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僕には超能力が3つある

2話目になります。よろしくお願いいたします。

 実は僕は超能力者だ。


 超能力を使って成り上がってやるとか世界征服をするといった()()()()()ことは考えておらず、あまり目立たずそれなりの平凡な人生を目指す僕は、超能力をせいぜい日常生活でちょっと楽をするために使うぐらいだ。


 僕には全部で三つの超能力があり、そのうちの一つの予知能力がきっかけで隣の席の橋本さんが魔法少女だと分かったのだ。


 僕が心の中でオラクルと呼んでいるこの予知能力は前触れもなく頭の中に断片的な情景が浮かぶ使い勝手の悪いものではあるんだけれど……。


 浮かんだ情景がいつどこで起きるか正確な日時や場所が分からないことも多く、内容が分かる場合も近所のスーパーのキャベツや玉ねぎ・にんじんの安売りやその値段といった僕にはどうでもいい内容を教えてくれることが大半だったりするので、母に教えて小遣いを上げてもらう点数稼ぎのために少し役に立つ能力程度にしか思っていなかった。


 ただ、橋本さんが魔法少女だということが分かったその日は少しだけ違っていた。



 ◇



 授業中、頭の中に突然断片的な情景が浮かび、その内容に思わず、


「えっ!?」


 と、声を出してしまった。

 すると隣の席から橋本さんが、


「どうしたの?」


 と心配そうに聞いてくるので、僕は慌てて、


「な、なんでもないよ、橋本さん。」


 と返答した。


「そう、だったら良いけど……。気分が悪いんだったら言ってね、保健室に行くって先生に言ってあげるから。」


「う、うん、ありがと、大丈夫だから。」


 橋本さんにはそう答えたものの、頭の中に浮かんだオラクルはひさびさに近所のスーパーの安売りの広告ではなかった。隣に座っている橋本さんとよく似た顔が突然頭の中に浮かび上がり、しかもアニメの魔法少女のような服を着て棒?を手に持ちポーズを決めて夜の空に浮かんでいたので、授業中にもかかわらず思わず声を出してしまったのだ。


 超能力者である僕が言うのもなんだが、この世界に魔法少女がいるなんて思っていなかったこともあるけれど、その顔がクラスメイトでしかも隣の橋本さんだったので思わず声を出してしまうのもしかたがないと思う。まぁ、あれが()()()()魔法少女かはっきりしているわけではないのだけれど……。


 ただ、思い返すと今から半年ほど前、中学校に入学して少し経った頃に、隣に座っていた橋本さんの周りに、入学したころにはいなかったはずの見たことないような不思議な生物が一匹飛び回り始め、時には彼女の肩に座って休んでいたりしたので少し気にはなっていた。


 まぁ、当時の不思議生物が見えたときには、橋本さん以外の他のクラスメイトには見えていないようだったので、やっかいごとに巻き込まれたくなかった僕はそれ以降見えない振りをするようにしていたのだけれど……。もしかすると、あれもいま見えた内容と関係があるのかもしれない。



「うーん……。」


 と頭のなかに見えた内容について続けて悩んでいると、


「やっぱり調子悪いの?大丈夫?」


 隣の席から橋本さんが心配そうに聞いてくれるので、


「大丈夫、さっき先生が話していた説明がちょっと気になって考えていただけなんだ。それより先生が今度のテストの範囲を連絡するそうだよ。」


 と考えていたことと関係のない話で話題を逸らすと、


「あ、ほんとうだ。ちゃんとノートに写しとかないと。この範囲苦手なんだよね……。」


 彼女は慌てて前を向いて先生の話を聞きながら一生懸命に内容をノートに書き始める。そんな彼女を横目に見ながら、この範囲だけじゃなくそもそも数学自体が苦手そうな彼女をこれ以上心配させて勉強の邪魔をするのも悪いので、この件は後でゆっくり考えることにして、授業に集中することにした。



 ◇



 たまに担任の先生に当てられて、いつも通りあたふたする橋本さんをたまに眺めて過ごしていると、いつの間にか今日の授業もすべて終わり、帰宅の時間になっていた。


 今日の授業を乗り切り隣で机に突っ伏している橋本さんに、労いの言葉をかける。


「ははは、お疲れ様。今日はけっこう当てられていたね。」


「うー、今日は大変だったよ。こんなに当てられたのは久々だよー。」


 机からゆっくり起き上がりこちらを見た彼女に、


「大変だったね。」


 と声をかけた後、それじゃあ帰るねと挨拶して教室を出た。



 ◇



 住んでいるマンションに帰って来た僕は母親に帰ってきたことを伝え自分の部屋に入ると、ベッドに寝転がり今日の昼間に見たオラクルの内容を思い返していた。


 格好は日常生活では見ることはない変わったものだったが顔は橋本さんに非常によく似ていた。というか、学校で隣に座っている彼女の顔そのものだった。


 格好だけ見ると、コスプレを趣味とするその道の人であれば有りそうだけれど、彼女の趣味がそっちだとは聞いたことはないし、そもそも空に浮かんでいたのでコスプレとは違うのだろう。


 いろいろ考えを巡らせていると、時間が大分過ぎていたらしく、母親から夕飯であることを伝えられたので、ご飯を食べにリビングに向かった。


 高層マンションの比較的高い階に住んでいる僕は、周りにそれほど高いマンションがないこともあって、リビングの窓から遠くまで一望できる。テーブルの上に置かれたご飯を食べていたら、母か外に目をやり、


「あら、今日は満月なのね。よく見えるわねー。」


 僕も同じように目を外にやると、母の言うように今日は雲も出ていないので夜空に大きな月がよく見えていた。そうだね、と返事したそのとき、真っ白い月に黒い小さな影が一瞬横切る。



「うんっ?」


「どうしたの?何かあった?」


「ううん、なんでもないよ。」


 何もないように返事をしてご飯を全て食べ終わるとごちそうさまと伝えて部屋に戻った。ベッドに転がると頭の中でさっきの影のことを思い返す。一瞬しか見えなかったが、そのシルエットは今日オラクルで見た情景となぜか重なるような気がしていた。


 さっきの影がどうしても気になった僕はもう一つの超能力の千里眼で、さっき影が見えたであろう辺りを覗き見してみることにした。


 この能力はどんなに遠くてもその情景をリアルタイムで見ることができる便利なものだ。見る場所はある程度決める必要し、音は聞こえないし状況しか見えないのだけれど……。ただ、この能力は使い方を間違えるといろいろと犯罪を犯しているような気分にもなるので僕は普段はあまり使わないように自重している。ただ、この時はさっきの情景が気になって、自分を抑えきれず使うことにした。


「えーと、さっき見えたのはここら辺りかな。」


 千里眼を使ってカメラのレンズのピントを合わせるように集中すると、頭の中に見えてきたのは今日昼間に予知夢で見た情景と似たものだった。


「あれは?やっぱり橋本さん!?」

次回はまた3日後です。

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