8話
アリスside…
「うー…自分の身体が煙になるって変な感じだなぁ」
私は猫を依頼主に渡した後、依頼書にサインを貰って、煙化で次の目的地の村に向かっていた。別に召喚獣のドラゴンとかに乗った方が早いけど、自分のスキルは使いこなさないと…
「っと、アレだね。うん、ザ・村って感じのいたって普通の村だね」
王都からしばらく飛んですぐの所に周りを柵と畑で囲まれた小さな集落があった。流石にこのまま入るのはマズイので、近くの林に入って身体を戻し、ランタンを腰に下げ、パンドラボックスを持って集落の入口らしき所に向かった。
「止まれ!怪しい服の女!この村に何の用だ!?」
「いきなり怪しい服の女って失礼じゃない?ま、当然だけど…」
入ろうとしたら1人の青年が短剣に手を掛けて話しかけてきた。別にピエロの少女がただ依頼でこの村に来ただけなのに、カルシウム足りないんじゃないかな?
「依頼を受けて来た冒険者だよ。さっさと終わらせて帰んないといけないんだけど?通してくれる?」
「はぁ?こんなガキが?………まぁ、いいだろう。ついて来い。村長に合わせてやる」
何この子すんごくぶっ飛ばしたい。能力であんたの情報見たけど私より3つも年下じゃない。
「着いたぞ、ここだ。さっさと入れ」
そうこう思っている内に村長の家に着いたようだ。てかいい加減にしないとパンドラボックス開くぞこの野郎。
何とか村長のお爺さんと会って話をする事が出来たけど……何でまだあんたがいるんだよ。門番じゃないのか?ちょっとこいつの情報見てみるか。
マイケル Lv.4
*何時もは畑でジャガイモを作っている独身で童貞の14歳。毎日村の女の子を見てはニヤニヤしており、女性からは気味悪がられている。両親は農業を、祖父は村長をしており、今は家におり、最近フォレストウルフに畑が荒らされているので何となく門番を10分前始めた。アリスの事を年下の雌としか見ていない。無駄に自分の力と正義感に自信を持っている。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
こいつ……ケルベロスの餌にしてしまおうか?てか門番始めて10分なのか。こんな奴フォレストウルフに喰われてしまえばいいのに……
「お待たせしました。私はこのココノラメン村の村長のゲルマドと申します。あなたが依頼を受けてくれた冒険者の方ですね?」
「あ、はい。そうデスヨ」
ヤバい、イライラしてつい棒読みになってしまった。大丈夫だよね?
「申し訳ありません。こんな遠い村まで足を運んで下さって。何もない村ですが、どうか力を貸して下さい」
そう言って村長は頭を下げた。ええ人や。何でこんな立派な人からこんなガキが生まれたんだろう?やっぱりどんな立派な人にも汚点はあるものなんだね。
「分かりました!精一杯頑張ります!」
「おい!爺い!こんなピエロ女に任せるのか!?俺様の力ならフォレストウルフだろうが何だろうが一網打尽だぜ!フハハハハ!!」
「こ、コレ!客人に何て口の聞き方をするんじゃ!!申し訳ありません!」
本当に何でこんなのが生きているんだろうか?ま、少し時間がかかったし、急いで討伐に向かうかな?……ん?なんか外が騒がしいな?
急に外が騒がしくなり始め、村長と変態マイケルもそれに気付いた。何事かと思っていると扉を開けて村人が入って来た。
「村長!フォレストウルフがまた来ました!」
「な、何じゃと!?」
私はそれを聞いた瞬間近くの窓から飛び出した。村の入口に向かうと、私が降りた林から50匹の緑の狼が押し寄せて来た。1匹黒くてデカイのがいるがあいつがリーダーかな?
「こっから先は行かせるわけにはいかないんだよねぇ。時間が惜しいし、さっさと片付けてあげる!パンドラボックス!」
私は手に持ったパンドラボックスを上に投げて技を発動する。
「『従魔召喚・ケルベロス』!」
パンドラボックスが蓋を開けて黒い煙を放出し、3つの頭を持つ地獄の番犬を召喚した。
バウ!バウ!バウ!
「食い散らかしちゃって!ケルベロス!」
グルルアァァァァア!!
フォレストウルフ達は突然現れた化け物に驚いて足を止めた。そこをケルベロスが突貫してウルフ達を蹂躙して回った。嚙み砕き、踏み潰し、口から炎を出して暴れ回り、ものの数分でフォレストウルフ達は全滅した。
その後、村長と村人達に報告に行くと、戦闘をずっと見ていた為唖然としていたが、大喜びしてくれた。その時、変態マイケルが「よくやった。俺様の女にしてやってもいいぞ」とかぬかした為股間を蹴り上げた。依頼書にサインを貰ってケルベロスに乗って帰った。みんな帰ってるかなぁ?
