十年生きるこそ快適よ!」
「今スローライフ満喫してるんすか?」
「してないよ、この数十年魔王対策で大変なのよ!週三日しか飲めないの!」
女神様の仕事は不調らしい。
「本当にこの25spで俺はうまくやれるの?」
「え?うん。何とかは、きっと大丈夫よ!」
胡散くせ〜。
「スキルポイントってどうやって手に入るの?」
「レベルアップにつき1ptよ。」
「では俺は転生したらレベル26とか?」
「違うわ。ただで25ptは差し上げるのよ。」
「レベル最大は?」
「99だけど。でも人間はあんまりそこまでは。」
「俺が最大に手に入るptは98pt?それとも123pt?」
「えっ?うん。9、10、11…123よ。」
「魔王を倒すにはレベルどれぐらいいるの?二十年後の俺にできるの?」
「仲間集まればなんとなくは、うん!やれるはずだよ!」
「この英雄プロジェクトって俺は初参加者か?」
「す、数人はいるかも?」
セラちゃんどんどん目を逸らしてる。
「でこいつらはやられたの?」
「いえいえ、ちゃんと生きてる人間もいるよ。」
じゃあやられた奴いるってことね。
「なんか危ういな。」
「そいつの話は聞かんでいいぞ!」
渦の中から放り込む白の巨竜、じゃなく、銀髪の美少女が帰ってきた。声も体も先と全然違うけど、多分竜神のニーゲンヘレナ様。
「遅いよ!彼はもう私の英雄になると決まったわ!」
「まことか!」
「いいえ、話を聞いただけ。別にそこまでいい条件ではないのでむしろ断る方向で考えています。」
「何を!私の胸にメロンメロンじゃないですか!」
そう言ってまたセラちゃんが当ててくる。
「まあ、でも考えてみたが。5ptはないな。二千年もちょっときついじゃきついよな。確かにセラちゃんの胸にメロンメロンだったし。」
「うう〜。」
そう言ったそばで竜神のヘレナ様もまた俺のもう一本の腕に華奢の胸を寄せてくる。
クソ同然のドラマだけど、やられる本人でもなればなんという素晴らしいことか!
「竜はレベル上がるのは難しい。5spでも十分の力になる。竜の秘宝に加え、夢境の君はきっとやれるはず。二千年を経て、lv60ぐらい到達できれば、我の末裔は救える。」
竜神様のいきなり柔になってる。しかし、こいつもまた、可愛い。ていうか俺そんなに重要か?
「ヘレナけちん坊すぎる、僕なら30spなら出せますよ。どうですか?」
「30か。悪くないな。」
「6sp。」
おお!オークションか。やったれやったれ〜!しかし竜神の方はあんま上がらないな。でも竜だからそういうもんか。
「35。ヘレナ1spしかし上がらないなら人間は振り向けてくれないよ。」
「うっせー!こちはspが貴重だよ!」
「こっちも重要なの!残りで神酒を交換するの!」
「ちょっと女神様の方誠意感じないな。」
「8spだ!そして白竜種から古竜種に変える!そしたら8spですでに上位竜になれる!」
「ヘレナやめて!僕の方はもう二十年しかないの。ちょっとドジったら前回と前々回失敗したの!夢境に25spに他の仲間に20sp、残りの15spは酒買いたいの!」
「自業自得だ!っていうかお前15spの酒を交換するのか、どんだけ飲むのよ!」
俺は全然分からないけど、どうやら女神様は竜神様に圧倒された。竜神の方条件が良いに違いない。
「うぬぬ、45pt。聖剣も魔道書もあげるの!」
「10ptだ。そして我の最強の秘宝をあげよう。我愛用のでな、こいつがあれば確実にお前を成功させる。」
実はこの竜の10ptは凄いかどうか分からないけど、なんとなくこの「女鏡」のリアクションから相当なものだとわかる。
「では竜神様の方を。」
セラちゃんは腰を抜けたみたいで膝を地につき顔を深く沈む。
「一緒」
「???」
なにが一緒?俺と一緒に転生するとでも?
「二つの運命を一緒に果たせば良いの!ドラゴンは人間形態あるから、そこにスキルポイント使えば良いの!」
「ドラゴンはドラゴンのspを使い、人間は人間のspを使う。おいセラ、できるの?出来たとしても、140ぐらいのspの人間は108sp古竜に勝てるはずなかろう。」
「別にヘレナ様の邪魔にならないからいいじゃないですか!両方両立、人間の姿で魔王を倒し、そしてドラゴンに戻ります。二十年だし。助けてくださいよ!」
なんか女神様は妥協策を勝手に進めた。
「でもそこの夢境にとってはどうでもいい話だぞ。」
「いえ、どうでもよくは。」
「そうよ!胸の恩を返しなさいね!」
「いやそこまでの恩でも。まあ、二人の役になったらやりますけど。」
「いいの?!」
「はい。」
まだ使い道ははっきり分からないけど、別に両方のボーナスを受けて困ることはない。
「セラ、貴様が創造神様に申請しとけよ。今までもないケースだから。」
「大丈夫大丈夫!創造神様適当だから。」
セラちゃんはすっかり元気取り戻したな。何気なくちょっとムカつくな。
「竜神様は神酒好きですか?」
「なんの話?まあ、嫌いじゃないな。」
「ではセラちゃんに50spをもらい、残りの10spの酒を一緒に頂けたい。」
「だ、ダメなの!きちんと計算したから、15spがないと飲み足りないの?分けるの嫌だよ!」
こうして、俺と竜神は神酒を飲むことにした。女神様も最初はメソメソしてること、飲む途中だんだんテンションを上がり機嫌を取りつつある。
「いいか。必ずスキルツリーの人間変幻の1ptを振るのよ。そしたら君のコマンドに人間側のステータスが出来るの、そこに50ptのspが送れるだから。そして出来るだけ高級職につくのよ。ただでさえ竜のspより安いから一般職に振るのはやめてよ。」
「それ経験談ですか?」
「別に深く考えなくていい。竜だから死にはしない。」
「竜だとバレたら僕は困るの!」
「竜は困るの?」
「ううん、あくまで人間の英雄が魔王を倒すのはノルマだから。」
色々めんどくさいな。
美少女神様二人との飲み会の後、俺はまた深い眠りにつく。向こうの世界にドラゴンとして転生する。二つの運命を背負って。
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創世神の宮殿にて
「なんだこの申請書は?ドラゴンの人形態に人間の職業仕様が使えるようにする?ややこしいな。いっそまとめて60ptあげるか、人間にせよドラゴンにせよ好きに使え。承認っと。ああ、今日も疲れたな、酒飲みたい!」
こうして俺は2度の人生が始まった。




