9話
私が飛んで帰って来ると、フブキが近くの木の下に座って紅茶を飲んでいた。アリスはまだ帰ってきてないようだな。
「流石だな、どれぐらい待った?」
「返答。約2時間です」
「て事は2時間で依頼終わらしたのか?便利だなぁ。フブキの能力」
私がフブキと5分程話をしていると、遠くにアリスのケルベロスが走ってくるのが見えた。アリスは上に乗ってるな。
「ごめ〜ん!少し遅れた?」
「否定。時間ぴったりです」
「そんじゃ、依頼の報告して宿探すか?」
全員揃ったので組合に依頼の報告して宿を探しに行こう……と思って2人に声をかけたが、
「あ〜、サクラちゃん。さっき帰って来る途中思ったんだけど………」
「あん?どうしたアリス。何か忘れたのか?」
「いやいや。宿の事だけど、ゲームの時使ってた【ホームテント】そこら辺に設置すればいいんじゃない?」
「「あ……」」
【ホームテント】、私達が使っていた外見は普通のテントだが、中に入ると木造平屋の家の中だったり、マンションの一室みたいになっているプレイヤーがゲームの中で野宿する為のアイテムだ。持ち運べない分の武器やアイテムをテントの中のチェストの中とかに入れて持ち運び出来るし、ダンジョンの中で魔物に殺られそうになった時の緊急避難所としてプレイヤーに愛用されていた。勿論、私達もだ。
「………確かにアイテムボックスの中にあるな」
「提案。ちょっと待っていて下さい。私が時間を止めて試してみます」
「あぁ、頼む」
そう言って私はアイテムボックスの中から小さなテントの模型のような物をフブキに手渡す。
私達は3人で1つのテントを使っていた。内装は和室とキッチン、武器庫があり、ネタで付けた風呂とトイレも付いている。だいたい10人は布団を広げて眠る事ができる広さだった。
「開始。それでは行きます」
パチン!
「終了。終わりました」
「「いや早いよ」」
早速確認が取れたようだ。フブキが結果を報告してくれる。
「結果。広さは変わりありません。キッチンもお風呂もちゃんと機能します。武器庫の中もちゃんとありました。こちらは幾つか強化されていましたがほぼ同じです。キッチンの冷蔵庫の中はゲームの時の肉や野菜がそのまま入っています。問題なく中で生活出来ますね」
どうやら宿を探しすのはしなくて良さそうだ。ホームテントを預かって、門番にカードを見せて王都に入る。そのまま街の店をひやかしながら私達は冒険者組合に向かった。
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「おーっす!今戻ったぜ」
私達が揃って組合に入ると、他の冒険者が何やら私達を見て心の中で『やっぱり無理だったか。少し強いからって調子に乗ったな』とか思ってるな、どうかしたのだろうか?
「提案。早く報告してホームテントに入りましょう。店をひやかしながら来たので今は時間で6時ですよ」
フブキが銀色の懐中時計を見ながら提案して来た。この世界は時間は1日24時間と変わらないが、一カ月30日、1年360日となっている。向こうと距離や重さの単位は一緒だ。
「そうだな。丁度リズさんのカウンターが空いてるからそこ行こう。おーい、リズさ〜ん!」
「え?サクラ様?…あぁ、やっぱり達成出来ませんでしたか。やっぱり無茶しすぎなんですよ。次からはちゃんと自分のランクに合った「依頼達成したぞ?」………え?」
成る程、さっきから他の冒険者が思っていた事の理由はコレか。やっぱり飛ばし過ぎだったかぁ。
「だから達成して来たんだって。これ依頼書、討伐した魔物もあるが買い取ってくれるのか?ここ」
「え?え!?ま、まだ依頼を受けて5時間ぐらいですよね!?何で達成出来てるんですか!?」
渡した依頼書を確認して驚いているリズさん。フブキは面をひょっとこにして顔を逸らし、アリスと私は苦笑いしている。依頼書を確認した後、リズさんは私達に買取の受付を私達に教えて奥に入って行った。私達は受付の強面のおじさんに話しかけた。
「すまない、此処で討伐した魔物を買い取ってくれるのか?ちょっと数が多いのだが…」
「おん?魔物なんて何処に……あぁボックス持ちか。いいぞ。此処じゃ何だから訓練場に出してくれ」
強面のおじさんと作業着を着た組合の青年達とまた訓練場に来て、私達はアイテムボックスから魔物を全部取り出したが………
「な、何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁあ!!?」
「おい!ボックスのスキルってこんなにたくさん物入ったか!?」
「何かよく見たら穴だらけだったり真っ二つになっているが、オークキングやオーガナイト、ブラックウルフまでいるぞ!」
何か面倒臭くなったので組合の中にある酒場のテーブルに座って待つこと10分。
「すみません!〈百鬼夜行〉の皆様。組合長がお呼びです」
「……………え?マジ?」
ヤッベー…やっぱやり過ぎたか。組合長なんていかにも面倒臭そうな奴に呼ばれるってどんだけだよ。あの程度でコレか?
