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日常

こっそり投稿。

あの日から、ほぼ毎日のように朝には、月見坂さんは橋本さんのところで話した後、自分の教室に戻る。


僕の席は橋本さんの隣と言うこともあり、登校して教室に入り席についた後、月見坂さんは必ず挨拶をして行く。


「おはよう。今日もいつもどおりね。あなたが来たと言うことは、そろそろ戻らないとだめね。まなみ、それじゃあ。」


どうやら僕は彼女が教室に戻るためのタイマーのようだ……。

あの日から少しして、彼女は橋本さんの呼び方をまなみに変えていた。


橋本さんは未だに月見坂さん呼びだ、このへたれめ。


「うん、月見坂さんも。」


橋本さんは彼女に手を振りながら見送る。

僕も机に突っ伏しながら、軽く手を上げて彼女を見送る。


となりから橋本さんが苦笑いしながらも話しかけてきた。


「もう、ちゃんと起きて挨拶しなよー。」


彼女は「仕方ないなー。」と言いながら授業の準備をし始めた。


あの生物はというと突っ伏している僕の頭を椅子がわりにしてくつろいでいた。


重さは感じないが、屈辱的な何かは心に残る気がする。


クラスメイトのみんなはもう見馴れたのかスルーしている。

まあ、頭の上の生物はみんなには見えないけれど……。

これが最近の僕らの朝の光景だった。


ていうか、いいかげんにどけ! この生物。

そう思いつつも、甘んじて椅子になりつつ、先生が来るまでこの格好のまま待つのだった。



先生が入ってきたのを見計らって、起き上がり姿勢を正す。


「よっこいしょっと。」


「うわー。」


そう言いながら、頭の上から転げ落ちたあと浮かび上がる生物がいた。


生物はふよふよと浮かびながら移動し、橋本さんの肩に腰かける。

彼女はひそひそ声でそれに話しかけた。


(ちょっと、ちー助、あんなことしちゃダメっていつも言ってるでしょ!)


「でも、まなみ、あそこは座りやすいんだよね。なんていうのかな、しっくり来るって言うか。それに気がつかないんだから大丈夫だよ。」


(いくら気がつかないからって……。)


「大丈夫、大丈夫。」


そんなことをひとりと一匹が話していると、


「次、橋本。読んでみなさい。」


「は、はひ。えと。」


慌てて教科書を捲る橋本さん。


「ちゃんと聞いてないとダメだぞ。じゃあ、小川、読んでみなさい。」


「す、すいません。」


橋本さんは小さな声で謝る。

教室のあちらこちらで笑いが漏れるのを聞き、彼女は顔を赤くして俯いていた。


彼女は相変わらずだった。



「うー。」


授業が終わり、唸りながら机に突っ伏す橋本さん。


「えと、大変だったね。お疲れ様。」


僕はとりあえず労いの言葉だけかけておくことにした。


「本当だよ。……助けてくれても良かったのにー。」


その格好のまま、顔だけをこちらに向ける。

とりあえず僕は笑って誤魔化した。


そうこうしていると、緋川さんが近づいてきた。


「はっちゃん、ちゃんと聞いてないとダメだよ。」


「うー、ひーちゃんまで……。」


緋川さんは橋本さんの頭をよしよしと撫で始めた。


彼女たちが話し始めたのを見て、僕は机の上で短い睡眠をとるのだった。


ちなみにあの生物は僕が寝る体勢になると同時に頭の上にちゃっかり座っていた。



今日も長かった授業も終わりその場で伸びをした後に、ちらりと隣を見る。


「…………。」


橋本さんはすっかり燃え尽きていた。

こんなことで魔法少女生活は大丈夫なのかと、余計なお世話なことを考えていると、生物が彼女の頭の横に立つ。


「ほら、まなみ。学校が終わったよ。今日はりさと見回りの日でしょ。」


「…………。」


月見坂さんとお仕事らしい彼女は、生物の言葉にも無反応だった。


……どうやら今日は重症らしい。


あの事件以来、彼女たちと敵対関係にあるあの組織の活動は鳴りを潜めており、まあ問題ないだろうと思いつつ、僕はそんな彼女を横目に帰ろうと席から立ち上がる。


「うー。」


ゾンビのように起き上がった彼女にとりあえず別れの挨拶をして、扉に向かった。


扉を開けると、月見坂さんとばったり出くわす。


「あら、帰り? まなみは?」


「あそこだよ。今日は重症みたい。」


「はぁ。また? 仕方ないわね。(ほんと、夜とは大違いよね。)」


ばっちり聞こえた彼女の後半の言葉をスルーし、僕は挨拶をして帰宅するのだった。


まあ、こんな日常が最近は続いていた。


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