表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン最奥から転移したらそこは地獄でした  作者: 御影のたぬき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

第7話:黒縄地獄・縄使いの脅威

 リュウジは建物を出て、再び黒縄地獄の探索を始めた。

 黒い縄を避けながら、体の重さの変化に対応しながら、慎重に進む。

 等活地獄で学んだ教訓——無理をしない、勝てる戦いだけを選ぶ、十分に準備してから進む。

 それを忠実に守る。

「さて、もう少し探索してから中層に進むか」

 リュウジは外縁部をくまなく探索することにした。

 鞭獄卒の強さは把握した。アイテムのドロップも確認した。

 だが、まだ見ぬ敵がいるかもしれない。

 それを確認してから、次に進む。

 歩き続けて三十分ほど経った頃、リュウジは奇妙な場所に辿り着いた。

 黒縄の密度が、異常に高い。

 まるで森のように、無数の縄が絡み合っている。

 縄と縄の間隔は、わずか数十センチ。

 人一人が通れるかどうか、という狭さ。

「……縄の森、か」

 リュウジは立ち止まる。

 この森を抜ければ、中層に近づけるかもしれない。

 だが、危険だ。

 縄に触れれば拘束される。

 そして——

 この森の中には、何かがいる気がする。

「……様子を見るか」

 リュウジは森の入口で立ち止まり、内部を観察する。

 暗い。

 縄が光を遮り、内部は薄暗い。

 だが、目を凝らせば——

 何かが動いている。

 人影。

 いや、人ではない。

 獄卒だ。

 だが、鞭獄卒とは違う。

 もっと——大きい。

 身長は三メートルほど。

 全身が黒い布で覆われている。

 そして、両手には——

 複数の縄。

 十本以上の黒縄を、両手で操っている。

「……あれは」

 リュウジは息を呑む。

 縄使い。

 鞭獄卒より上位の、中級獄卒。

 等活地獄で言えば、牛頭や馬頭より強い存在。

「……一対一でも、厳しいかもしれねえな」

 リュウジは後退する。

 まだ戦うべきではない。

 もっと情報を集めてから——

 だが、その時だった。

 縄使いが、こちらを向いた。

 布で覆われた顔——だが、視線を感じる。

 気づかれた。

「ちっ!」

 リュウジは即座に走り出す。

 縄使いが動く。

 両手の縄を振るう。

 十本以上の縄が、一斉にリュウジに向かって飛んでくる。

 速い!

 リュウジは身体強化:速を最大まで引き上げ、横に跳ぶ。

 縄が地面を叩く。

 パシィン、パシィン、パシィン!

 連続した音。

 だが、それで終わりではない。

 縄が地面に触れた瞬間——

 周囲の黒縄と融合した。

 地面に張り巡らされた黒縄が、縄使いの縄と一体化する。

 そして——

 巨大な縄の網が形成される。

 リュウジを囲むように。

「!」

 リュウジは上を見る。

 縄の網が、頭上からも降ってくる。

 逃げ場がない。

「くそっ!」

 リュウジは蒼刃を抜き、縄を斬る。

 ザシュッ、ザシュッ!

 縄が切れる。

 だが——

 切られた縄の断面から、黒い液体が噴き出す。

 リュウジにかかる。

「うっ!」

 熱くて冷たい痛み。

 毒だ。

 だが、今は構っていられない。

 リュウジは縄の網を突破し、走る。

 縄使いが追ってくる。

 縄を操りながら。

 縄が蛇のようにうねり、リュウジを追う。

 リュウジは建物の間を抜け、瓦礫を飛び越え、全力で逃げる。

 だが——

 縄が追いついてくる。

 リュウジの足に絡みつく。

「ちっ!」

 リュウジは身体強化:力を発動し、縄を引きちぎろうとする。

 だが、縄は切れない。

 それどころか、更に締め付けてくる。

 そして——

 もう一本の縄が、リュウジの腕に絡みつく。

 両手、両足——

 縄に拘束される。

「……やべえ」

 リュウジは身体強化:全を発動。

 全力で縄を引きちぎる。

 ブチッ、ブチッ!

 縄が切れる。

 リュウジは自由になる。

 だが——

 縄使いが、すぐそこまで来ている。

 距離、十メートル。

 両手の縄を構えている。

「……戦うしかねえか」

 リュウジは蒼刃を構える。

 縄使いが縄を振るう。

 十本以上の縄が、リュウジに向かって飛んでくる。

 リュウジは横に跳んで回避。

 そして縄使いに向かって突進。

 懐に飛び込む。

 蒼刃を振るう。

 縄使いの胴体を狙う。

 だが——

 縄使いが縄で防ぐ。

 ガキィン!

