4話目
ガラガラガラー。
遠くで聞こえるドアを開ける音。続く女子二人分の声。両方聞き覚えのあるもの。きっと俺のクラブの女子だろう。二人とも見当がつく。てか、さっき二人ともに会ったし。アユとモカだろう。
モカとは、人捜し真っ最中でトイレに行こうとした時に廊下で遭遇した。そういえばそのトイレの帰り、俺はモカの生徒手帳を拾ったんだけど(笑)モカはやっぱわけ分からないな。普通生徒手帳なんか持ち歩かないから。少なくとも俺の周りの人で持ってる人って、俺、モカ以外に知らないんだけど。
その生徒手帳をどうしようか迷って歩いてたついさっき。下足で遭遇したのがアユ。たしかモカとアユは仲良かったと思う。一緒に帰ってた気もする。そんなわけで、モカの生徒手帳をアユにたくした。どうでもいいけど、普段俺とアユは全くしゃべらない。もしかして嫌われてんのかな(笑)さっきもなんか対応が可笑しかった気がするし。
まあ。何はともあれ。モカの生徒手帳は無事生還しただろう。アユがモカと会わなかったら話にならないとこだったけど。どうやらちゃんと会えたみたいだし。
って、いやいやいや。どーでもいいし。そんなことよりも、だ。
「よっす。」
俺の目の前に立ってる男子。ひょうひょうと手を挙げて言う。
「はぁ。」
俺はわざとらしく肩を落としてため息をつく。そいつはそんな俺を見てさらに話しかけてくる。
「どーした。そんなに怒られた?笑」
「お前、何処行ってたんだよ?」
「ごめんごめん(笑)」
「あっちのトイレじゃなかったんか。」
「さー、もう行こうぜー!!」
成り立っていない会話。もういろいろとめんどくさい。もういろいろとめんどくさい。うん。二回繰り返すくらいに、こいつはめんどくさい(笑)
「あー!!!!!もうっ!!笑」
自然と笑っている俺。
「何だよ急に叫んで。」
怪訝な顔してるそいつに向かって俺は言う。
「おら行くぞ、イノ!!」
まったく。人捜し、イノを探すのに無駄な時間使った。ん?俺が動き回らずに待っときゃ良かったんか?というか、そもそも呼び出しをくらった俺の所為か(笑)遊ぶ時間があんまないのに余計なくなったー。急がなきゃな。のんきなイノを下足にて急かす。おらおらおらー。さっさと靴履けー。
「あ、トモとイノだー!!」
「えっ。」
ほらきた。アユとモカ。やっふー!!とか言ってにこやかに手をふる方がモカ。俺らと関わりたくないのか、って思ってしまうように、えって言ったのがアユ。
「トモー!!ありがとねっ。」
何がそんなに可笑しいのか。ケラケラと、文字通りけらけらけら笑うモカ。いつも思うがモカはよく笑うよなぁ。楽しそうなやつ。そんなモカが俺にありがとうと言った。
「え、俺なんかした?」
モカを楽しませるようなことした記憶ないんだけど。あ。数学のプリント見せた時に笑われたことは記憶に新しい。でもそんなことじゃないっしょ。
「あれ?アユからトモって聞いたんだけど。」
不思議そうにアユを見るモカ。アユは何故か固まってる。イノは欠伸をしてる。
「モカの生徒手帳、拾ってくれたんやろ?」
モカがそう言って合点した。
「あー、それ俺や。いや、べつに。」
「いやいやほんまありがとっ。定期入ってるから(笑)」
こいつは、生徒手帳に定期を入れてるのか。
「じゃあ、ばいばーい!!」
「おー、ばいばーい。」
モカが言い、イノがこたえた。
アユは無言で微笑して、俺も無言で手を挙げた。
いつのまにか雨は止んでいた。