不眠外来
いろんなものに依存していた私は、もちろん、アルコールにも依存したことがある。
ただし、この時は自分で依存している自覚がなかった。
きっかけは不眠外来だった。
夜眠れなくて、仕事中に眠くなっても寝るわけにいかず、体がダルくなり、仕方がないので病院で眠れる薬でも貰おうと思ったのだ。
不眠外来は、その病院では精神科だった。
カウンセリングを受け、その時に、眠れないので毎晩お酒を飲んで寝ることを伝えた。
正確には、お酒を飲んで寝るのではない。眠るくらい酔うまで飲むのだ。
医者には正確な方をちゃんと伝えた。
脳の検査をすると言われ、翌週、MRIに入った。
できあがった写真を見て、脳が溶けていると言われたが、あまりピンとこなかった。
アルコール依存症、と診断された。
週に一度、診察に来るように言われたが、四回通ったところでやめてしまった。
当初の目的だった"眠れる薬"は手に入っていたし、そもそも脳が溶けている事に不便を感じたことはない。三年禁酒したら元に戻ると言われたが、それが本当なのかもわからない。
それに、私がたった半年ばかりそんな生活をして脳が溶けているなら、世のキャバ嬢やホストはどうなる。何年も働いている人だって、たくさんいるはずだ。脳ミソはどうなっているんだ。
そう考えると馬鹿馬鹿しくなったので、病院には行かないことにした。
お酒を飲む量は減らしたが、飲まないでいることはできなかった。やはり依存しているようだった。
誰かに言われて依存に気づいたのは初めてだった。へりくつ屋の私からしてみれば、病院に行かなければ依存症ではなかったことになるけれど。
他人から「依存している」と言われると、なんだか居心地の悪いものだと知った。