 縄が鋼鉄のように固い。

 刃が弾かれる。

 そして——

 縄使いの縄が、リュウジを打つ。

 複数の縄が、同時に。

 リュウジは剣で受ける。

 だが、衝撃で吹き飛ばされる。

 五メートル以上跳ね飛ばされ、地面を転がる。

「ぐっ……」

 立ち上がる。

 縄使いが再び縄を振るう。

 リュウジは避ける。

 そして——

 逃げることにした。

「……今は勝てねえ」

 リュウジは全力で走り出す。

 縄使いが追ってくる。

 だが、リュウジの方が速い。

 身体強化:速を維持したまま、全力疾走。

 縄使いを振り切る。

 十分ほど走ったところで、リュウジは立ち止まった。

「……はあ、はあ……」

 息が上がる。

 振り返る。

 縄使いの姿は見えない。

 追ってこなかったようだ。

「……助かった」

 リュウジは座り込む。

 インベントリから解毒剤を取り出し、飲む。

 黒い液体の毒が抜けていく。

 肌の腫れが引く。

「……縄使い、か」

 リュウジは先ほどの戦闘を振り返る。

 鞭獄卒よりも遥かに強い。

 縄の数が多く、操作も複雑。

 周囲の黒縄と融合させることもできる。

 そして——

 防御も固い。

 縄で攻撃を防ぐ。

「……どうやって倒すか」

 リュウジは考える。

 正面から戦っても勝てない。

 ならば——

「……環境を利用するか」

 等活地獄での経験。

 石柱を倒して業焔を下敷きにした。

 同じように、何か使えるものはないか。

「……縄、か」

 リュウジは周囲を見渡す。

 黒縄が至る所に張り巡らされている。

 縄使いは、縄と融合できる。

 ならば——

「……逆に利用できないか?」

 縄を罠として使う。

 縄使いを誘導し、縄に絡ませる。

 そして——

「……試してみるか」

 リュウジは立ち上がる。

 作戦を立てる。

 まず、縄使いを誘き出す。

 そして、縄が密集している場所に誘導する。

 縄使いが縄と融合したところを——

 切り離す。

「……いけるか?」

 リュウジは不安だった。

 だが、正面から戦うよりはマシだ。

「よし、やってみるか」

 リュウジは再び縄の森に向かった。

 慎重に、縄使いに気づかれないように。

 縄の森の入口から、内部を覗く。

 縄使いがいる。

 同じ場所で、動かずに立っている。

 まるで番人のように。

「……あいつ、あそこを守ってるのか」

 リュウジは考える。

 縄の森の奥に、何かがあるのか?

 中層への道?

 それとも——

「……どっちにしろ、倒さないと進めねえ」

 リュウジは石を拾う。

 そして縄使いに向かって投げる。

 カラン。

 石が縄使いの近くに落ちる。

 縄使いが反応する。

 こちらを向く。

 そして——

 縄を振るう。

 リュウジは即座に走り出す。

 縄使いが追ってくる。

 リュウジは縄が密集している場所に向かって走る。

 縄と縄の間隔が狭い場所。

 そこに——

 縄使いを誘導する。

 リュウジは縄の間をすり抜ける。

 体を捻り、縄に触れないように。

 だが——

 縄使いは追ってこない。

 立ち止まり、縄を振るう。

 縄がリュウジを追う。

 だが、縄使い自身は動かない。

「……ちっ、引っかからねえか」

 リュウジは作戦を変える。

 縄使いを動かすには——

 もっと強い刺激が必要だ。

 リュウジは縄使いに向かって走る。

 正面から。

 縄使いが縄を振るう。

 リュウジは避ける。

 そして縄使いの懐に飛び込む。

 蒼刃を振るう。

 縄使いの顔を狙う。

 だが——

 縄使いが縄で防ぐ。

 ガキィン!

 刃が弾かれる。

 だが——

 リュウジの左手が、縄使いの布を掴む。

 引っ張る。

 縄使いがバランスを崩す。

 そして——

 リュウジは全力で走り出す。

 縄使いの布を掴んだまま。

 縄使いが引っ張られる。

「おおおおっ!」

 リュウジは身体強化:力を最大まで引き上げ、縄使いを引きずる。

 縄が密集している場所に向かって。

 縄使いが抵抗する。

 縄を振るい、リュウジを打つ。

 だが、リュウジは布を離さない。

 そして——

 縄が密集している場所に到達。

 リュウジは布を離し、横に跳ぶ。

 縄使いが縄の森に突っ込む。

 無数の縄に囲まれる。

 そして——

 縄使いが縄と融合し始めた。

 両手の縄だけでなく、周囲の縄も全て。

 縄使いの体が、縄に包まれていく。

 巨大な縄の塊になる。

「……今だ!」

 リュウジは蒼刃を構える。

 そして——

 縄の塊に向かって突進。

 剣を振るう。

 縄を斬る。

 ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ!

