第四話 ダブルベッド
ジークと同じモーテルをチェックインしたシスターのミーファと騎士団員のリラは部屋の中央付近にドン!と置かれたダブルベッドの部屋に泊まっていた。
「シスター、寝る時、横にお邪魔しても大丈夫ですか?もしあれなら、私は床で寝ますよ」
このモーテルにはツインのベッドルームは無いようで、仕方なくダブルベッドの部屋へ来た二人。異性じゃなくとも同性と同じベッドで寝るという行為は、さすがのリラでさえ気を使う状況だった。
「いえ、私は全然大丈夫ですよ。逆に……いびきをしてたら……すみません……」
シスターが頬を赤らめる。
頬を赤らめて見てくるシスターを見て、リラは「かわよ……」と小さく吐露する。
リラは部屋内にあるシャワールームの扉を開けた。
「シスター、シャワーありますので、先どうぞ」
「リラさんからでいいですよ」
「私は筋トレしてから入るので、お先にいいですよ」
「じゃあ……お先に」と自前の白い肩紐バッグを持って、シスター姿のミーファはシャワールームへ入っていった。
ミーファは十分くらいでシャワータイムを終え、午前中に身に付けていたウィンプルや足元まで隠れるシスター服は脱いでおり、腕や太ももが露わになった自前の部屋着を着替えていた。
そんなミーファは、まだ少し濡れた髪の毛の上にフェイスタオルを乗せてダブルベッドの端に腰掛け、タオルで濡れた髪の毛を丁寧に拭き取っていた。
「シスター!ジークくん、どう思いますか?」
肌の露出が多いインナー姿になり、床で腕立て伏せをしているリラがミーファに話しかけた。
「どうって……まぁ……いい人だと思います。理由はどうあれ、古びた教会の管理をしているのはシスターの身として、とても喜ばしい事なので」
午前中に童顔や背が小さいなど侮辱とも取れる発言はあったが、それを許せるくらいにはミーファはロイを評価していた。
「シスターもいい人だと思います?どうしよっかな〜。彼女とかいるのかな〜」
リラの「行ってみようかな〜」発言に、ミーファは目を細める。
「リラさん……肉食過ぎませんか?私も噂を聞きましたけど、先月十人くらいとデートして即日告白したとかしてないとか」
「正確には十七人ね。十五人は即振られ、一人は三日後に振られた。後一人は音信不通」
「…………」
リラにかける言葉が見つからず、ミーファは固まった。
腕立て伏せを終えて全身汗まみれのリラはスッと軽快に立ち上がり、次は両手を前に出してスクワットを始めながらミーファに問う。
「シスターは好きな人とかいないんですか?それともシスターの方々は色恋事は禁止なんでしょうか?」
「べ、別に恋愛とか禁止ではありませんが、神やプリースティスに使える身としては?そーゆうのは必要ではないかな?とは思いますし、私自身もシスターの仕事を集中して頑張りたいと思ってるんで、そんな人は居ません」
栗色のショートボブの髪の先端を人差し指で弄くり回すミーファ。
「シスター、可愛いですね〜♡」
「……からかわないでください!」
スクワットしながらミーファを見ていて、ふと浮かんだ疑問をミーファに質問した。
「団長たちの部屋もダブルベッドなんでしょうか?」