2話目
「あ。」
誰もいない静かな校舎。まさかここに人がいると思わなかったからビビった。足音聞こえなかったって。しかも出会ったのは同じクラブの女子のモカだし。俺、思わず声を出してしまったし(笑)なんか、気まずいって。
「あ、おぉ?」
モカが訳分からんことを言い出した。どうやらモカの方も予測してなかったようだ。
あれか。驚きのあまり声が出ないとか言うやつ?
俺とモカは向きあった状況。お互い静止。いや、困った。どうした、この状況。
俺あまりクラブの女子と関わらないようにしてるから。特にそれに深い意味はないけど。強いて言えばなんか嫌なかんじの人がいるから。ほら。自意識過剰じゃなくても分かるようなかんじで、俺のことをキャーキャーいう女子とかさ。え、分からない?(笑)まぁ、べつに。あ、モカはそういうのと違うけど。でもあんまモカとしゃべってないし。
うー。なんか、さっき先生にわーわー言われたから頭が痛い。上手く思考回路が回らないぞ。
「えと、なんでここにいるの?」
俺がいろいろ困ってたら助け舟。モカが話かけてくれた。
「俺が?」
我ながら情けないことを言っている。俺じゃなかったら誰だよ。
「うん。クラブないし、一人で何してるのかと。」
「あーちょっと、」
言葉を濁す。なんとなく言いたくなかった。んー、何でだ?特に理由が思いつかない。じゃあ言ってもいいや。モカだし。
「先生に呼ばれてて。今終わったとこ。」
手を上げて持ってたプリントを振ってみる。うん、グシャグシャになった。
「それ、数学?」
「うん。」
「そんなに数学苦手なの?」
「うん。」
そーいえば、前に数学のテスト俺欠ったーってモカに言ってたな。おー、意外とモカと話してたんだ。俺。
手のプリントを見る。基本的なことだって先生に言われたけど。
「見せてー。」
モカは賢いって言ってたなー。モカと同じクラスのやつが。そんなこと言うあいつも賢かったけど。
「ふふっ。」
モカに笑われた。え、いや何で?
「これくらいすぐに終わるって!!頑張っ(笑)」
あ、思い出した。モカは一度、数学で学年トップを取ったらしいんだった。
「俺は無理やー。」
「がんばー!!なんなら教えたろーか?(笑)」
嫌味か。笑いながら言うとか。
「いや、いいです。遠慮します。」
でも前一緒に勉強したことあったな。何人もいたうちの一人だったけど。結構教えるの上手かったぽかったし。
「あ、でも頼むかもしれない。」
「かもしれない?」
「うん。」
「りょーっかい!!」
さて。今の確認は何の意味があったのか。モカって、ちと謎いんだよねー。
「んじゃまた、あ、し、た?」
何故そこで迷うんだよ。明日も普通に学校で授業あるからな。クラス違うとは言え、明日はクラブあるからな。何故、明日って言うのに迷うんだ、モカ。やはりモカは謎い。
「おー、じゃあまた明日ー。」
「おー。」
さてさて。モカと別れて。もう一度見る。手の中でくしゃくしゃになったプリント。マジで数学苦手だー。あれ。俺何してたんだっけ?
あー思い出した。俺は人探ししてたんだ。
クラブないからクラブのやつと遊ぼうと思ってね。俺が呼び出されたから、それが終わってから行くことにしたんだけど。そいつが待ってるはず場所にいなかったんで。
モカに聞いたら何か知ってたかな?てかモカはモカで何してるわけだ。人には聞いといて。
俺は前を歩くモカを見ながら思った。ん?前を歩く?どうやら行く方向が同じみたいだ。もしかしてトイレか。俺は人探しでトイレに行くけど。
俺の予想的中。モカは俺が後ろにいるのに気づいてて、振り返って微笑した。そしてそのままトイレに入っていった。俺は俺で微笑しかえして。それからトイレに入った。
もちろん、俺は男子トイレでモカは女子トイレ。っていちいち言わなくていいな(笑)
そして結論。そこに俺の探してるやつはいなかった。何処にいるだよ。