お約束
よろしくお願いいたします。
都合よく戦っていた橋本さんが夜の空に浮かんでいた。そして、彼女と向かい合うように人影がもう一つ。
そっちに目をやると橋本さんの来ている魔法少女の服を少し大人っぽくした格好の銀髪の少女がいた。
目元はマスクで隠されていてすぐには誰かわからないようになっている。その顔をよく観察すると、
(あれは完全に月見坂さんでしょ。髪の色は全然違うけど……。)
やっぱり今日、学校で何度か見た彼女だった。学校での彼女は普通の黒い髪なんだけれど、今の姿では色が変わっていた。
彼女は険しい顔で橋本さんと向き合い、何か話しかけていた。いつの間にか二人は言い合うようになっており、その後、二人は距離をあけ持っていた棒から光線を打ち合い始める。
僕は以前見た情景を思い出しながらこのまま続けばどうなるか想像しゾッとする。この前は最後に橋本さんの光線でピエロが消し去られたのだ。
(いやいや、いくらなんでも同級生同士で消しちゃうのは不味いでしょ!?)
ピエロだから消されても良いと言うわけではないが隣のクラスメイトを、というの橋本さん的にもひどく不味い気がした……。
(どうする!?超能力はバレたくないから近づきたくはないけど……。もう、仕方がない。)
放っておいて明日から月見坂さんが来なくなる方が後味が悪いと思い、腹をくくって急いで外に出る準備をする。とは言え念のために顔を隠すために押し入れをあさる。
「顔を隠せそうなものは……。あぁもう仕方ないこれでいいか。」
押し入れの奥から見つけたのはまだ小さい頃にお祭りで買ってもらった魔法少女キャラのお面だ。夜に魔法少女のお面を付けた男子中学生が道端に立っていたら恐怖そのもの、僕なら間違いなく即通報するが背に腹は代えられない。そう思い鞄に詰め込み部屋を出る。母には、
「ちょっとコンビニ行ってくる。」
そう一声かけ家を出る。家を出て二人の見える場所まで走る。二人の様子を探るとまだ戦っているようだが徐々に橋本さんが押しているようだった。
◇
ようやく見えるはずであろう場所までたどり着いた。ただ、千里眼を使うと見えるのに下から空を見あげると月と星空だけが広がっていた。
魔法的な何かかと感心しながらもそこにいるのは間違いないのだからと思い、鞄の中からアレを取り出し顔に被る。そして周りから目立たないように電柱の影に隠れた。
(これ、端から見たら間違いなく変質者だよね。)
自分の格好を想像しながら軽くへこむ。思わず帰りたくなる気持ちを抑えながら様子を伺い、その時を待った。
◇
空の上ではとうとう橋本さんの出した光線の数が勝り月見坂さんを弾き飛ばした。それをチャンスと見たのか橋本さんが棒を構える。そして、体勢が整わない月見坂さんに向かって極太の光線を放った。
月見坂さんはなんとか体勢を建て直しかわそうとするが、最後は間に合わないことに覚悟を決め目をぐっと閉じる。
……すると光線は彼女に擦れるように横を通り、彼女を大きく弾き飛ばした。彼女は驚いた顔をしながら下に墜ちていく。
僕は最後の仕上げに彼女の落下地点を確認し、もう一度3つ目の超能力である念動力を使って落下の衝撃を緩和する。それでも弾き飛ばされた勢いが強かったのか地面に少し叩きつけられてしまった。できれば衝撃をもう少し抑えたかったが目視では見えない状況でここまでできたのだから及第点だろうと思い直す。
そもそも彼女が落下時に驚いた顔をしたのも念動力で彼女の体を光線の進む方向から無理やりずらしたからだろう。とは言え普通は目で見えるものに使うため、今回はいつもより精度が悪くなり思ったよりずれていなくてヒヤッとした。
橋本さんの様子を確認すると彼女はどうするか少しの間迷っていたようだが、下に降りて見つかるのは不味いと思ったのか遠くに翔んでいったようだ。
その様子を確認した後、僕は月見坂さんが落ちた方に向かい見えない位置から彼女に聞こえる程度の声を出す。
「あれー?なんかこっちから音がしたなー。何だろう?」
ちょっと白々しいかなと思いつつも様子を伺うと、彼女が慌てた様子で念じると魔法少女の格好から学の制服に変わり髪の色も変わっていった。
そして僕は道を進み月見坂さんと出会うのだった。
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