無一文ですが何か?
さて、森を抜けてほんの数メートル先は、これから中に入りたい少し大きめの街
もちろん入るには関所を通る必要がある
関所を通る方法は2つ
1つ目は冒険者ギルドや商業ギルドに加盟して身分証を作り本物であるか判断するための水晶に提示すること
2つ目は魔法を使って______そう、この世界には魔法とかいうものすごい便利な術があるのだ______見た目をごまかしていないかを判断する水晶に手をかざしつつ指名手配犯ではないことを確認された上で2000G_____ちなみに1G=1円だ_____払えばいい
1つ目の方法はパスだ。私はギルドに加盟していないし、これからもする予定はない。面倒なしがらみが増えるだけだし
かと言って2つ目の方法もパスだ。私は無一文なのだ。そもそも竜という種族はお金を使うという概念がない。生きるために必要なのは酸素のみ。嗜好品として食事をすることはあるが、竜が好む食材はとても少ない。
そもそも私はとても可愛いのだ!何もしなくても人々が色々と貢いでくれるくらいには。決してナルシストという訳ではない。事実だ。
燃え盛る炎ような赤い髪は艶やかで金の瞳は少しつり目がちだか大きく、透き通っている。肌は雪のように白くきめ細やかだ。現在は16,7歳くらいの見た目をとっているが、容姿を幼くみせても、老いてみせても美しいことに変わりはない!
こんなに完璧でいいのだろうか______本当にナルシストではないのだと強く念を押したい_____と常々思う
しかし、関所を通るとなるとかの美貌もあまり役には立たない。小さな村ならなんとかなることも多いが、この街では厳しいだろう
さて、どうするか……
「何をしている?」
数メートル先に関所があるというのに立ち止まっていたからか、後ろから訝しげに声をかけられた
後ろに人がいることは気づいていたけど声をかけられるとは思っていなかったので少し驚いた
振り返るとそこには騎士団の制服を着た背の高い男がいた。イケメンだ。サラサラの黒い髪に切れ長で少し冷たい印象を与えるアイスブルーの瞳がどストライクだ。
「何をしている?」
ジロジロと不躾に眺めていたからか、再度声をかけられる。ふむ。このイケメンさんにちょっとばかり協力してもらおうか。
「……ま、街に入りたくて……」
とりあえず、庇護欲を掻き立てるようなか弱い声を出す。
「入ればいいだろう?」
イケメンさんは当たり前のようにいう。
それができたら苦労なんかしないよーだ!
まぁ、いい。ちょうど数日間野宿してていい感じに小汚い格好をしているし、盗賊にでも襲われたことにしようかな?
「そ、その、数日前に盗賊に襲われて……逃げだせたのは良かったけど着の身着のままだったから、お金もなくて………一緒に旅をしてた人とも離れちゃって……っ」
泣き出すふりをしつつ顔を俯かせる
きっとイケメンさんは騎士だろうし、困っている女の子を放ってはおけないだろう。案の定、
「……とりあえず、関所を通る金は貸してやる。連れの捜索もしてやるから、後で騎士団に来い」
ため息をつきつつ答えるイケメンさん。
いや、まぁ連れなんか本当は居ないから別に探さなくてもいいんだけどね。
イケメンさんはお金を貸してくれるとすぐに街に入って行く。おーい。私がネコババしても知らないよー?まあ、そんなことしないけどさー
とにかく、これで問題なく街に入れることになった訳だけど……どうやってお金を返そうか……この街に長居をするかはないけど、さすがに騎士にお金を借りたまま行くわけにもいかないし。そもそも働いたことなんてないし……
まぁ、いいか。明日は明日の風に任せ!だよね。