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魔法少女(仮)を道端で拾った件(中編)

中編になります。よろしくお願いいたします。

 月見坂さんを食卓のイスに座らせ急いで救急箱を取りに行く。救急箱はたしか別の部屋にあったはず、そう思い部屋に向かう。その際にドアの隙間から覗いていた父と母を追い払うのを忘れない。


 救急箱に消毒薬や絆創膏があるのを確認してホッととする。そして、急いで月見坂さんのところに戻ると、母がタオルを蒸らして月見坂さんに渡していた。母にお礼を言うと僕に向かって、


「まったく気が利かないんだから、先に汚れを拭くものを渡してあげればいいのに。」


 そう言うと月見坂さんに「ごめんね、この子は気が利かなくて。」と話す。


「い、いえ、こちらこそ夜にお邪魔してすいません。これ、ありがとうございます。あの終われば直ぐに帰りますので。」


 ひどく遠慮がちに答える月見坂さん。「気にしないで。」と軽く答え部屋を出ていく母に入れ替わり、僕は彼女のそばに行き救急箱を机に置いた。


「ありがとう。優しそうなお母さんね。」


 彼女には「まあね。」と軽く返して、タオルで拭いてから薬を塗るか確認する。先にタオルで拭くという彼女を横に立ってずっと見ているのはさすがに気まずいので、少しの間部屋から出ることにした。


 少ししてから部屋に戻りドアの前で入ってもいいか彼女に確認する。千里眼を使って覗けば状況は分かるが使わない。この状況でもしそんなことをして両親にバレたらご飯抜きではすまないからだ。あの二人は超能力者でもないのになぜかそういう感は鋭い。


 彼女の了解を得て部屋の中に入ると、傷の手当てもほぼ終えていたようだった。


「何か手伝おうか?」


 彼女に聞く僕に、


「いえ、もうすぐ終るから大丈夫よ。」


 そう答える彼女をあまりじっと見るのも失礼かと思い、とりあえず窓の方をじっと見ることにする。まぁ、空と月しか見えないのだけれど…。


 とりあえず空を見て時間を潰す僕に彼女が話かけてきた。


「今日は本当に助かったわ。御礼は今度きちんとさせてもらうわ。もう少し待っていてね、終わったらすぐに帰るから。」


「あ、そ、そうなの。」


 答えながら僕は学校で聞くイメージとは全く違う素直な彼女に今更ながら緊張していた。

 何か言おうかと悩んでいると母が入ってきた。


(ナイス、母!)


 すると、月見坂さんに話かける。


「どう?上手く処置できた?」


「あ、はい。ありがとうございます。」


「もう夜も遅いけど帰れる?家は近いの?」


 そう聞く母に月見坂さんが慌てながら答える。


「え?あ、大丈夫です。あの隣町なんで帰れます。」


「うーん、隣町かー。バスもこの時間だともうないわね。女の子一人で歩くのは危ないわね…。タクシーか……。お父さんもお酒飲んじゃってるから車もダメねぇ。お家の人は?だれか迎えにこれる人いない?」


「今日は家にはだれも……。でも大丈夫です。」


 悩む母に一生懸命に帰れることを伝える月見坂さん。横で聞きながら、僕はああなった母はなかなか聞いてくれないのだと一人思う。


(マイペースな母でごめんね、月見坂さん。)


 僕は心の中で彼女に詫びておく。その時、母が名案を思いついたといった風に声を上げる。


「そうだわ!えと、あなた月見坂さんだったかしら。泊まりなさいうちに。明日の朝に帰りましょう、幸いにも明日は土曜日で学校もお休みだしね。」


 うんうん、それは名案だと一人納得している母に僕は頭をかかえる。そして、彼女の方をちらっと横目で見ると、


「へ!?」


 想像もしていなかったのか、口を開け唖然としている彼女がいた。


(きっと、彼女のこんな顔は超レアなんだろうな……。)


 僕は他人事のように考えていた……。


 あれから彼女は何度も母の説得に挑戦したが、説得は無理だと思ったのか最後には諦めたのだった。彼女はコウイッタタイプに弱いのかもしれない。


 ちなみに彼女が何度かこちらを見て助けを求めていたのは知っていたがそれ以上に暴走した母の説得の難しさも知っていたので、彼女が母の説得を試みる間、僕は空を見るふりをしていたのだ。まぁ、彼女には申し訳なかったのだが。


 布団や着替えの準備をしに母が部屋を出た後、月見坂さんのほうに振り替えると無表情の彼女に手招きで呼ばれる……。


(月見坂さん、こわ!?)


 恐る恐る近寄ると一緒に説得しなかったことに文句をさんざん言われる。僕は言い訳するために怪我をしているのに夜に一人で帰るのは危ないことを回りくどくなんとか説明すると、最初は彼女に睨まれたが最後にはため息とともに納得してくれるのだった。


  思わず連れてきてしまった月見坂さんのわが家訪問は母の思いつきでまだ続くのだった。

次話は早めにあげるようにいたします。

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