アリスが帰った後、マイケルは村人と村長にボコボコにされ、しばらく簀巻きにされて放置された。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フブキside…
「確認。依頼のあった村は此処ですね?」
私は時間停止で北の村まで走って移動した。5時間走りっぱなしでも疲れないとは、レベルの恩恵でしょうか?
村の入口の門番の2人に依頼に来た事を話したら意外そうな顔をされていましたが、村長に合わせて下さいました。
「確認。では村の西の山の洞窟に村の女性が盗賊に連れ去られたので、その方達の救出。及び盗賊の全滅が依頼内容ですね?」
「は、はい。あのやっぱり難しいと思われます。50人の盗賊ですよ?1人では無理ですよ」
若い村長が警告してきました。ですが救出は早い方が良いでしょう。
「否定。心配無用です。早速行ってまいります」
パチン!
私は指を鳴らして時を止め、洞窟に向いました。指を鳴らした理由は何となくかっこいいからです。
その後、取り残された村長…
「!!?き、消えた!!?あれ!?あれ!?」
かなり混乱していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は洞窟を見つけたので、時間を止めたまま中に入り即席の牢屋に入れられた10人の村娘達を見つけたので能力を解除します。人質にされると面倒ですからね。
「質問。あなた方が盗賊に拉致された村娘様方ですか?」
「!?誰?いつからいたの?」
「私は依頼を受けた冒険者です。今出しますから動かないで下さい……」
私は斬刀・吹雪を腰に下げ、檻を見据え……
…キン!
ガシャン!!
「えぇ!?」
檻と村娘達の手に付けられた枷を切断しました。刀の刃は見えていなかったでしょうが、時間を止めていないので決闘で使った技とは違って0.09秒位は時間が経っているでしょうし、何より移動が出来ません。
「おい!牢屋の方で凄い音がしたぞ!」
「侵入者?一体どこから?見張りは何をしていた!?」
少し音を立て過ぎましたか…仕方ありません。
「要求。皆様、これからの事は他言無用でお願いいたします」
「え?こんな時に何を…」
「確認。い・い・で・す・ね?」
「は、はい!絶対言いません!!」
少々殺気を放ちましたが承諾してくれたので良いでしょう。では……
パチン!シュン!
「あ、あれ?さっきまで私達洞窟の中にいた筈じゃ?」
空間を繋げて私達ごと村の近くに転移しました。
「要求。皆様は村に戻って下さい。私は依頼の続きをして来ます」
パチン!
私は人質を村の近くに送った後、洞窟の入り口に転移しました。盗賊は中に全員入っているようです。私は吹雪を仕舞い、黒い塗装に桜の木と蝶の柄が描かれた鉄扇。【幻想・神楽】の対の鉄扇、【夢幻・死蝶】。私はこれを両手に持ち、技を発動させた。
「『戦火・死蝶の宴』……」
仰いだ鉄扇から数百匹の黒いアゲハチョウが放出され、ヒラヒラと洞窟の中へ飛んで行く。しばらくすると、洞窟の中から無数の爆音と盗賊の悲鳴が響き渡る。私は証拠になりそうなものを手の上に転移させ、村に帰還した。
『戦火・死蝶の宴』は、数百匹の黒いアゲハチョウが敵に飛んで行き、近付くと爆発する夢幻・死蝶専用の広範囲攻撃だ。盗賊がいなくなるまで追い続けるから爆音が止んだということは全滅だ。
その後、村娘の皆様に感謝され、依頼書にサインして貰って村を後にした。後4時間。早く終わらせましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「達成。やっと見つけました。サクラさん達のような探索系が気配察知だけというのは疲れますね」
転移で帰らずの森に転移し、街中では隠していた能面を全て出現させてオーガを探していましたが、なかなか見つからず、やっと5匹が集まっていた所を発見しました。オーガは全身が筋肉に覆われており、頭に一本の角を生やしている。1匹だけ二本生やして手に鉄製の大剣を持ったのがいますが……
「私には鉄製の武器など意味がありません。『斬刀零閃・断』……」
……キン!
「グガァァ………」
オーガは全員一刀両断され、上半身を地面に落とした。
私はオーガの亡骸をアイテムボックスに仕舞い、待ち合わせ場所に向かった。始めてから約2時間。先に戻ってサクラさん達を待ちましょうか。
パチン!
こうして私は依頼を終え、待ち合わせ場所の近くの木下に座って紅茶を飲んでサクラさん達をのんびり待っていました。
本日二本目です。