 何度も、何度も。

 縄が切れる。

 黒い液体が噴き出す。

 リュウジにかかる。

 だが、構わない。

 リュウジは斬り続ける。

 縄の塊を斬り崩していく。

 そして——

 中心に、縄使いがいる。

 縄に包まれて、動けない状態。

「はああああっ!」

 リュウジは身体強化:全を発動。

 全力で剣を振るう。

 縄使いの胴体を斬る。

 ザシュッ!

 刃が深く刺さる。

 縄使いが苦悶の声を上げる。

 リュウジは剣を引き抜き、再び斬る。

 何度も、何度も。

 縄使いが倒れる。

 黒い煙が立ち上る。

「……はあ、はあ……」

 リュウジはその場に座り込んだ。

 全身が黒い液体にまみれている。

 肌が腫れ、痛む。

 だが——

 勝った。

 縄使いを倒した。

「……やった、な」

 リュウジはインベントリから解毒剤を取り出し、飲む。

 最後の一つ。

 毒が抜けていく。

 そして水筒を取り出し、体を洗う。

 黒い液体を洗い流す。

「……これで、進めるか」

 リュウジは倒れた縄使いの場所を確認する。

 アイテムが残っている。

 水筒×2。

 回復薬(小)×4。

 そして——

 巻物。

「……これは?」

 リュウジは巻物を拾い上げる。

 開く。

 文字が書かれている。

 読めない文字だが、意味が伝わってくる。

『縄使いを倒した者よ。汝は黒縄地獄外縁部を制した。中層への道が開かれた』

「……中層、か」

 リュウジは縄の森の奥を見る。

 縄が薄くなっている。

 道が見える。

 その先には——

 門がある。

 黒い鉄の門。

 中層への入口。

「……よし、行くか」

 リュウジは立ち上がる。

 だが、その前に——

 インベントリを確認する。

 回復薬(小)は十分。

 水も食料も揃っている。

 だが、解毒剤が0個。

「……まずいな」

 黒縄地獄では、黒い液体の毒が頻繁に飛んでくる。

 解毒剤がないのは危険だ。

 だが——

 縄使いはもうドロップしない。

「……中層の敵がドロップするか?」

 リュウジは不安だった。

 だが、進むしかない。

「……慎重にいくか」

 リュウジは縄の森を抜け、門に向かった。

 門に到達すると、リュウジは深呼吸をした。

 黒い鉄の門。

 表面には文字が刻まれている。

『黒縄地獄・中層』

「……さて、どんな場所なんだ」

 リュウジは門に手をかける。

 重い。

 だが、力を込めて押す。

 ゆっくりと門が開いていく。

 その向こうから——

 強い風が吹き出してきた。

 リュウジの体が、軽くなる。

 まるで——

 引っ張られるような感覚。

「!」

 リュウジは門に掴まる。

 だが、引っ張る力が強い。

 体が浮き上がる。

「うおっ!」

 リュウジは門を離し、体勢を立て直す。

 そして——

 門の向こうを覗く。

 そこは——

 まるで迷宮だった。

 通路が複雑に入り組んでいる。

 そして——

 通路の床、壁、天井——全てが動いている。

 回転している。

 上下左右が入れ替わる。

 体を引っ張る力も、場所ごとに違う。

 ある場所では強く引っ張られ、ある場所では逆に押される。

「……これが、中層か」

 リュウジは息を呑む。

 外縁部よりも遥かに複雑だ。

 体の重さの変化が激しい。

 空間の歪みも激しい。

「……慣れるまで、時間がかかりそうだな」

 リュウジは門をくぐった。

 中層へ。

 一歩、踏み出す。

 すると——

 体が浮き上がった。

 天井に向かって。

 リュウジは咄嗟に身体強化:跳を発動し、体勢を制御する。

 天井に足をつける。

 今は天井が床だ。

「……やっぱり、ややこしいな」

 リュウジは周囲を見渡す。

 通路が四方八方に伸びている。

 どちらに進めばいいのか分からない。

 だが——

 遠くに、何かが見える。

 光。

 金色の光。

 あの方向に、何かがあるのか?

「……とりあえず、あっちに行ってみるか」

 リュウジは光の方向に向かって歩き始めた。

 天井を歩きながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