第5話 立ち直り
何もかも失った僕は1週間学校を休んだ。休みの日の今日、凛と塁に連れられご飯と食べに行った。
「立ち直った?」
塁が心配そうに僕に言った。
「そこそこ…。」
「でもしばらくは休めるし良いと思うよ。」
励ましの言葉?塁の後ろから3人分のカレーを持って凛が椅子に座った。
「カレー食べて元気出しー。」
「いただきます。...まあしばらくは2人とも遊べるし...逆に良かったと思うよ。」
カレー美味しいんですけど。(笑)
「ほんまにええの?」
「何が?」
「優希、麻美ちゃんに告白してないだろ?」
カレーを食べているスプーンの手が止まった。
「告白できる時が来るよ。その内。」
2対1で来られると言い返しづらいな…。
「それってどうなの?」
「塁、何言ってるの?」
「麻美ちゃんが他の男に取られるかもしれないよ。」
「麻美に言われたんだよ。関わらないでって…。」
「...そうなんや。」
話してもらえるには2年は掛かるだろう。
「中学も同じだし大丈夫だよ。」
2人は心配そうに僕を見つめた。
「仮にだよ。告白する前に麻美ちゃんに彼氏が出来たらどうするの?見てられる?」
確かに見てられないかも。いつのまにか食べているカレーをさっきから掻き混ぜ続けていた。
「長期戦を覚悟しーや。」
♪♪♪~
僕は家で録音していた自分のラジオを聴いていた。最後となったラジオです。振りかえれば僕は調子に乗りすぎていた。そんな中、DJ明日香さんからメールが届いた。
“優希君元気?(・o・)”
“放送事故となったラジオを聴いています。(笑)”
“立ち直ったようだね。心配しないで。私は優希君の味方だよ。(>_<)”
分かりやすいお世辞。
“これからは言葉を選ぼうと思いますよ。”
“小学生の発言じゃないよそれ。(*^_^*)”
思い切って明日香さんに電話をしてみた。
プルルル...プルルル...。
「お疲れ優希君。もう大丈夫だよね?一応確認。ハハハハハ。」
「明日香さん僕、麻美に嫌われちゃいました。」
「好きな子って、その子だったんだね。」
「で...でも明日香さんの助言通り告白しますよ。少し時間掛かりますけど…。」
「そう…、良い男になって麻美に告白してね。」
「それと僕、アナウンサーを目指します。」
「おー、何で何で?」
「タレント辞めて思ったんです。伝えることがどれだけ大切なのか、それに言葉は人を傷つけてしまうんですね。だから今度は自分の言葉で人を励ましてあげたいんです。」
心の中で自分自身にエールを送った。
「大丈夫。強くなってまた私とラジオをしようね。約束だよ。」
「はい約束です。」
僕は強く心に誓った。
季節は巡り、もう卒業シーズン。卒業アルバムも完成間近。卒業まで麻美が隣の席である。嬉しいのか悲しいのか…。
「よーし皆。卒業アルバムの男子人気ランキング ベスト3を言うぞ。」
訳分からないことをする先生。事前に女子に投票させていたのだ。興味は全然無い。勿論ベスト3に僕は入っていなかった。が...しかし。
「4位は優希。1票入っているぞ。」
はっ?何故?僕は無意識に凛の顔を見た。けど凛は顔を横に振って“私ちゃうよ”って口パクしてる。そしたら誰だよ。女子なら麻美と凛しか話していないよ。まさか…。でも聞けない…。
学校が終わって凛と下校中、凛に何が起きたか問いかけた。
「私が優希に入れる訳無いやん。」
確かに。それに女子しか投票出来ないもんね。
「麻美ちゃんちゃう?」
「期待させるなって。」
調子に乗ったらまた同じミスをする。期待しちゃダメだ。
「中学校に入っても同じクラスになると良いね。」
凛に向けて、そして麻美に向けて言った。
こうして僕らの小学校生活が終わった。とても成長できた小学校生活だったなと僕は思った。麻美に告白するチャンスは後3年。 続く