3話 社蓄
「神木さん、これお願いして良いですか」
新入社員の加藤さん、今日も素敵な笑顔です。
「良いですよー」
コーヒーの入っている缶の蓋を開けて、渡してあげる。
「おい神木、昨日頼んだ資料、纏めてあるだろうな」
課長の内田さん、相変わらず厳つい天然パーマです。
「はい、纏めてあります」
心の奥でため息を吐きつつ、資料を渡す。
「あーダメだ、商品サンプルが少なすぎる、明日までにこの倍の資料を用意しとけ、あと頼んだプログラム明日までに提出しろ」
は、なに言っているんだこの人、期日まで後一週間あったはずなのに、まあ何時もみたいに、突然仕事を振ってくるので、毎日残業してある程度仕上げてあるけど。
「課長、商品サンプルの資料は揃えられますが、提出の期限は一週間後のはずでは」
しまったそんな正論この人に言っても無駄なのに
「女と無駄にくっちゃべる、お前なら出来るよ、いいな」
相変わらず有無を言わせないなー。
「はい解りました」
満足したように、去ってゆく後ろ姿に腹が立つ。
加藤さんが、心配そうにコーヒを持って来てくれる。
「神木さん大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫」
「でもあの仕事、部長が課長に言っていたのに」
「まあ、うちらでやるのは、分かるけどあれは無いな」
「部長に言ってみたらどうですか」
「さすがに今回の事は、報告してみるけど対応してくれるかどうかはなー取り敢えず今日は、様子を見て部長にデータを渡して帰るよ、コーヒーありがとね」
ああ、少しでも早く帰って家でゆっくりしたい。