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四十一話 神々の諍い(5)

 やっと、出来ました。最近、霊能科の執筆速度ががた落ちしてますね。

 すみません、もっと早く書けるように努力します。

 作られた物にとって、与えられた役割は至上のものだ。

 湯飲みであれば茶を入れて、飲まれること。

 花瓶であれば花を飾ること。

 洋服であれば、暖を取ったりあるいは着飾ったりと様々だ。

 彼ら(と、あえて表記する)にはきっと、もしかしたら欺瞞かもしれないが、誇りがある。

 己でしかその役目は果たせない。その誇りが。

 ならば、刀は? 

 それも、ただ復讐をなす為だけに作られた一振りの日本刀は?

 金神は、カナミは、自問する。

 水神を退治たその時、自分には何が残るのだろうかと。


 ふと思い出すのは、教室にいた秀樹の姿。


 関係ない。そう断言することが、カナミにはなぜか出来なかった。






「雪村ーーッ!」


 昇降口を潜った俺は、雪村の姿を見つけるなり咆えた。

 鞘を投げ捨て、真っ直ぐに雪村のいる場所へと走る。

 校庭。雪村は、カナミの攻撃を阻害するように動いていたが、俺に気がついたのか、いったん距離を取った。


「じゃあ、予定通りに」


「………本当に信用できるんだな?」


「俺よりは、ね」


 俺には何を言っているのかは聞き取れない。が、それを気にする余裕は与えられなかった。

 予測する。五秒先を見る眼の力によって、先読みされた雪村の攻撃。

 校庭の地面を食い破り、黒い帯が俺を襲う。術か、あるいは特殊能力か?

 その数は四。左右から、ちょうど俺の心臓を狙っていた。本気で殺しにかかってくるか。

 実際の発動まではまだ、二秒ある。

 どうする。前か、後ろか。

 思考は一瞬。

 結果。俺は加速し、雪村が狙っているタイミングを外すことを選択する。

 音がしたが、そちらを見る必要はない。軌道は予測済みだ。包囲するように動くそれの隙間を潜り抜けた。

 その瞬間、妙だと胸のうちが警告を鳴らす。何かはわからない。

 だから今は、気にしない。


「てめぇ、良くも騙してくれたなぁ!」


「至言だよね。騙される方が悪いって」


 うっわ。むかつくなぁ、こいつ!


「でもまぁ、今の俺は本物だから気にしないでかかっておいで」


 言って、雪村の背後から黒い帯が湧き出てくる。気色悪く動くそれは、さっき地面から出てきた奴だ。

 視認できる限りで八。地中から出てきたことを考えると、いくつかまだ隠してるかも知れないな。


「何だよそれ。くらげか?」


「答える義理はないね」


 攻撃力がどれくらいかはわからない。うかつに飛び込むのは危険かな。とはいえ、一度にあの数を捌ききる自信は全くない。

 雪村を警戒しながらも、背後で戦うカナミを見た。

 振りぬいた刀はかすりもせず、逆に水の弾に打たれている。

 自然と、手に力がこもった。

 早く、カナミの隣に立ちたいという思いが強くなる。でも、そのためには――


「無理やりでも、通る」


 刀を両手で持ち直す。

 予測は常時展開。わずかな挙動だって見逃さないように、視界を広く取る。


「んっ、まぁ………できるなら、ね」


 挑発するように雪村が笑った。






 散弾のように打ち出される水を、カナミは直刀で受け流す。

 刀に限らず、手に持つ得物は面の攻撃に弱い。点か線の動きしか出来ないからだ。

 ゆえに、カナミは動きながら当たると思うものだけを刀で受け流す。最小限の動きと、力だけで。


「はぁ、やっぱりこれじゃあ殺せないか」


 嘆息して、静香は水の散弾を止めて自分の両手にばら撒いたものを集めた。


「大体、あんたは何で私のことを狙うのかしら?」


「三百年位前に、言った」


「そうだったかしら」


 ふんわりと微笑む静香。殺伐とした空気のこの場でなく、昼間の学園や公園であればとても魅力的に映ったであろう。

 カナミは首を縦に小さく振って、律儀に答える。二百年前も、おそらくそういったであろう答えで。


「私が金神で、お前が水神だから」


「ああ、そういえば私の七番目の神子を殺したときに言ってたわね。………そう言えば、私を始めて襲ったのもその時か」


 ふむと、腕を組む静香。無造作な姿だが、流石にカナミがつけ入れる隙は見せていない。


「そうか、あれから二度、あんたに神子を殺されてると」


「うん。でも、毎回水神は殺せてない」


「今回は殺せるかもねぇ。何せ、今の私は瀧野静香であって水神だから」


 無表情だったカナミの顔が、わずかに動く。

 それは、喜んでいるようにも見えて――戸惑っている風にも見えた。

 でも、それも一瞬。今は、何時ものように無表情で。切れ長の瞳は静香を射抜いている。


「なら、今日で終わらせる」

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