いつもと少し違う日、そして
11話になります。よろしくお願いいたします。
週明けの朝、いつもどおりの遅い時間に起きる。休み前はなかなか忙しい1日だった。月見坂さんを助けにいったら、怪我の処置のためとはいえまさか家に呼んでその上泊まるなんて。
その代わり、休日は特に何もないゆっくりした日々で部屋でマンガを読み漁っていたのだ。
学校に行く準備も終わり母に挨拶していつもどおりに家を出た。
◇
ようやく学校について教室に近づくと教室の前辺りが少しざわついていた。
(なんだろう?)
そう思い教室に近づくと、教室の入り口辺りに人影が見え、遠目にクラスメイトや隣のクラスの生徒が様子を伺っていた。
僕はちょうど隣にいた男子生徒に聞いてみる。
「ねぇ、何かあったの?」
「え!?あぁ、お前は確か隣のクラスの……。えーと月見坂さんがお前のクラスに用があるらしくて、みんなでなんだろうって。」
どうやら月見坂さんと同じクラスらしい彼は親切にも教えてくれた。
(僕のクラスに用事か、うーん、何だろう……。何か嫌な予感がして帰りたくなってきたけど。)
そう考えていると、さっき教えてくれた彼が
「あ、橋本さんが月見坂さんのところに行った。」
えっ、と思い見ると橋本さんと一匹が彼女のところに行き話しかけていた。
(月見坂さんはたぶん橋本さんの正体を知っているよね。あんなに堂々とマスコットが隣にいるし。橋本さんは知らないんだろうな。)
橋本さんの性格なら知っていればもっと顔に出るだろうと思いつつ様子を伺っていると、
「あ、あの月見坂さん、私のクラスに何か用かな?だれかに用なら私が呼んでくるけど。」
月見坂さんは彼女の横にいる生き物に一瞬目をやったあと、橋本さんを見た。
(あれは見えているね、間違いなく。)
僕はそう思いながら見ていると、月見坂さんは凍りそうな無表情で、一言告げる。
「……あなたには関係はないわ。」
「あはは、はは……。」
あまりの衝撃に笑うしかない橋本さんを涙ながらに見守りながら、月見坂さんの超塩対応に戦慄した。
(月見坂さん、いくら敵同士だからって学校の中ではもう少し歩み寄ろうよ……。)
敵対していることを隠しているようなのに、隠す気はないと言わんばかりの対応に驚いていると、隣の彼が、
「月見坂さん、なぜか橋本さんにはとくに冷たいよね。今日の朝、学校に来たときはすごく機嫌が良さそうだったんだけど……」
と教えてくれる。そうなんだ、と適当に返していると、月見坂さんがふとこちらを見て、近づいてきた。
「はぁ、やっと来たわね。この前はありがとう。いつもこれぐらいに学校に来るの?」
「う、うん。」
さっきと変わって楽しそうに話す彼女になんとかそう答える僕。
「そう、朝はやっぱり弱いのね。それじゃあ、またね。」
そう言って自分の教室に戻っていく彼女をみんな唖然として見ていた。
橋本さんの、「え?え?どういうこと?ねえ。」という誰に問いかけているか分からない言葉だけがむなしく廊下に響いた……。
◇
朝一で月見坂さんに話しかけられると言う事件のあとクラスメイトに詰め寄られそうになったところでチャイムが鳴りとりあえずは先送りになった。何の解決にもなってないけど……。
授業が始まりさっきの対応策を考えていると視線を感じる。ふと隣を見ると橋本さんが授業中にも関わらずジト目でこっちを見ていた。ちなみに肩の生き物は何か考え事をしている。
「ねぇ月見坂さんとどういう関係なの?先週はあんなに親しくなかったよね。」
抑えきれなかったのか橋本さんが僕に聞いてくる。気のせいか僕らの周囲も聞き耳をたてているように思える。
僕はみんなが聞き耳をたてているこの状況で橋本さんの追及を上手く乗りきれば後でみんなの追及が弱くなると思い、橋本さんを利用させてもらうことした。
「うん、……実はね……。」
僕は少し話そうか話すまいか悩んだふりをした後、あまり細かいことは話さず所々ぼやかしながら先週あったことを橋本さんに説明した。
「ということがあったんだ。今日の朝の話はそのお礼だと思うよ。」
そう言うと
「うーん、嘘じゃあないんだろうけど……。それで、あんなに仲良くなるなかなぁ?なんか怪しいんだけど……、うーん。」
と腑に落ちないよな顔をしたあとに頭をひねる。いつもの橋本さんなら直ぐに納得しそうなものなのになぜか今日の彼女はなかなか手強い。
するとさっきまで考えごとをしているようだった肩の生物が橋本さんに話始める。
「ねぇまなみ、もしかしたら月見坂はブラッディルナなんじゃないの?」
「え?ちー助どういうこと?」
橋本さんはさっきとはうって変わって真剣な顔で詳しく聞き始めた。僕は生き物が月見坂さんの正体に気づき始めたことや橋本さんが授業を聞いてないことに先生が気づき始めたことより、月見坂さんの魔法少女ネームに驚愕した。
(え!?それってたぶん月見坂さんのことだよね。そんな名前なの?本気で?)
ついに先生に当てられた橋本さんがオロオロしているのにも僕は気付かず、普段の大人っぽい月見坂さんと中二っぽい名前で呼ばれる彼女とのギャップに笑いを堪えるのに必死だった……。
◇
授業中聞いていた内容である程度納得したのか、あの授業以降、クラスメイトに詰め寄られて詳しく聞かれることはなかった。一方、橋本さんはあの授業以降、マスコットに聞いた話をどうするか考えているようだった。
あっという間に今日の授業はすべで終わり帰る時間になった。詰め寄られることはなくなったとはいえみんなに捕まらないように帰る準備をいそいで済まし廊下に出る。
廊下を歩いていると、窓の向こうに険しい顔で足早にどこかに向かう月見坂さんが見えた……。
(あれは月見坂さん?どこにいくんだろう?)
次回も三日後です。評価をよろしくお願いいたします。また、感想やレビューがあればお待ちしております。