とりあえず断ったらさらに面倒臭い事になりそうなので、リズさんに連れられて建物の二階の奥の部屋に案内された。アリスも嫌そうな顔だし、フブキは顔に出してないが頭の面が影清になっている。どうやら能面の意味とは関係なく表情が見てわかるようになっている様だ。
「着きました。組合長、〈百鬼夜行〉の皆様をお連れしましたよ」
『おー、すまんのリズ。鍵は開いておるから入って来い』
組合長室と書かれた扉にリズさんがノックしてから声をかけると、中から何やらババくさい喋り方の若い女性の声が聞こえて来た。中に入ると向かい合ったソファーの片方に、フード付きの緑のローブを着た見た目20代の笹型の耳の金髪美女が腰を下ろしている。いわゆるエルフ族だ、この国では初めて見たな。獣人はチラチラ見たが…
「すまんの〜、お主ら。儂はこの冒険者組合の長をしておる元Sランク冒険者のモニカじゃ。職業は魔導士じゃよ」
「これはご丁寧にどうも、私がサクラ、ピエロ服の少女がアリス、メイド服でお面を付けたのがフブキです。以後よろしく」
元でもSランク冒険者か、初めて見たな。何か友好的な女性だし、少しぐらい話しでも…
「単刀直入に聞くがの、お主ら、『呪われた子』かの?」
ガタッ!
私達は一瞬で距離を取り、私は朱雀と青龍を抜き、アリスは腰のランタンを手に持ち、フブキは薙刀の鬼斬・氷華を構えて殺気を放つ。モニカは顔を青くして慌てて敵意は無いと両手を挙げる。
「お、落ち着くのじゃ!別にどうこうしようと言う訳ではない!あくまで聞いてみただけじゃ!」
………どうやら嘘じゃないようだ。私が銃を仕舞うと2人も大丈夫だと思い、武器を下げ、殺気を消した。モニカはホッと胸を撫で下ろし、リズさんはまだ少し震えていた。
「確かに私達はあんたが言う『呪われた子』どうしの混血だ。しかし何故それを知っている?」
「カードを作る時ステータスで種族を水晶に1度記録させるじゃろ?お主らにはそれが表示されなかったからの。『呪われた子』は自分で出すステータスには種族が見た事もない文字で表示されておって、カードなどには種族が表示されないのじゃよ」
…あの時か!?しくじったな。今更私達は普通の人間2人と狼の獣人ですなんて言えねぇぞ。
今更言ってもどの道アレだけの依頼を数時間で終わらせていたら普通じゃない。
「安心せい。そんな事で差別なんかせんよ。むしろ差別するやからの気が知れぬわ。ただ数百年生きてお主らのような強さを持った『呪われた子』は初めて見るのでの、本当の姿を見せてくれぬか?」
「今の姿が基本なんだが…まぁ、いいか」
てか数百年って、この人何歳だよ。そう思いつつ、私は背中に黒い翼を、アリスは下半身だけ煙化し、私達も初めて見るが、腰辺りから黄色と茶色の縞模様の蜘蛛の足を8本生やし、フブキは周囲に宙に浮く能面を出現させた。
モニカは目をキラキラさせて私達を観察し、リズさんはフブキの能面を興味深そうに突いている。……あ、面が急に鬼になってリズさんがビクッ!ってして手を引っ込めた。
その後、しばらく組合長に質問攻めにされ、ランクが3人ともCに上がった。私達が倒したのにAランク程の魔物が混ざっていたらしい。報酬は上乗せして金貨27枚と銀貨4枚になり、アイテムボックスに仕舞って私達はモニカさんとリズさんに挨拶して組合を後にした。
ホームテントを街の外に立て、涙が出る程美味しかったフブキの料理を堪能し、和室に布団を敷いて3人で寝た。フブキ料理上手すぎだろ。
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一方その頃、王都の裏路地に6人の影が周りを警戒しながら話し合っていた。
「おい、本気でやるのか?バレたら国にいられるどころか指名手配されちまうぞ」
「大丈夫だ。この国は3日前勇者召喚で勇者が現れてから浮き足立ってる。警備も緩くなったし、誰にもバレねぇよ」
「作戦中にそこら中の家を片っ端から忍び込んで、金貨や銀貨なんかを集めた後、さっさとトンズラすれば問題ねぇ」
「わ、分かった」
声からして男だろう。6人の男達はそれぞれ必要な物資を調達する為に、一旦解散した。