2 始まり
近過去において。
三千大千世界の主は世代交代がなされた。
大宇宙の大変革によって。
如来時代から未來王時代へと変転移行した。
急激な時代の変遷に抗うことができず。
大宇宙では密やかに天界大革新が実行されていた。
つまり現世は、未來王時代に突入している。
大宇宙は。
六つの『界』で構成されている。
天界三世界。
冥界三世界。
併せて六世界と呼称する。
天界三世界とは。
元素・神界・人間界である。
冥界三世界とは。
黄泉・魔界・霊界である。
ギギギイィ…………、
錆びついた鉄の扉が開く。
冥界の霊界の端っこに吹き溜まりが存在する。
ドロリ……、
淀んだ空気が充満している。
そこは。
『怨恨部屋』呼ばれている。
グラッジルームには。
無数の檻が点在する。
冤罪被害者。
暗殺謀殺被害者。
非業の死を遂げた者など……。
歴史的不条理に晒された被害者が幽閉されている。
つまり。
牢獄には『地縛霊』が閉じ込められている。
それは、無念と蟠りの塊だ。
彼ら(彼女ら)は知っている。
権威者の一存によって捻じ曲げられた『史実隠蔽』の真実を……。
それゆえ。
裸にされ、口枷をされ、眼球をくり抜かれて。
グラッジルームに封印されていた。
プツンッ……!
グラッジルームに破裂音が響いた。
積もりに積もった憤懣、怨念、隠忍……。
地縛霊たちの積年の怨恨が激烈爆発した。
彼ら(彼女ら)は。
奇々怪々の人工的霊体・タルパに変容した。
無数の『思念体』が侵食する。
タルパたちが天界を蝕み始めた……。
ヘヴンの残存余力は減衰して壊滅の瀬戸際まできていた。
因果応報の理に則るならば。
666年後、天界は完全没落する。
冥界完全支配となる。
『大暗黒時代』が到来してしまう。
『六世界』のバランスは大きく揺らいだ。
大宇宙は破滅まっしぐらだった。
神々は万事休す。
一斉に御匙を投げた。
神々は『ある人物』に懇請する。
跪いて掬いを乞う。
しかし。
『ある人物』は難色を示して同意せず。
然れば、ならば!
神々は強硬手段に打って出る。
最終カード(最後の切り札)。
『君主交代』を行使した。
ある人物は。
不承不承に受諾した……。