第6話 逆境
僕、原田優希は家庭環境にとても悩んでいた。中学生という思春期・反抗期と複雑な時期なのに、親からの間接的・直接的暴力に耐えられなかった。そんな中、今は中学校3年生になった。しかも時期は受験シーズン。家庭環境に加えて、高校受験のこともあるので麻美のことなど考えている暇は無かった。僕と凛で昼休みに学校の屋上にいた。
「いろいろ詰め込みすぎているみたいやね。」
「受験もあるから…。」
「優希あんた鬱になりかけたやん?」
そう…。何も言えないような状態になっていたのだ。
「私が言うのも説得力無いけど…やっぱり何でもないわ。」
「1つか2つだけ悩みを抱えるなら良いけど、4つも抱えられないよ。」
「あんたが言う間接的暴力って何なん?」
僕は一息ついてから話をした。
「簡単に言うと人のものを勝手に取ったり、束縛が激しかったり。親は、“どこの家もそうだ”って...信じられない。」
「少なくても私はそうやない。」
普通はそうだろうな。
「優希、元気出し...。」
そう言いながら凛は僕の唇にキスをして教室に戻った。少しドキッとした。
教室に帰ったら僕の机の中からメモ書きが入っていた。凛の字ではない。塁の字でもない。でもどこかで見たことある随筆。
「塁、これ何?」
「は?知らない。」
だよなー。
「どうした優希。麻美ちゃんかと思っているのか?」
「アホか。麻美教室にいるんだぞ。」
お聞きの通り、僕と麻美は同じクラスです。しかも後ろの席。今年に入ってから麻美に数回話しかけられた。もう僕が麻美のことを好きではないと思っているのか?いや僕は麻美のこと好きだよ。
「今は受験に集中させてよ。塁はスポーツ推薦だから良いけど、こっちは一般受験だよ。」
「まあ大切なものを失うなよ。」
やかましいよ塁。でも勉強が捗るわけがなかった。勿論メモ書きは誰にも見られないようにゴミ箱に捨てた。
何だかんだで月日が経ち受験も終わった。塁はスポーツ推薦で私学に。凛と麻美は県立の同じ学校に進学予定。僕は放送特待で名門私学に合格した。麻美とは別の高校。これで麻美とも向き合えると思っていたが、小学校のラジオの事件がトラウマなのか上手く麻美と向き合えない。麻美が気にかけているのではないかと怖い。来週はいよいよ卒業式。麻美に思いを伝える最後のチャンス。 続く